中国武術雑記帳 by zigzagmax

当世中国武術事情、中国武術史、体育史やその周辺に関する極私的備忘録・妄想と頭の体操 。頭の体操なので、たまたま立ち寄られた方は決して鵜呑みにしないこと(これ、肝要)※2015年2月、はてなダイアリーより移行

2014-01-01から1年間の記事一覧

林建華『福建武術史』

アモイ大学の林建華教授が、アモイ大学出版社から『福建武術史』を出版したという記事。「網易」の記事がグーグル経由で今日流れてきたのだけれど、この本自体は、去年の8月に出版されているらしい。なぜ、今になってニュースとして流れたきたのかは不明。 …

高島俊男『水滸伝の世界』

『関羽 神になった「三国志」の英雄』を地元の図書館に借りにいったとき、たまたま目に留まったので、あわせて読んでみた。 この本の中で、水滸伝の好漢たちの活躍の舞台は、次第に太行山(河北)から梁山泊(山東)に移ってきているという指摘が面白かった…

武術の郷における段位制普及についての指導意見

7月11日、国家体育運動総局の武術運動管理中心が、全国の「武術の郷」に対して、段位制度の普及に関する「指導意見」を発表した。どの程度の強制力をもつものかはわからないけれど、今後10年間、毎年少なくとも100名の指導員を養成し、5回以上の研修を開催し…

焦作猿仙通背拳

you tubeでたまたま見つけた動画。 6分15秒くらいのところから、はじまる型が、陳式太極拳にそっくりなのが面白いと思ったのでとりあえずメモ。動画の後半では動作の解説をしているけれど、「懶扎衣」、「金剛搗碓」などと言っているようにも聞こえる。ht…

渡邉義浩『関羽 神になった「三国志」の英雄』

関羽信仰の成立に関する研究。以前に読んだ宮崎市定の「毘沙門天信仰の東漸」は、唐・宋の頃に武神として流行した毘沙門天信仰が次第に廃れ、関羽信仰に置き換えられていった、と書かかれていたけれど、新たに注目された守護神がなぜ関羽であったのか、その…

『高手在民間』

『高手在民間』というテレビ番組の撮影がスタートし、記者発表が行われたという新華網の記事。 両義点穴神拳、八門拳、崑崙派、陰陽八式、蔵武門礼儀扇、龍吟剣などなど、紹介してゆくことになるであろう流派の名前が聞きなれないものばかりでちょっと面白か…

蘇東披『石鐘山記』

蘇東披に、「石鐘山記」という一文がある。 原文はあとに示すとおり。全文を日本語に訳す力はないけれど、かいつまんで要点を記すと次のとおり(中国語の個人サイトでは、現代語訳が示されているものもあり、参考になる)。 - 『水経注』で、[麗+「おおざ…

岡本隆司『中国近代史』

筆者は、伝統的な中国における王朝と人民の関係、官僚制度の在り方について、以下のように述べる(以下、数か所を引用)。 財政のありようから見てとれるのは、中国では歴史的に、政府権力が必ずしも民間社会のすべてを掌握しておらず、必然的に権力のかかわ…

全国武術推広与発展検討会

天津で武術の普及と発展に関するシンポジウムが開催されたらしい。詳細はわからないけれど、とりあえずメモ。健康促進、型競技、格闘技、古武道として・・・武術との関わり方はいろいろあるけれど、全体とし盛り上げようという意識がないと、どんどん蛸壺化し、…

仏山市の武術事情

広東省仏山市でおきた訴訟事件に関する報道。夏休みを利用した20日間のコースに参加中、「対打」の練習で怪我をした学生の親が、安全義務を怠ったとして、老師と、直接の怪我を負わせたと思われる学生3名を起訴。一審の判決は、老師に10.6万元の経済的損失と…

呉殳『無隠録』(人民体育出版社『中国古典武学秘籍録(下)』所収)

前にもメモしたとおり、悪戦苦闘しながら『手臂録』を読んでいる。巻二「戳法」では、各種の方法が紹介されているのだけれど、たとえば 抽抜槍:革圏が得意な相手に用いる。口伝あり。 とあり、それ以上の具体的なことが書かれていない。やっぱり大事なこと…

2014全国武術段位制推広工作会議

掲題の会議が4月24日に開催された。 段位制普及のための十年計画については、年頭にも高小軍が言及していたけれど、いよいよ起動するということか。 それにしても1998年から2011年にわたる試行期間を経て正式にスタートした段位制、さらに3年の一部学校での…

武術進校園2

最近、江蘇省が全国に先駆けて武術を小学校・中学校の体育の必修科目にすることを盛り込んだ義務教育の体育の授業の実施法案を発表したけれど、以下の記事によると、教師の育成がおいついていないようだ。さらに、「旭日東昇」や「英雄少年」(記事では「武…

緑林派など(四川省の伝統武術)

四川省の緑林派拳法の老武術家(杜雲武)がなくなったという、四川在線の記事。 緑林派は、百度で調べてみると、2009年に四川省の非物質文化遺産に認定されている。動作はこんな感じらしい。四川省文化庁のHPで公開されているリストから、四川省の省レベル…

『馬振邦武学集 宗師伝記』

長年、陝西省武術隊の総教練を務め、「オールドスクール」のスーパースター・趙長軍らを育てあげたり、映画『武當』の南山道長をはじめ、役者・武術指導でも活躍し、昨年86歳で亡くなった馬振邦の伝記で、『馬振邦武学集』の第1巻。 (第2巻は『武学筆記』、…

『洛陽伽藍記』

図書館にあった本を読んでみた。この本のことは、武術史の教科書の中では、魏晋南北朝時代、洛陽のお寺の門前市で行なわれていた大道芸のことが取り上げられていて、名前は知っていたのだけれどちゃんと読んだことはなかった。気になったところをメモ。 3つ…

第七次全国武術工作会議

第七次全国武術工作会議が開催されたらしい。関連する3つの記事をコピペ。 今回の会議は中国武術協会の第10回会議をかねていて、ここでは幹部の代替わりがあったようだ(二つ目に引用した全球功夫網の記事に名前が出ている)。 全国武術工作会議における…

鳥跡

一念発起して、今年は中国武術の古典を少しずつでも読もうと思っている。 手始めに『手臂録』。テキストは人民体育出版社の『中国古典武学秘籍録(上)』。ほんの少しずつ読み進めていて、「一圏分形入用説」にたどり着いた。ここで、呉殳は槍の尖端が描く運…

陳舜臣の少林寺観

『珊瑚の枕』からの流れで、NHK大河ドラマの原作にもなった『琉球の風』を読んでみた。そうしたら、思いもかけず、少林寺に関する記述がでてきた。それほどの分量ではないので該当部分をメモ。『珊瑚の枕』(1982)から『琉球の風』(1992)まで、10年…

陳舜臣『珊瑚の枕』

数日前、古本屋でたまたま上巻を見つけ、その数か月前に購入済みだった下巻とあわせて読み始め、本日読了。陳元贇を主人公にしたこの小説については、高校生の頃、中国や中国武術に興味を持ち始めた頃から知っていたけれど、読んだことはなかった。ずっと気…

段位制普及と地方拳種の保護

久しぶりに武術運動管理中心・中国武術協会のHPを覗いてみて、二つの記事が目を引いた。一つ目は、2013年末に開催された全国段位制工作会議に関する報道で、各地の官方武術組織のHPにも転載されている。段位制の2014年以降の普及に関しては、学校におけ…