中国武術雑記帳 by zigzagmax

当世中国武術事情、中国武術史、体育史やその周辺に関する極私的備忘録・妄想と頭の体操 。頭の体操なので、たまたま立ち寄られた方は決して鵜呑みにしないこと(これ、肝要)※2015年2月、はてなダイアリーより移行

2015-01-01から1年間の記事一覧

蔡龍雲「我対武術的看法」

12月19日、「神拳大龍」蔡龍雲が逝去したというニュースが流れてきた。享年87歳。謹んでご冥福をお祈りする。 ご葬儀は12月24日行なわれた。 news.twoeggz.com ロシア人マスロフ、アメリカ人ボクサー「黒獅子」ルサールを倒して「神拳大龍」と呼ばれたことは…

民俗芸能としての中国武術

この対談にとても触発された。 www.cinra.net 近年、中国武術の世界では、国家や地方行政レベル、さらにはユネスコに無形文化遺産(非物質文化遺産)として承認されることを良しとする傾向があり、地方の武術の状況がわかりやすいので、このブログでもときど…

北京武協武術理論文史研究会

全球功夫網の以下の記事で、北京に「北京武術理論文史研究会」というのがあるのを知った。公式ウェブサイトの紹介によると北京市武術運動協会の審査批准を経て1996年に設立されたらしい。ウェブサイトの「文章中心」には八篇の文章しか載っておらず詳しい研…

李氏家譜関連の動画

太極拳の起源とも関係のある河南省博愛県李氏家譜に関連して、youtubeでたまたま二つの動画を見つけたのでメモ。 一つ目の動画は、北京師範大学(いまは北京大学?)の趙世瑜教授が、現地で調査をしている様子とおもわれる。 www.youtube.com 後半の方でカメ…

各地の人気拳師投票活動

1. 煙台で去る11月に地元の十大拳師を選出したというニュース。 www.shm.com.cn 十大拳師は、原楽志(呉式太極拳)、楊応健(陳式太極拳)、孫玉永(尹派宫式八卦掌)、侯利民(陳式太極拳)、周振東(太極蟷螂拳)、劉紅玉(摔跤?テコンドー?)、楊応業(…

ペマ・ツェテン『五色の矢』

東京外国語大学で行なわれた掲題の映画の上映会に行ってきた。 チベット文学と映画制作の現在: ペマ・ツェテン監督『五色の矢』上映会 東京フィルメックスで同監督の最新作『タルロ』が上映されるにあたり、昨年監督した作品を上映したいということで実現し…

氏家幹人『大江戸死体考』など

中国武術の本ではないけれど、掲題の本を古本屋でたまたま目にして、ぱらぱらとめくってみたら第2章が「様斬(ためしぎり)」というタイトルになっており、面白そうだったので買ってみた。 江戸時代になってまもなくは、将軍はじめ各国の領主も、自ら武器を…

「洋人大力士」たち

ドニー・イェンの人気シリーズ『イップマン』のシリーズ第3作の予告編がちらほらと流れてくるようになった。今回は、マイク・タイソンと戦うらしい。 www.youtube.com 娯楽映画のこのシリーズで、史実との整合性とかを求めるのは野暮だけれど、イップマンに…

CCTVドキュメンタリー『破譯達摩神功』、「健身気功・易筋経」など

「破譯達摩神功」は、youtubeで見つけた易筋経に関するCCTVのドキュメンタリー。国家体育運動総局の健身気功管理中心による、「健身気功・易筋経」の編纂・臨床試験(?)の過程なども紹介されていてなかなか興味深かった(注)。 【奇异8】视频227:发…

ヘラクレス、執金剛神、緊那羅王など

東京国立博物館に、『始皇帝と大兵馬俑』展を見に行ったついでに、東洋館で常設展を見ていたら、イラクのハトラから出土したパルティア時代のヘラクレス像に以下のような解説がついていた。 ヘラクレスはギリシア神話最大の人気者で、大神ゼウスと人間の子ア…

山西商人(晋商)と武術

参考資料として買っておいた陳振家『原伝戴氏心意六合拳』の冒頭をぱらぱらと見ていたら、戴魁の頃、益晋染織有限公司が1909年にシーメンスの発電機を導入した際、オーナーの喬殿森がドイツ人の勤勉な働きぶりに関心して工場の管理をまかせることにしたとこ…

インタビュー数件

トップランナーたち・・・、とっていいのかどうかわからないけれど、最近目に付いたインタビューや個人に取材した記事と周辺情報。 1.馬文国(西安体育学院武術系主任) 「拳種」の形式をとって発展してきた中国の武術の中には、単純な勝負と技法には納まりきら…

上海精武学堂

上海で9月末に、精武体育会が上海精武学堂、精武中医館、精武青少年習武中心、といったプロジェクトをスタートさせたという記事(最後にコピペ)。 そのうち精武学堂は、「大専」の学位も取得できる、社会人向けの「社会管理(健康管理)」のコースらしい。 …

青面金剛、大魔神、緊那羅など

youtubeの動画で映画「大魔神」シリーズのクライマックスシーンをたまたま見ていて、大魔神の顔が青だったり緑であることに気がついた。倭寇と闘った少林僧が、その信仰から、顔を青く塗っていたということを思い出して、何かのヒントになるかもしれないと大…

tiger soldier など

先日、kung-fu tea というサイトで、tiger soldierについての記事を読んだ(といっても、ポップアップの翻訳機能を使いながら斜め読みしただけ)。アヘン戦争の頃、外交団に随行して中国各地を旅行したイギリス人画家のイラストや、写真のなかにでてくる、虎…

