中国武術雑記帳 by zigzagmax

当世中国武術事情、中国武術史、体育史やその周辺に関する極私的備忘録・妄想と頭の体操 。頭の体操なので、たまたま立ち寄られた方は決して鵜呑みにしないこと(これ、肝要)※2015年2月、はてなダイアリーより移行

2014-01-01から1年間の記事一覧

『駱駝客』

ネット上でたまたま見つけた映画。公開は2012年らしい。 新疆で駱駝を使って貨物の輸送を請け負う「駱駝客」たちの姿を描いたもの。駱駝客たちの娯楽は摔角と酒で、使用する武器は弓、ということで、摔角や弓に興じるシーンがときどき出てくる。摔角のシーン…

周偉良「評武術段位制」ほか1篇(続)

前回のメモの続き。周教授の二つめの文章。 评高小军先生首届全国武术科学大会讲话中的“武术科技”观 ——兼论武术科研学风 杭州师范大学体育学院 周伟良在今年8月7日天津第一届全国武术科学大会的首场大会主报告上,国家体育总局武术研究院院长高小军先生在一…

周偉良「評武術段位制」ほか1篇

最近、武術網に杭州師範大学体育学院の周偉良教授の文章が2編掲載された。一編は、段位制に物申す、といった内容の「評武術段位制」、もう一編は、高小軍(ここでは武術研究院院長という肩書きだけれど、いうまでもなく国家体育運動総局武術運動管理中心の主…

『忠烈図』

少し前に購入していた、台湾製のキン・フー監督ボックスセットから、『忠烈図』を鑑賞。戚継光と並んで抗倭将軍として名高い兪大猷が主人公で、サモ・ハン・キンポー演じる倭寇の棟梁(博多津)のグループとの戦いを描いた作品。 以前に読んだ、キン・フー監…

R.H. ファン・フーリク『中国のテナガザル』

チャウ・シンチーの『西遊記 はじまりのはじまり』が公開中だけれど、中野美代子『孫悟空の誕生−サルの民話学と「西遊記」』に続けて、地元の図書館にあった本を読了。中国では、サルといえば、もともとは「猴」のサル(マカク属のサル)と「猿」のサル(テ…

国家級「非物質文化」第四次リスト

少し古い話だけれど、11月11日、国務院が国レベルの非物質文化遺産の代表作の第4次リストを公開した。この中に含まれている武術関係の項目は、拡張項目まで含めると以下のとおり。1304 通背拳 北京市西城区 1305 戳脚 河北省衡水市桃城区 1306 精武武術…

洪拳泰斗・趙志凌

黄飛鴻-林世栄-趙教と連なる洪家拳の使い手として「国際洪拳趙志凌国術会」などの組織も運営しているという(未詳。ウェブサイトはないのかな?)、俳優の趙志凌(日本ではチャウシンチーの『カンフーハッスル』が有名か?)の、競技武術のオリンピック競技…

寇運興

許昌日報に掲載された、地元出身の武術家・寇運興を紹介した記事をメモ。 そうか、寇運興は1936年のベルリンオリンピックに国術代表団として参加したメンバーの一人だったのか。 改めて、この代表団のメンバーを確認すると、武術研究院『中国武術史』で…

李麗久

中国武術大辞典で用語を調べると、『武術鱗爪』という本からの引用がときどき出てくるので、気になってこの本について調べてみたら、作者は李麗久という人で、1930年代に湖南省で作られたドキュメンタリー映像の中で、中央国術館の張之江館長に次いで、「自…

首届世界太極拳錦標賽

四川省成都市の都江堰市(県級市)で開催された太極拳の大会(世界太極拳錦標賽)、ちゃんと注意していなかったけれど、武術運動管理中心か地方政府主催の催事かと思っていたら、国際武術連盟の主催の競技会だったらしい。報道では、世界最高レベルの太極拳…

大連武術文化博物館

以前に巨大プロジェクトとしてメモしていた、大連武術文化博物館が完成したらしい。投資総額は、当初は6,000万元と報道されていたけれど、今回のニュースでは1.06億元となっている。社会に無料で開放、ということなので、いつか機会があったら行ってみたい。…

趙長軍が振り返る武術人生

全球功夫網に、80年代の競技武術界のスーパースター、趙長軍がその半生を振り返る聞き書きが掲載されたのでメモ。趙長軍は現在米国在住で、昨年亡くなった馬振邦の1周忌で西安に戻ってきたときに取材を受けたようだ。彼自身が語るところによると、陝西省武術…

『ジャッジ・アーチャー (箭士柳白猿)』

2014東京・中国映画週間で鑑賞。上映の前に、映画週間全体のオープニングセレモニーがあり、それに引き続いて、監督であり原作者・武術指導の徐皓峰と主演の宋洋によるトーク(時間の関係で、それぞれに一つ質問をしただけ)があった。仕事の関係でオープニ…

伝統武術遺産の法的保護

2014年10月18日の光明日報に、「我が国の伝統武術遺産の法律保護」と題する文章が掲載されたのでとりあえずメモ。作者は河南理工大学地域武術文化研究中心の呂雲龍氏で、2013年度の国家社会科学基金で認定されている研究プロジェクト「中国武術百年転型歴程…

