中国武術雑記帳 by zigzagmax

当世中国武術事情、中国武術史、体育史やその周辺に関する極私的備忘録・妄想と頭の体操 。頭の体操なので、たまたま立ち寄られた方は決して鵜呑みにしないこと(これ、肝要)※2015年2月、はてなダイアリーより移行

2011-01-01から1年間の記事一覧

李自力『日中太極拳交流史』

李自力老師の博士論文をベースにした著作。第2章では、中華人民共和国において、太極拳の「普及」と「競技化」がすすめられるなかで、太極拳の本質が徐々に失われてゆくことに対して、率直な不安が記されている。 自ら書かれているように筆者はJOCの強化チー…

「様板武術」

数日前、韓国の伝統武術「テッキョン」がユネスコの無形文化遺産として登録されたことに関する報道のなかで、少林武術は先を越された、と指摘するようなものがあった。 無形文化遺産条約では「人類の無形文化遺産の代表的な一覧表」と「緊急に保護する必要が…

不慮の事故・・・で終わらせないために

10月末から11月はじめにかけて、海口で開催された「2011年中国武術散打功夫王争覇賽」の80キロ級に出場していた上官鵬飛選手が、準決勝でKO負けして意識を失い、そのまま病院に運ばれ、43日後の12月12日、治療の甲斐なく、彼が帰らぬ人となったことが発表…

満江紅

中央国術館で、満江紅という拳術の套路を作ったことは知っていたのだけれど、映像で見たことはなかった。「国家地理/武林探密」の第25集では、中央国術館第3期生の蘇順義氏の演じる満江紅拳が冒頭に出てくる。インターネット上にはほかにもいくつか映像…

『太極拳が教えてくれた人生の宝物 中国・武当山90日間修行の記』

書店でたまたま見かけて購入しました。 著者についての予備知識はまったくなく、表紙の写真から見た第一印象はむしろキワモノ?というものだったので、「参考用に、絶版にならないうちに買って置こう」という程度の気持ちでしたが、中身はなかなか面白かった…

大武術観

2020年のオリンピック競技種目化や、無形文化財としての保護、段位制、標準化、といったキーワードに並んで、2011年の中国武術界の話題として「大武術観」が挙げられると思うけれど、長らくピンとこなかった。改めて、「大武術観」について調べ直し…

太極拳は黄金期を迎えた?

武術研究院の専家委員会(2009年設立)の年会で、高小軍が「太極拳の発展は黄金期に入っている」と述べた。その根拠は、武術が2020年のオリンピック競技の候補種目に取り上げられたということらしい。IOCは近く、これらの候補種目の調査を行う予定で、2013年…

峨嵋派武術

詳しい経緯はわからないけれど、高野山金剛峰寺、高野山霊宝館、高野山大学の一行29人が峨嵋山で峨嵋武術研究会会長の汪鍵氏らと交流と演武を行ったらしい。百度の汪鍵氏のプロフィールで紹介されているエピソードが面白い。 それによると2009年に、ムエタイ…

済南形意拳

山東省済南師範天橋付属学校で、山東省、済南市の無形文化遺産である「済南形意拳」を取り入れることになったという記事。小学校中学年で試験的に、毎週2回のクラスを行うらしい。武術普及の拠点として「学校」が注目されているけれど、中央・官方は、「標準…

報奨金5万元

少林寺方丈の釈永信が外国に多額の預金と別荘をもち、さらに愛人と子供までいるという噂が広がっている。少林寺はこの悪質な噂に対して徹底的に戦う姿勢を示し、発信源に関する有力な情報を提供した人に対して5万元の報酬を払う、としてHP上で協力を呼びかけ…

段位制についての高小軍の講話

やや古いニュースになるけれど、8月末に、武術段位制度の指導員と審査員の研修が北京で開かれていたらしい。中国武術協会の高小軍主席は過去10年試行された段位制を振り返って、いくつかの問題が浮かび上がってきており、それらの問題はまだ解決できてい…

風紀引き締め

来月、トルコで開催される武術の世界大会に備えて合宿中の、散打のナショナルチームが風紀引き締めのための委員会を開催したという記事。良くわからないけれど、スピードスケートのショートトラックのナショナルチームで合宿中に殴打事件があったりして、キ…

2020年(2)

IOCの総会で2020年のオリンピックの競技種目候補の中に武術がかろうじて残ったのは以前のメモに書いたけれど、それからほぼ2ヶ月。 武術のオリンピック競技種目化について、中国青年報と新華日報に、相次いでコラムが掲載された。いずれも論調としては、競技…

中国におけるムエタイ

7月28日から30日にかけて広東省仏山市で、国家体育総局武術運動管理中心が主催、武漢体育学院と世界一家功夫体育産業有限公司という会社の実施請負で「第4届全国泰拳比賽」が開かれていたらしい。広州で開催なのに武漢体育学院が実施を請け負っているのはよ…

