中国武術雑記帳 by zigzagmax

当世中国武術事情、中国武術史、体育史やその周辺に関する極私的備忘録・妄想と頭の体操 。頭の体操なので、たまたま立ち寄られた方は決して鵜呑みにしないこと(これ、肝要)※2015年2月、はてなダイアリーより移行

2015-01-01から1年間の記事一覧

小沢昭一・土方鉄『芸能入門・考』

武術とは直接関係ないけれど、小沢昭一の、芸能に対する距離感が興味深かったのでメモ。早稲田大学でフランス文学を学んだ小沢昭一は、差別の中で、生きるために芸能を担ってきた(担わざるをえなかった)芸能者と自分の違いというのを、とても強く自覚して…

大学受験と武術

古いニュースになってしまったけれど、湖南省で、大学受験(高考)において、体育の競技成績に応じた加点をやめると発表したところ、省内の武術大会の参加者が半減したという記事。それでも、競技自体のレベルは下がることはなかったらしい。 武術は、競技種…

岡崎由美『漂泊のヒーロー 中国武侠小説への道』

友人から長らく借りている本。この本に限らず、勉強になる点が多く、ポイントが絞りきれない本ほど、メモが纏められず、後回しになっている気がする。 とはいえ、「●●さんへ」、という著者直筆サイン入りの本をいつまでも借りておくわけにもゆかないので、改…

伝統武術のアーカイブ化プロジェクト

1. 香港では、香港城市大学と中華国術総会が、3Dモーションキャプチャーを利用した香港の伝統武術のアーカイブ化のプロジェクトを進めているらしい。 サウスチャイナモーニングポストの記事によると、2013年以来、19流派・40人の師範の協力を得つつ、120の…

キアヌ・リーブス ファイティング・タイガー

GWにDVDで鑑賞。武術指導のユェン・ウーピンとキアヌ・リーブスは、一世を風靡した『マトリックス』以来の縁らしく、主演のタイガー・チェンは、ユェン・ウーピンのアクションチームの一員らしい。ストーリーはきわめてわかりやすくて、流派の総本山を再開発…

周偉良『「易筋経」四珍本校釈』

以前に中国出張の際に購入していたもの。タイトルのとおり、『易筋経』の数ある抄本・刊本の中から4種類の「珍本」を選んで校正を試みた本で、ちょっと前のメモで『易筋経』に話が飛んだので、思い出して読んでみた。 四種類の「珍本」とは、具体的には(1…

仏山市の武術事情2

仏山市といえば黄飛鴻ゆかりの地としても有名だけれど、世界各地の黄飛鴻の弟子などによる武館は100家を数えるという。ただし、おひざもとの状況は必ずしも楽観的ではない模様(注1)。 以下の記事によると、全市の武術館は370家(うち100あまりは市の武術協…

朱鶴亭 中国民間武術家連合会 中泰対抗戦など

広州で7月に散打とムエタイの対抗戦が行なわれるようで、広州市で記者発表が行なわれ、この会見に民間武術家を代表して香港の著名な気功家の朱鶴亭氏が訪れてエールを送った、という新浪の記事(最後に全文をコピペ)。 朱鶴亭氏については、買ってないけど…

妄想

ワイドショーでやっていたけれど、今日は、一説によると宮本武蔵と佐々木小次郎が巌流島で勝負した日(ただし、旧暦)らしい。 日本の古武道についてはあまりよく知らないので、門外漢の感想にすぎないけれど、武蔵の書いているものは、前後の時代に中国で書…

「一校一拳」 武術進校園3

最近、教育部が、重点的に支援する七つのスポーツ種目・七大学校体育種目をリスアップし、そのなかの二番目に武術がとりあげられた、というような話があり、各種の武術団体が一斉に色めき立っているように見える。たとえばこの記事(リンク)。 調べてみると…

韓賀仙『武之魂 記中国散打創始人之一 梅恵志先生的風雨人生』

北京散打チームの生みの親、梅恵志コーチの伝記。 内容は大きく立志篇、磨励篇、教学篇、創新篇、開創篇、伝承篇6つの部分に分かれている。 立志篇 では飛び込み、体操を学んだ少年時代が紹介される。少年時代は、父親の仕事の関係で北京にいながら、故郷の…

呪術、迷信と武術

陰門陣という、ぶっとんだ戦法があることを、最近読んだ相田洋『中国中世の民衆文化 呪術・規範・反乱』所収の「春画と厭勝 ---中国における性と民俗」という文章で初めて知った。 これは、官軍の用いる大砲を避けるために、民衆が性の力を利用したまじない…