馬剣編著『燕趙武術』

先日『燕京武術』を読んだ勢いで、同じシリーズの『燕趙武術』を読んでみた。こちらは、河北省を中心に流行している武術についての紹介で、DVDの収録内容としてクローズアップされているのは楊式太極拳、八極拳、翻子拳。DVDの演武者は、いずれも編著…

第11回アフリカ競技会 The 11th All-African games

コンゴのブラザヴィルで行われたアフリカ競技会の開幕式で武術のパフォーマンスがあったらしく、YouTubeで動画が公開されていた。 アフリカの人々が中国の民族衣装を着て演武している姿は、なんだかまだしっくりこないけれど、柔道や空手が世界に普及しはじ…

張之江『東遊感想録』

以前にメモした、張之江『東遊感想録』、その後の調べて駒込の東洋文庫に所蔵されていることがわかったので、閲覧に行ってきた。 ■朱培徳の題字は「張之江先生東「游」感想録」だけど、本文の方は「東「遊」感想録」になっている。このメモでは「東遊感想録…

蘭州・甘粛省の武術

蘭州日報の記事によると、蘭州市には200種類を超える武術があるらしい。 200種類の内容を、徒手類、棍術類(条子、鞭杆を含む)、非棍術類と分けているところが、棍術で有名な西北地方らしくて面白い。 以下は記事の全文。 兰州地方武术有200余种类,你知道…

澤田瑞穂『中国史談集』

最近すこし呪術やらまじない、民間信仰に関心がでてきたところで、地元の図書館にあった澤田瑞穂『鬼趣談義』『中国の呪法』『中国の仏教と文学』などを立て続けに読んでみた。(掲題の本だけは図書館にはなかったので、中古のものをアマゾンで購入。) 『鬼…

何定鏞『巴蜀武林英豪』出版など

掲題のタイトルの本が出版されたらしい。「成都商報」の記事を「成都全捜索」が転載したものをメモ。 作者は四川省の何定鏞という作家らしく、この人も「武術世家」の人らしい。峨眉派を含む西南地方の武術について、特に近現代史を理解するうえで参考になる…

知野二郎『香港クンフー映画評論集 龍熱大全』

地元図書館の、たまにしか行かない分館で発見し、読了。こんな素敵な本がおいてあるなんて、わが地元の図書館もなかなか捨てたもんじゃないなあ。だれかマニアが住んでるんだろうか。 龍熱大全 - 香港クンフー映画評論集 作者: 知野二郎 出版社/メーカー: ぴ…

徐皓峰『武士会』

この夏中国で公開されたチェン・カイコーの『道士下山』の原作者であり、自身がメガホンをとった『師父』の公開も近い徐皓峰の小説。 主人公は、李存義をモデルにした形意拳家の李尊吾で、義和団事件に関連して、天津の民間宗教のリーダー・金刀聖母(黄蓮聖…

周世勤、楊祥全『燕京武術』

天津の武術を紹介した楊祥全の『津門武術』という本が面白そうで、著者について調べていたら、掲題の本の著者(周世勤との共著)であることがわかった。 地方ごとの武術を紹介したこのシリーズは、ちょうど仕事で中国に駐在していたころに出版されたのだけれ…

坂出祥伸『「気」と道教・方術の世界』

1. 道教とは、永遠の生命への到達を目標として、そのために役立つ科学技術、とくに医学、薬学を重要な要素とする土着的な信仰である(P.125) 筆者は、道教についてさまざまな定義があること指摘したうえで、端的に上のように自分の考えかたを示す。 地元の図…

黄河大侠

7月5日の深夜、フェイスブックのタイムラインに于承恵の訃報が流れてきた。日本にブルース・リー、ジャッキー・チェンにつぐ第三次カンフーブームをもたらした映画『少林寺』で、仇役をつとめ、つづく『少林寺2』ではヒロインのお父さん役、『阿羅漢』で…

内家とか外家とか

武術の「常識」といわれていることも、いろいろ遡って考えると、実はよくわからないことも多い。 中国武術は内家拳と外家拳に大別されるという考え方も、その一つのような気がする。 以下の動画は、そもそもどういう目的で作られたものか、よくわからないけ…

十大镖局、大刀王五など

全球功夫網に掲載された、中国十大鏢局という記事をもとにメモ。 十大鏢局といいながら、詳しく取り上げているのは、興隆鏢局(「神拳」こと張黒五)、会友鏢局(三皇炮捶)、成興鏢局(李冠銘、李鳳崗、李慶臨)、広盛鏢局(こちらも「神拳」こと戴二閭)の…

武術の精神?

インターネットでたまたま前後して見かけた二つの記事に触発されてメモ。 一つは、日本武道に造詣の深いアレクサンダー・ベネット氏の講演を文字にしたもの(動画もあったので、動画のほうのリンクを下の方にコピペ)。もう一つは、『全球功夫網』に掲載され…

二階堂善弘『明清期における武神と神仙の発展』

日本ではあまり知られていない中国の民間信仰における神々について紹介された本。同じ著者の、一般向けにもう少し簡単に紹介されたものに平凡社新書の『中国の神さま』があるほか、関連研究として、『道教・民間信仰における元帥神の変容』(未見)がある。 …