中国武術雑記帳 by zigzagmax

当世中国武術事情、中国武術史、体育史やその周辺に関する極私的備忘録・妄想と頭の体操 。頭の体操なので、たまたま立ち寄られた方は決して鵜呑みにしないこと(これ、肝要)※2015年2月、はてなダイアリーより移行

2012-01-01から1年間の記事一覧

小島毅『近代日本の陽明学』

近代日本において陽明学は、一方で学術的な研究対象として扱われつつ、他方では政治家や志士たちの行動を支える実践的な学問として捉えられていた。後者の系列において、自らの良心(良知)に基づく行動(実践躬行)を正当化する行動原理としての陽明学は、…

小島一志、塚本佳子『大山倍達正伝』

※この本を読了してから2カ月ほど経ってしまった。以下のメモは、その当時おおよそアウトラインを纏めながら、細部を確認したり、読み直す時間がないまま年を越してしまった。ズルズルと寝かしておくのも嫌だったので、半ば付け焼刃的に見直し・修正をほどこ…

武術のオリンピック採用は重要な転機を迎えている

武術のオリンピック競技種目化に関する、「武術網」の記事。 今月、スイスのローザンヌで開かれるIOCの会議での、武術を含む候補種目8種目によるプレゼンも踏まえつつ、2013年に委員による投票で追加採用される競技種目が決まるのだけれど、この記事…

劉文兵『中国映画の熱狂的黄金期――改革開放時代における大衆文化のうねり』

新書『中国10億人の日本映画熱愛史』などでおなじみの劉文兵氏の新著。新中国におけるカンフー映画の先駆は、劉暁慶主演、1980年公開の『ミステリー仏陀』(原題『神秘的大仏』未見)というのは知らなかった。大陸におけるカンフー映画は、香港と大陸の合…

毛沢東語録拳

文化大革命当時、「毛沢東語録拳」なる型が創られたことについては、習雲太『中国武術史』にも書いてあった気がするけれど、いまだに動画を見たことはない。しかし・・・時代は変わっても、新しい型がどんどん作られては消えてゆく気がする。 “毛主席语录拳”…

酒井忠夫『中国民衆と秘密結社』

義和拳集団の起源について、G.N.スタイガーは、それは一種の民団、つまり義勇兵による民軍であった、として、保甲制以来の中国郷村における自衛の伝統について言及していたけれど、あまり詳しい説明はなかった(『義和団』)。 この点について、酒井忠夫…

吉林省八極拳研究会成立

武術網より、12月1日、長春で吉林省八極拳研究会が成立したという記事。 会長に選出された孫生亭は、譚吉堂、斉徳昭、張継修等の諸師に師事したという。 長春では、孫氏の編による『長春八極拳全集』が最近出版されたばかりのようだ。なぜ、ようやく今この時…

岳暁峰「我看電影《新少林寺》」

ネット上で見つけた記事。もともとは雑誌『少林与太極』に掲載されたものらしい。作者の岳暁峰という人については、検索してもあまり情報が得られず、どういう素性・立場の人かよくわからない。この文章、主張があっちに行ったりこっちに行ったりしてわかり…

国家武術研究院専家会議後の高小軍のコメント

国家武術研究院(武術研究院の頭にいつから「国家」とつくようになったんだ?)の専門家委員会後の高小軍のインタビューがいくつかのサイトに出ている。2012年の武術界の重要な動きは?という記者の質問に対しては、散打のナショナルチーム設立を挙げている…

霍元甲精武館2

以前のフォローアップのような記事が続いているけれど、霍元甲武術館(以下の記事では精武館)が完成したらしい。 以前に引用した計画では、8月に竣工し、10月に実施される第12回世界精武大会の会場になる予定、とあり、数百人で突貫工事をしたらしいけれど…

長江大侠 呂紫剣2

以前、呂紫剣の訃報をメモしたけれど、最近になって、また訃報が報じられた。当時のメモには、訃報を報じたニュースではなく、呂氏のプロフィール的なものしかメモしていなかったので改めてソースを探してみたけれど、個人ブログの類しか見つからなかった。…

渡部愛都子『新体操はスポーツか芸術か』

新体操という競技にはあまり関心がなく、この前のオリンピックでもほとんど見ていないけれど、競技武術がそのルール上、同じ採点競技である新体操やフィギュアスケートを参照しているのは明らかだと思う。その意味で、ブルガリア新体操界における「新体操は…

武林奇侠か江湖騙子か2

李経梧の生誕100周年の行事が北戴河で開催された。同時に開催されたシンポジウムで門人たちは「太極拳を妖魔化した」閻芳を除名すると発表(全球功夫網の関連記事1、2。 弟子たちはそれによって「国粋の尊厳を守り、一門の濁流を洗い流す」としている。…

安徽省合肥市における心意六合拳、万勝鏢局、周口三傑など

安徽省合肥市における心意六合拳の伝承は、上海からのものと蚌岐市の宋国賓系統のものがあるらしい。 上海系統のものは、盧崇高-徐文忠-張品元(徐、張老師は80年代末に来日した)系統のものと、盧崇高-解興邦-張道福と連なる系統があるようだけど、前者は…

武林奇侠か江湖騙子か

李経梧太極拳の伝承者だという閻芳女史の推手の動画が話題になっているようだ。(標題は、武術世界に転載されている記事のタイトルを前後入れ替えたもの。)全球功夫網、武術網、武術世界などのポータルサイトにはこれを「詐欺だ」と批判する文章が掲載(転…

