中国武術雑記帳 by zigzagmax

当世中国武術事情、中国武術史、体育史やその周辺に関する極私的備忘録・妄想と頭の体操 ※2015年2月、はてなダイアリーより移行

自貢の塩、杜心五、藤黒子など

清代から盛んになる四川省における塩田開発のことを以前にメモしたけれど、杜心五の伝記(賀懋華『大侠杜心五伝奇』)を読んでいたら、彼が最初に保鏢を務めるのは、九溪の富商・郝剣鳴が四川省に私塩の買い付けにゆく際に依頼を受けてのことだと書かれてい…

清代の人口増加の武術への影響 過去メモから

以前にもメモしたけれど、陳舜臣の小説『阿片戦争』にはイギリスとの戦争に備えて組織された自警団やそれを指導する武術家が登場するけれど、自警団が組織されるのはイギリスとの対抗というよりも、急激な人口増加と流動人口の増加による治安の悪化に対処す…

『中原の虹』など

浅田次郎の『蒼穹の昴』シリーズの『珍妃の井戸』と『中原の虹』をGW前後に読了。 この本では袁世凱が太極拳をやっている場面があったり、袁世凱暗殺を狙う刺客が武芸百般の達人という設定になっていたり(第五章に出てくる慶寛)、張作霖の拠点の新民府の舞…

蔡李仏拳博物館など

3月のはじめに広東省江門市の政治協商会議の一行が市内の蔡李仏拳博物館を視察したという記事を見かけて、そんな博物館があったのかと思って調べてみた。 市政协专题视察蔡李佛拳博物馆 传承弘扬侨乡武术文化精髓-政务要闻-江门市人民政府门 2001年の秋に蔡…

『ジャック・イジドアの告白』、『グレートウォール』、『桃源郷』など

『ブレードランナー2049』の公開にあわせて、2017年の暮れに、フィリップ・K・ディックの小説がいくつか新たに出版されていたらしく、地元の図書館の蔵書がいつのまにか増えていた。『ジャック・イジドアの告白』もそのひとつ。(『戦争が終わり、世界の終わ…

三田村泰助『宦官 側近政治の構造』

新しい本ではないけれど、地元の図書館の蔵書にあったのを読んでみた。 宦官にまつわるさまざまな内容のほかに、恐妻家、男色、強精剤といった内容が含まれていて面白かった。 以下、このブログの観点から興味深かったについてメモ。 1.恐妻家戚継光 映画『…

ベルリンオリンピックの国術代表団4 幻の山東代表? など

山東国術館について紹介した記事を見ていて、以下のような記述があるのに眼がとまった。 …据张香圃(济南太乙门传承人)回忆:(1985年《少林武术》第三期记载)1936年林秉礼、佟顺禄、张香圃、马洪智、赵玉庭五名山东选手被选拔为参加第十一届奥运会的“世运…

大陸浪人、日本人馬賊、革命派、精武会とボクシング・柔道など 

同じ時代のことだから当たり前といえば当たり前だけれど、いろいろ関心をもっていることがなんとなく繋がってきた。それぞれ掘り下げてゆければ大きなテーマに発展する可能性があるものの、とりあえずのところ連想ゲーム的にメモ。 1. 日本人馬賊-小日向白…

『Retuen of Bruce』、『Legend of the Condor Heroes』など

ブルース・リーが生きていれば77歳の誕生日を迎える11月27日前後に、「そっくりさん」主演の映画を含めて、いろんな情報が流れてきた。 なかでも印象に残ったのは、ブルース・リ(呂小龍)のRetuen of Bruce (『忠烈精武門』) 出典:Rare Kung Fu Movie Web…

峨眉派趙門と太祖拳、営口の起順鏢局、綏遠の得勝鏢局など

1.紅拳、「峨眉派趙門」、太祖拳 少し前に『全球成功夫網』に載っていた安徽省蚌埠の太祖拳についての記事が面白かった。 www.qqgfw.com 说起太祖拳,其实是精湛的拳种,属“红拳”,拳术套路和器械套较多,由于传承甚少,为知不多,究其原因还是宣传交流不够…

橋本力、闞文聡、『刀背蔵身』など

ちょっと小ネタが集まったので、まとめてメモ。 1. 『ドラゴン怒りの鉄拳』のクライマックスでブルース・リーと戦い、かつ『大魔神』の(わけのわからない日本語だ(笑))橋本力氏が10月11日に逝去された。 『大魔神』三部作は、ブルーレイプレーヤーを買っ…

套路という文化 套路運動の生命力

ネットで調べものをしていて、晩年の蔡龍雲が套路運動について語った動画を見つけた。2014年10月、上海体育学院における講座らしい。ということは、お亡くなりになる約1年前だと思われるけれど、ときどき立ちあがって実演してみせる動作や、ウィットに富んだ…

形似容易神似難

ロシアのカザンで開催されていた世界大会では、日本人選手たちもメダルを獲得したらしいけれど、捜狐の記事では、中国チームの厳平コーチのコメントを引用しながら、外国人選手の演武に欠けているものについて指摘している。 www.sohu.com やや乱暴だけど、…

第13届運動会、健身気功、競技規則など

天津で開催された中華人民共和国第13届運動会は、8月30日に套路競技、9月4日に散打競技が終了した。 公式サイトに出ている套路競技、散打競技の成績はそれぞれ以下のとおり。 〇套路競技 第十三届 男子长拳、刀术、棍术全能1 山东 孙培原 29.1302 江苏 …

四川省武術協会編著『峨眉武術史略』

気になっていた掲題の本が出版されていたことを知り、ネットで取り寄せて読んでみた。 内容は、以下のとおり(日本語に仮訳) 第一章 峨眉武術の起源と萌芽 第二章 峨眉武術の形成と成熟 第三章 峨眉武術の発展と繁栄 第四章 峨眉武術の全面発展と高度昌盛 …

