怪力乱神がもっぱら守備範囲の自分として、ずっと気になっていた本。おもいがけずに地元の図書館においてあったので読んでみた。
内容は期待にたがわず、筆者の博学に裏付けらていてとにかく面白かった。
このブログの観点から、ひとつメモしておきたいと思ったのは、漢字の「躍」と「踊」について解説した部分。
・・・同じ「おどる」でも、「躍る」と「踊る」では上下のベクトルが逆である。
「躍」の右半分は羽の下に隹(ふるとり)である。つまり躍は「曜」「耀」と同系で、かがやく羽のようにパッと空中にとびあがる」という意味である。
いっぽう「踊」の右半分は「つきぬける」という意味の音符「用」である。「大地をつきぬくように足を地面に叩きつける」が原義で、つきぬくようにわきおこるの意の「湧」、体をつきぬけるように力がわく意の「勇」と同系。
大地の霊をゆり起してパワーを得る、という呪術は世界各地にある。今日でも、武術や民族舞踊のステップに、そのなごりが見られる。日本の相撲で「四股を踏む」のも、古代の呪術「醜足(しこあし)」に由来する」(P.19)
中国武術においては、伝統武術から現代の競技武術に至るまで、引用文中にある「踊」の要素だけではなく、「躍」の動作が生き続けているように見える。現代の競技武術における跳躍動作は、競技ルール上、高得点を得るために導入が奨励されているという点があるにしても、多種多様な跳躍動作、力強く地面を踏みしめる動作が長いあいだ受け継がれているのは、それぞれの動作の見かけ上の意味を超えて、より深い理由があるのかもしれない、と思った。
- 作者: 加藤徹
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