雑誌『精武』停刊

雑誌『精武』は今年にはいって停刊していたらしい。まだ武術をはじめて間もなかったころは大陸でも『少林寺』ブームのあとで、この記事でもとりあげられている、『武林』「武術健身』などの雑誌があったけれど、これらはすでに停刊しているらしく、今も続い…

王広西著、王萌整理『中国功夫』

太極拳の起源について、前回とりあげた呉文翰氏の小論「太極拳起源的幾種説法」には、実は太極拳の起源に関する代表的な主張以外にもいくつかの説が紹介されているのだけれど、そのなかに、近年主張されるようになった説として、河南省博愛の李氏起源説とい…

山西科学技術出版社『太極拳源流之謎』

太極拳の源流については、日本では、中国武術研究の草分けである松田隆智氏が陳式太極拳をされているからだろうか、唐豪の陳王廷創始説が広く受け入れられているような気がする。中国においても、最近鳴り物入りで立ち上がった「中国武術段位制」のHPでもこ…

李成銀教授と武術三観論

済南で「李成銀伝統武術発展戦略思想研討会」が開かれたという記事。 李成銀という人は、山東師範大学の武術気功教研室の主任をしているらしい。 李成銀氏のプロフィールや山東師範大学武術気功教研室の教授陣は同大学のHPをみるとわかる。百度のプロフィ…

アフリカにおける中国武術

中国青年報がケニアの空手事情を紹介した記事が、いろいろなサイトに転載され、関心を集めているようだ。 ケニアだけでも空手人口が10万人もいるというのは驚きだけれど、この記事の主眼は、タイトルからも明らかなとおり、空手のケニアでの浸透ぶりを中立…

国家級「非物質文化遺産」 第3次リスト

天津の元明清天妃博物館が行なったイベントで、つい最近国の第3批「非物質文化遺産」に認定された「攔手門」の武術隊が演武を行なったという記事。 天津市河东区“拦手门”武术入选国家级非遗本报讯(记者 戚帅)全国第六个“文化遗产日”当天,在天津市河东区大…

2020年

7月4日のIOC理事会の様子を伝える読売新聞の記事。中国では、中国武術協会よりもはやく陝西省武術協会のサイトが独自記事としてこのことを報道していた。伝統武術の継承についての危機意識が高まっている今、五輪採用をまた最優先して伝統武術を置き去りにす…

福居禅師、少林衣鉢真伝など

赤峰市で、「宋代」の少林僧・福居禅師の拳譜が見つかったという記事。福居禅師は、升宵道人に『羅漢行功短打』を伝えた人ということになっているけれど、程大力はその存在すら疑問視している(「少林功夫古籍的若干考证」)。この論文は少林寺のホームペー…

武術の里

「武術の里(武術之郷)」は1992年以来、25の省・自治区・直轄市で91か所が認定されているようで、最近では「武術の里」の競技会なども開催されているようだけど、その一方で、すでに「武術の郷」の実質を備えていないところもあり、3分の1の「武…

段位制

98年から試行されていた段位制が、「標準化管理体系」として整備され、正式にスタートしたという記事。 手続きが簡略化され、各地で昇段試験が受けられることになるらしい。 同時に、段位制度のためのオフィシャルホームページもたちあがった。 中国武术段位…

山西太谷非物质文化遗产形意拳走进中小学课堂

太谷県で、省の「非物質文化遺産」である形意拳を小中学校に導入するというお話。 山西太谷非物质文化遗产形意拳走进中小学课堂来源:全球功夫网 编辑:王强 日期:2011年06月21日太谷县教育局明年将在全县100多所中小学校中推广山西省非物质文化遗产形意…

全国伝統武術比賽

西安で開かれる2011年の伝統武術比賽は空前の規模らしい。 規則を見る限り、一等賞(20%)、二等賞(30%)、三等賞(30%)と別れていて、昔の観摩交流大会みたいだ。 上一篇 | 下一篇 规模空前 全国传统武术比赛暨全国农民武术比赛即将开赛 发布: 2011-6-…

散打のルール改定

散打のルール改定と、ナショナルチームの設立を伝える記事。 中国武術協会のHPから。 取长补短 不断完善 中国散打全面发展日趋成熟 阅读次数:142 自1979年被列为竞技比赛试验项目以来,中国散打事业已经走过了32个年头。已过“而立”之年的中国散打日趋成熟…

梅山武術と晏西征

晏西征という名前、聞き覚えがあると思ったら、『武林風範』で紹介されていた人だった。それはともかく、梅山武術というのは何だろう。なにか特別な扱いをされているような気がする。 改革開放後初期にはじまった武術学校で、しかも散打でそこそこの成績を残…

2011年のテーマは標準化

経済効率重視の世の中で、「太極十年不出門」とばかりに10年も悠長に修行を積む必要があり、しかも流派・門派があまりにも細かく分かれ、師弟関係による伝承が基本で、技術体系はあまり公開されておらず、上達の道筋が明らかでない中国武術は、テコンドーな…