「太極拳発源考論」(鄭州大学体育学院中原武術文化研究中心HPより)

中原武術文化研究中心に掲載されている論文。なにかの手違いで、作者の名前が落ちてしまっているようだけど、鄭州大学体育学院中原武術文化研究中心の研究者と、南京大学歴史学部の研究者が共同で執筆したもののようだ。 少し前にメモした王広西氏の論文では…

王広西(陸草)「論中原武術文化」

以前、王広西の『中国功夫』についてメモしたとき、王氏が所属している鄭州大学武術文化研究中心については詳細がわからなかったのだけれど、 最近、中原武術文化研究中心というHPを見つけた。この研究中心は正式には鄭州大学中原武術文化研究中心といい、…

老舎『駱駝の祥子 らくだのシアンツ』

「断魂槍」(1、2)との関連で、「駱駝の祥子 らくだのシアンツ」を読んでみた。シアンツにとっての車は、一人前の男の象徴。その意味では、シアンツにとっての車は、やはり短編『断魂槍』の沙子龍の槍と似たところがあると思った。ただ、車さえ手に入れて…

劉正「意拳史上重大疑難史事考」

人民大学古籍研究所の劉正教授が雑誌『武魂』に連載したという、意拳に関する文章。(掲載時期は未確認。)劉教授は意拳の関係者でもあるらしい。百度のプロフィールでは関西大学で修士、大阪市立大学で博士、京都大学でポストドクターと研究員、愛知学院大…

戊子拳、黒虎拳

2011年11月の段位認定で、吉林大学体育学院の孫吉良教授が武術運動管理中心に「8段」を認定された。吉林省内では最高段位にあたるという(吉林大学新聞網)。孫吉良教授には、曲江春、宋恒徳と共著の『黒虎拳』がある。(宋恒徳氏の鴨形拳、虎頭双鈎の動画)…

フォローアップ

過去のメモのいくつかのフォローアップ1.武術の里 「動態管理」(終身制の取り消し)について、武術運動管理中心社会部主任馮宏芳の取材記事。 2.武術のオリンピック競技種目化 以前、高小軍は、華商報のインタビューで2013年が、競技種目化の「命運年」で…

甄子丹『問・丹心』

甄子丹(ドニー・イェン)の自伝。 最近「武侠」(「捜査官X」)を観て、そういえば1月の中国出張のとき、広州の空港で買っていたことを思い出して読んでみた。幼少の頃の母との武術修行のことや、北京での武術修行のことが詳しく書かれているのかと思った…

老舎『断魂槍』2

先日、老舎の「断魂槍」についてメモしたけれど、その後たまたまあるサイトで、実は老舎自身、武術の心得があることを紹介していた。(最後に全文を引用。)その記事に日本の作家の城山三郎の名前が出てくるので、興味を持って調べてみたら、老舎は「私は国…

スコット・M・ビークマン『リングサイド プロレスから見えるアメリカ文化の真実』

アマゾンで二束三文で購入。このブログの観点から、読み終わって興味深かった点をいくつかメモ。レスリングのスタイルは「ラフ・アンド・タンブル」、「キャッチ・アズ・キャッチ・キャン」、「グレコ・ローマン」などいくつかあったのだけれど、南北戦争の…

老舎『断魂槍』

ずっと読みたいと思っていた、老舎の短編小説『断魂槍』をようやく読むことができた。 大阪大学の杉村博文先生のホームページに、原文、日本語訳があるのを見つけたのだけれど、原文には、詳細な注釈もついていて、すごく勉強になる。時代は義和団事件で武術…

安徽省の伝統武術

以下の記事によると、省レベルの無形文化遺産として、亳州市の晰揚掌、安慶市樅陽県の東郷武術、淮南市の永京拳の三種類があるらしい。いずれも全国的に良く知られている拳種とはいえないけれど、こういう地域に根ざした武術は、今後どうなっていくのか興味…

劉杞栄老師と太空門

太空拳というのは、湖南省の劉杞栄と言う人が創ったものらしい。 劉氏は湖南省体委の初代武術教練で政協委員、かつては抗日第五戦区幹部訓練団などで武術を終えいえていたらしく、太空拳は劉氏が太極拳、形意拳、八卦掌、通臂拳、摔跤、搏撃等のエッセンスを…

『武侠』(邦題:『捜査官X』)

ドニー・イェン演じる主人公の劉金喜は、七十二地煞の一員として、過去に暴虐の限りを尽くしたものの、いまは過去の身分を隠して雲南省の片田舎で暮らしている。だが、村で起きたある事件がきっかけで過去の経歴が疑われることになる。金城武が演じる捜査官…

武術パフォーマンス専攻

上海体育学院では、教育部の審査を経て、「武術表演」専攻を設け、全国的な募集を始めた。映画や北京オリンピックの開幕式のような大型イベントの武術パフォーマンスやゲームにおける武術の動作の設計ができる専門人材を育成するらしい。なぜ、従来の武術専…

2012蘭州国際武術交流大会

2010年4月に設立された蘭州通備武学研究会、確か公式ブログも立ち上がった割りには一向に更新されず、どんな活動をやっているのかわからなかったのだけれど、この7月に蘭州市の体育局、旅游局などが「2012蘭州国際武術交流大会」を開催するにあたり、「支持…