飯沼賢司『八幡神とは何か』など

倭寇船が八幡大菩薩の旗を掲げていたことと、のちに中国において、八翻、八番を名前に含む武術が生まれてくるのは、なにか関係があるのか、あると考えた方が面白いのではないか、と思っていたところ、たまたま図書館で飯沼賢司『八幡神とは何か』が目に留ま…

中国武術における「営業の個人化」と「標準化」

かなり畑違いではあるけれど、ハフィントンポストの「マーケティングの目的は、販売を不要にすること」という記事を読んで、中国武術界とよく似たところがあると思ったので、頭の体操のつもりでメモ。「営業の個人化」が進行し、流派・門派があまりにも細分…

『中華武術急先鋒』出版

湖南省で、ルポ『中華武術急先鋒』の出版記念会が開かれたという記事。作者は湖南省の新化(「武術之郷」の一つでもある)で青少年に対する武術の普及に努めている青年武術家・作家の游罡華。 中身を読む前に判断するのは失礼かもしれないけれど、文字通りの…

眞神博『ヘーシンクを育てた男』

アントン・へーシンクを育てた柔道家・道上伯の伝記。中国武術と直接の関係はないけれど、道上は1940年から1945年まで上海におり、東亜同文書院で柔道を教えていたということをこの本で知った。東亜同文書院柔道部は内地をはじめ、満州国などでも試合に参加…

『Iron and Silk』

『American Shaolin』について、アメリカの友人に読んだことがあるかたずねてみたら、感想とあわせて、こういう本もあるよ、ということで教えてもらったのが『Iron and Silk』。作者のMark Salzmanが1982年から1984年に英語教師として長沙に滞在し、潘清福か…

柔道対摔跤の御前試合?

常東昇のお孫さんが台湾における摔跤の現状を語るインタビュー記事を見たのがきっかけて、摔跤について検索していたら、たまたま『済南回族武術』という冊子のテキストファイルにたどり着いた。 この冊子は、「済南市伊斯蘭教協会が発行を続けている雑誌『済…

『少林很忙』

米国人、マシュー・ポリーの書いた『American Shaolin』の中国語訳が『少林很忙』として中国国内で出版されて物議を醸しており、少林寺が声明を出したという新華網の記事。少林寺は、マシュー・ポリーは混同しているが、「少林寺」や「武僧」を語る武術館、…

六榕寺の鉄禅和尚

前回のメモで広東精武会の成立の際、黄飛鴻と林世栄が演武をしたと書いたけど、『晩清民国時期的広東武術』には、この二人の名前が出ていないかわりに、「六榕寺僧人鉄禅」および「省城四郷各処の著名技撃家二十余名」が技を披露した、と出ていた。六榕寺は…

張雪蓮『仏山精武体育会』

精武体育会の仏山分会について紹介した本。著者の張雪蓮については、詳しいプロフィールがなく、よくわからない。 『嶺南文化知識書系』叢書の一冊という位置づけからなのか、仏山精武会に限らず、精武会組織の成立や発展における、広東省出身の人々の果たし…

広東省の省級非物質文化遺産

広東省で非物質文化遺産の第4次リストの代表的継承者が「公示」され、省内の9つの武術団体が、詠春拳の代表的継承者の人選について異議を唱えたという、8月27日付けの南方都市報の記事。ちょっとわかりにくいけれど、第4次リストはすでに2013年11月には公…

南京ユースオリンピックなど

南京で開催されたユースオリンピックにあわせて、「南京2014武術比賽」という武術競技が行われたらしい。2008年の北京オリンピックにあわせて行われた武術競技と同じく、ユースオリンピックの正式競技の一つではなく、別枠という位置づけらしいけれど、IO…

『吼えろ!ドラゴン 起て!ジャガー』

JCOMでやっていた本作をはじめて鑑賞。それまでの武侠映画に、徒手空拳によるアクションという新境地を開拓したと評される本作。ストーリー的にはきわめてシンプルで、「師匠を殺された主人公が修行して強くなって仇をうつ」(24字)、というもの。アクショ…

国際競技用刀術

国際競技用のいわゆる第三套路というのが2011年12月に作られている。日本連盟は最近この第三套路のための、指導者用講習会を開いたりしているようだけれど、たまたま、刀術の第一套路から第三套路までのテキストを見比べてみて、「点刀」、「崩刀」といった…

南方週末『一个家族和一门绝艺 陈家沟陈氏太极拳断而复续的故事』

去年の9月、南方週末にこんな記事が出ていたなんて気がつかなかった。とても貴重な記事なので長いけど全文を保存。毛沢東語録拳については、以前に北京体育学院の「武術革命」戦闘隊が、南口鉄路機械厰の労働者の協力を得ながら「毛沢東語録拳」と「毛沢東…

吉燦忠『同興公鏢局考』

山西省の平遥(晋中市平遥県)にあった「同興公鏢局」に関する研究書で、昨年、北京で購入していたもの。最近、関羽やら水滸伝に関する本を読んで、山西省周辺のことが気になってみたので読んでみた。 「同興公鏢局」は1855年に設立され、1913年に活動を終え…

首届全国武術運動大会

掲題の運動会が、8月8日(北京オリンピックの開幕の日で、日本の「体育の日」のようなもの)、天津で開催されるという記事。 2011年の暮に、武術運動管理中心が12月20日付で2012年度方針を発表した際、第一届全国武術運動会を開催する、と書いてあった。2012…