中国国術と西洋拳撃の対抗戦(1943)

ネットで見つけた高嶋航『「東亜病夫」と近代中国(1896–1949)』(京都大学人文科学研究所編『近現代中国における社会経済制度の再編』所収)は、西洋の比喩表現としての「病夫」が、中国では違った意味で受け止められ、尚武や軍国民思想、身体鍛錬による「…

四川省伝統弓連合会成立

2017年7月15日、四川省武術協会が伝統弓連合会を成立した開催されたというニュースが流れてきた。 sports.sohu.com 伝統弓術といえば、2016年12月出版の、馬廉禎主編『武学』の第2集は伝統弓術の特集だった(未入手)。 逸文武學書館>武學—中國傳統射箭專輯 …

弘文書院、大森体育会、中国体操学校とその関係者たち

1. 王潤生、不肖生、楊昌済、柳午亭、毛沢東など 清末の日本留学生の中に、湖南の「拳王」八拳の王潤生がいる。平江不肖生こと向愷然の「拳術見聞録」や「拳術伝薪録」では王志群と記されている人物で、帰国後は太極拳にも興味をもち、年下の呉鑑泉にも学ん…

『東亜競技大会番組表』 国会図書館デジタルコレクション3

国会図書館の『東亜競技大会番組表』、以前に調べたときはデジタル化されていなかったのだけれど、改めて調べてたらデジタル化されており、提携図書館での閲覧が可能になっていたので、さっそく地元の図書館に見に行ってきた。 東亜競技大会番組 (大日本体育…

『激闘!アジアン・アクション映画大進撃』

『ドラゴン・ガール』のメモの最後に、アジアのアクション映画が旬なのか?とメモしたら、数日後にこの本が出版されてびっくり。さっそく手にとってみると、充実した中身で(とくに、知野二郎「伝説の映画帝国、邵氏兄弟有限公司 ---その栄光と波乱の興亡史…

村上兵衛『守城の人―明治人柴五郎大将の生涯』など

最近、面白そうだと思って読んでみた本で、このブログの観点からはど真ん中ストライクではないものの、それぞれに少しずつ興味深い点があったものを、備忘録としてまとめてメモ。 1村上兵衛『守城の人―明治人柴五郎大将の生涯』義和団事件のとき北京に篭城…

「圏外」の敗槍を救う槍法…からの頭の体操

程宗猷の『秘本長槍法図説』(馬力編『中国古典武学秘籍録 上巻』所収)は、「圏里」の「敗槍」を救うのは容易だが、「圏外」の「敗槍」を救うのは困難であるといい、前者には「死掤対」「翻身掤退」のような「死中反活」の方法があるのに対し、後者すなわち…

唐豪『少林拳術秘訣考証』

数年前にメモを書こうと思って読み始め、途中で挫折していた唐豪の『少林拳術秘訣考証』をなんとか読了。 〇『少林拳術秘訣考証』(山西科学技術出版社版) 尊我斎主人の『少林拳術秘訣』とそのベースになっているといわれる『少林宗法』は清末の革命志士が…

周偉良編著『中国武術史参考資料選編』

昨年暮れにインターネットで注文。 この本のウリは個人的には二つあって、一つは清朝の公文書(檔案資料)の部分で、白蓮教や八卦教の反乱の関係者の供述書や、これらの事件に関する地方官僚から中央への報告書のなかに見られる武術の内容が約20ページにわた…

「三尖照」「三尖到」など

人民体育出版社の余功保編著『中国太極拳辞典』の、「三尖相対」の項目をたまたま見ていたら、 太极拳练习基本要领。指在练拳中鼻尖,膝尖,足尖上下在一条直线上 と出ていた。 出典が記されていないので、この説明がどこからきているのかわからないけれど、…

過去メモのフォローアップ数件

いくつかフォローアップ系の小ネタ。 1.竇奉三・馬歩周『国術概論』 馬礼堂(馬歩周)が「志然」名義で書いたような過激な議論が展開されているのかと思って読んでみたら、中身は至極まっとうに国術の価値や功能を論じたものだった。 若干、意表を突かれた気…

「中国蟷螂拳発源地」

全球功夫網の、陝西省淳化県の官荘中学で蟷螂拳が全面的に取り入れられることになったという記事を読んでいたら、「中国蟷螂拳発源地」という文字がでてきたので、どういうことなのかと思ったら、淳化県では、蟷螂拳の創始者といわれている王郎(王文成)は…

張山の語る中華人民共和国の武術

北京体育学院の武術系を卒業し1965年に国家体育運動委員会の武術処に配属された張山の『武林春秋』は2012年に人民体育出版社から出版されている。 zigzagmax.hatenablog.com 600ページにも及ぶ大著のようで、とても興味があるのだけれど、いまだ入手する機会…

張宝瑞編『北京武林軼事』

1989年から1990年にかけて、北京体育学院に留学中に、何となく買った本。当時はこんな本を読む語学力などなかったものの、たまたま部屋に遊びに来てくれた担任の呂先生が「おっ、いい本読んでるじゃないか」といってくれたのがうれしくて、留学時代の思い出…

佐久間貞次郎『支那風俗春秋』など 国会図書館のデジタルコレクション

国会図書館のデジタルコレクションの中から、気になったものを今後の参考のためにメモ。 1.佐久間貞次郎『支那風俗春秋』 「五十一 国術」 キーワード「国術」で検索していくつかヒットするなかでほとんど唯一興味深いもの。 著者の佐久間貞次郎は回教研究が…