中沢厚『つぶて』

地元の図書館にあった本。 たまたまぱらぱらとめくってみたら、水滸伝などからの引用(注1)もあったりして、面白そうだったので借りて読んでみた。 全編を通じて、子供の遊びから、巨大な投石機を使った戦争まで、石を投げるという行為が紹介されており、…

嵩山少林寺の海外進出

嵩山少林寺がオーストラリアに寺院を建設するという、ウォールストリートジャーナル日本語版の記事。記事は「少林寺が中国以外に進出するのは初めて」だというけれど、ドイツには2001年7月に徳国少林文化中心が作られていて、嵩山少林寺のウェブサイトでは、…

河南大学洪浩教授のイタリア訪問

河南大学公共体育部主任の洪浩教授が段位性普及のために、イタリアに指導にゆきました、という開封網の記事。 よく見かける、海外でも段位制が注目されていることをアピールする宣伝記事として読み飛ばしてもよかったのだけれど、講師の洪浩は昨年、武術研究…

「空手のルーツを探る」シンポジウム

去る1月25日、沖縄の浦添市で、福建省からも研究者を招き、空手のルーツに関するシンポジウムが開かれたらしく、沖縄と福建省の両方のメディアから報道されている(琉球新報と泉州晩報。最後に双方の記事をコピペ)。 琉球晩報の記事によると、このシンポ…

天津市の非物質文化遺産

無極拳(無極武術)についてのニュース(最後にコピペ)を見たので、天津市の非物質文化遺産について、天津非物質文化網で調べてみた。このページは、天津市の国レベルの非物質文化もあわせて紹介されていて、わかりやすい。 ■ 独流通背拳 独流は地名 。「太…

官方武術関係情報のアップデート

しばらく官方武術界(注)のニュースをチェックしていなかったので久しぶりに武術運動管理中心・中国武術協会・武術研究院の公式ウェブサイトを覗いてみた。いくつか、気になったニュースをメモ。リンクが多くなったので、記事全文はコピペせず、エバーノー…

鴛鴦蟷螂拳

2015年の東アジア文化都市は、新潟市、青島市、清州市が選ばれ、2月27日に新潟市でオープニングイベントが行われるけれど、青島市からは孫叢宅老師率いる鴛鴦蟷螂拳倶楽部なる一行が来日するらしい。 調べてみると、青島市の蟷螂拳は去年の11月に発表された…

尚武斎

天津「尚武斎」の周靖軒老師、you tubeにたくさん動画が公開されており、ときどきチェックしていたのだけれど、なんと51歳という若さでお亡くなりになったというニュースが。絶句。 永安公墓播报:武术名家周靖轩安葬于永安公墓 永安公墓 天津北方网讯:1月3…

金山宣夫『ヒーローの文化論』

地元図書館にあった本。スポーツや格闘技のヒーローのこともとりあげていて面白そうだったので読んでみた。もう10年近く前の本なので、出てくる例(カール・ルイスやマイク・タイソンや桑田真澄や大仁田厚)が古いのは仕方ないけれど、大衆の、「有名人や…

スターリング・シーグレーブ『宋家王朝 中国の富と権力を支配した一族の物語』

別の本を探しにいった図書館でたまたま手に取り、開いたページに、孫文は「・・・「新芸」と呼ばれる武術をマスターし、また秘密結社「三合会」の支部にも参加した」(P.115)と出ていたのが気になって、借りて読んでみた。カバーの写真が宋家の三姉妹の写真なの…

加藤徹『怪の漢文力 中国古典の想像力』

怪力乱神がもっぱら守備範囲の自分として、ずっと気になっていた本。おもいがけずに地元の図書館においてあったので読んでみた。内容は期待にたがわず、筆者の博学に裏付けらていてとにかく面白かった。 このブログの観点から、ひとつメモしておきたいと思っ…

于志鈞『中国伝統武術史』、『太極拳史』

昨年、于志鈞の『太極拳史』を読み終えたあとに、勢いにまかせて同氏の『中国伝統武術史』もあわせて読んだ(注1)。要点だけでもすぐメモしておきたかったのだけれど、なかなかまとめらなくて放置してあったメモを改めて読み直して少し整理してみた。于志鈞…

宮崎市定『大唐帝国 中国の中世』

年末に押入れのダンボールの中を整理していて目にとまった。たぶん、買った当時は、いつか読もうと思ってそのまま読まずにいたように思う。タイトルは『大唐帝国』だけれど、唐について語られるのは330ページ目から412ページまでで、分量は少なかった。その…

蘭州通備武学発展研究会総括大会

中国は基本的に旧暦なので、西暦の元旦はあまり派手なお祝いをしないけれど、1月1日に掲題の会合が開かれたらしい。 甘粛網と全球功夫網に関連の報道が見える(最後にコピペ)。甘粛網の記事では、2010年から2014年の活動がわりと具体的に述べられており、…