中国武術雑記帳 by zigzagmax

当世中国武術事情、中国武術史、体育史やその周辺に関する極私的備忘録・妄想と頭の体操 。頭の体操なので、たまたま立ち寄られた方は決して鵜呑みにしないこと(これ、肝要)※2015年2月、はてなダイアリーより移行

李氏家譜関連の動画

太極拳の起源とも関係のある河南省博愛県李氏家譜に関連して、youtubeでたまたま二つの動画を見つけたのでメモ。

一つ目の動画は、北京師範大学(いまは北京大学?)の趙世瑜教授が、現地で調査をしている様子とおもわれる。

 

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後半の方でカメラが捉える実物のなかに「拳譜」があり、「無極〇〇(読めない)拳論」「太極拳論」「十三勢」などの文字が見える。

 

河南大学中原武術文化研究中心のウェブサイトに掲載されていた王広西(陸草)「論中原武術文化」(注)では、「無極養生拳論」「十三勢行功歌」を李春茂、「太極拳論」を李鶴林が著したとされていたけれど、映像では作者名までは確認できない。


二つ目の動画は、地元のケーブルテレビの特集番組を編集したものなのだろうか。ところどころCMをカットしてつなぎ合わせたように見える。音質はそれほどクリアではなく、ナレーションの部分はなんとか理解できるけれど、地元の人にインタビューした部分は方言がきつくて、解読はなかなか辛いものがある。
村の伝承によると、王宗岳は唐村で7、8年の間教師をしていたことがあり、その間、李鶴林に師事し、洛陽方面に去ったという。文化大革命の前までは王宗岳が師である李鶴林に送ったという「門匾」が残っていたともいう。なお、李鶴林の子供の李永達は舞陽県で塩店を開いていたという。

李氏の三兄弟と、その義兄弟である陳王廷が「無極養生功」から「太極拳」をつくったという、その千載寺はいまは無いけれど、映像ではもともと寺があった場所も紹介される。

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家譜にいうとおり千載寺に伝わる無極養生功から太極拳が創られたのだとして、その後、唐村と陳家溝において、どのような形でこの技が伝承されていったのかは、映像だけではわからない。当然のことながら、それぞれに独自の展開を見せたということもあるだろう。
たとえば、陳家溝のほうはその後、戚継光の武術をはじめさまざまなものをとりいれ、唐村のほうは李鶴林が「太極拳論」をあらわしたなどと考えることもできるかもしれない。

李氏家譜の発見は、歴史学界にとっては、太極拳の起源よりも、李自成の参謀として李自成軍の北京入城に功績あげたものの、内部の諍いによって李自成の信頼を失い殺されたとされる李巌(元の名は李信。郭沫若の小説により、中国ではかなり有名になったものの、その後、実在したかどうかが疑われていたらしい)に関する史料として注目を集めているらしい。

李岩籍贯与源流新说

 

李自成については、もうだいぶ昔、当時の上司の奨めで姚雪垠著、陳舜臣・陳謙臣共訳の『叛旗 小説李自成』 というのを読んだけど、中身はほとんど覚えていない。李巌も登場人物のなかにいたんだろうなあ。小前亮の小説に『李巌と李自成』というのがあるらしい。今度読んでみよう。

 

(注)サイトを改めて訪問したらページそのものが無くなっていた。以下のメモでシェアしていた文章で確認。

zigzagmax.hatenablog.com

 

叛旗 小説李自成〈上〉 (徳間文庫)

叛旗 小説李自成〈上〉 (徳間文庫)

 

 

 

叛旗 小説李自成〈下〉 (徳間文庫)

叛旗 小説李自成〈下〉 (徳間文庫)

 

 

 

李巌と李自成 (講談社文庫)

李巌と李自成 (講談社文庫)