中国武術雑記帳 by zigzagmax

当世中国武術事情、中国武術史、体育史やその周辺に関する極私的備忘録・妄想と頭の体操 ※2015年2月、はてなダイアリーより移行

『スペシャルID 特殊身分』

少し前のある晩、ケーブルテレビの番組表を見ていたら、ドニー・イェン主演の掲題の作品がまもなく放送されるタイミングだったので、特に期待もせず鑑賞してみた。 ◎日本公開時の予告編 www.youtube.com 『インファナル・アフェア』ばりに、ドニー・イェンが…

騎士道、武士道、国術魂・・・

何かのついでに目にとまった佐伯真一『戦場の精神史 武士道という幻影』を読んでみた。 戦場の精神史 ~武士道という幻影 (NHK出版) 作者: 佐伯真一 出版社/メーカー: NHK出版 発売日: 2004/05/30 メディア: 単行本 購入: 2人 クリック: 11回 この商品を含む…

雲南省の非物質文化遺産

雲南省の省レベルの無形文化遺産(非物質文化遺産)である沙氏武術の市民向け無料講座が開かれたという記事を見て、雲南省の省レベルの無形文化遺産について調べてみたら、2013年に公表された第3次リストの「伝統体育、遊戯と雑技」のなかに以下の5つの項目…

新田一郎『相撲の歴史』

ずっと気になっていたこの本、読んでみたら期待以上に面白かった。 相撲の歴史 作者: 新田一郎 出版社/メーカー: 山川出版社 発売日: 1994/07 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (2件) を見る 全体のながれは、序章の以下の部分でも示されている。 ・・・…

少林寺と日本僧 佐藤秀孝「入元僧古源邵元の軌跡」など

天津の北少林寺(盤山北少林寺)についてメモした中で、元代の少林寺の中興の祖といわれる雪庭福裕の名前がでてきた。それで、同じ元代に日本から留学して諸寺を遍歴し、嵩山少林寺の首座も務めた古源邵元についての駒澤大学・佐藤秀孝教授の論文(注1)が…

「引進落空」など

王宗岳の打手歌に「引進落空合即出」と出てくることもあり、「引進落空」という言葉は太極拳をやる人の間ではかなり知られているように思われる。「引進落空」は、人民体育出版社の『中国太極拳辞典』でも、太極拳に特色のある技法として紹介されている。(…

陳舜臣『新装版 阿片戦争』

長編だし、小難しい感じがして敬遠していたこの小説、活字が大きくて読みやすそうな「新版」が地元の図書館に入っているのを見つけたので、読んでみた。 アヘン戦争前後の複雑な過程が、清朝側は満人官僚と漢人官僚、中華意識の強い鎖国派と経済的利益を考え…

陳白塵撰述・佐藤公彦訳『黒旗軍 十九世紀中国の農民戦争』

以前から気になっていた掲題の本の、図書館除籍本がアマゾンで安く売られていたので購入してみた。 黒旗軍―19世紀中国の農民戦争 (研文選書) 作者: 陳白塵,佐藤公彦 出版社/メーカー: 研文出版 発売日: 1987/10 メディア: 単行本 クリック: 4回 この商品を含…

「勢法」について

少し前に、SNS経由で茅元儀の朝鮮勢法とヨーロッパの剣術を対比させたブログが流れてきた。ヨーロッパの剣は柄(crossguard)が大きく張り出している点が中国の剣と異なり、当然ながら技法も異なるだろうということで、技術的な影響関係云々がいいたいわけで…

林伯原『中国武術史 ― 先史時代から十九世紀中期まで ―』

通常、できるだけ第三者的な視点で、(ときどきビビりながら)敬称も略する形でかいているこの備忘録、今回も同じような調子で書きはじめたのだけれど、どうしても個人的な思いと切り離しては書けないので、少し書き方を替えてみた。2016年第1弾、恩師への敬…

蔡龍雲「我対武術的看法」

12月19日、「神拳大龍」蔡龍雲が逝去したというニュースが流れてきた。享年87歳。謹んでご冥福をお祈りする。 ご葬儀は12月24日行なわれた。 news.twoeggz.com ロシア人マスロフ、アメリカ人ボクサー「黒獅子」ルサールを倒して「神拳大龍」と呼ばれたことは…

李氏家譜関連の動画

太極拳の起源とも関係のある河南省博愛県李氏家譜に関連して、youtubeでたまたま二つの動画を見つけたのでメモ。 一つ目の動画は、北京師範大学(いまは北京大学?)の趙世瑜教授が、現地で調査をしている様子とおもわれる。 www.youtube.com 後半の方でカメ…

氏家幹人『大江戸死体考』など

中国武術の本ではないけれど、掲題の本を古本屋でたまたま目にして、ぱらぱらとめくってみたら第2章が「様斬(ためしぎり)」というタイトルになっており、面白そうだったので買ってみた。 江戸時代になってまもなくは、将軍はじめ各国の領主も、自ら武器を…

CCTVドキュメンタリー『破譯達摩神功』、「健身気功・易筋経」など

「破譯達摩神功」は、youtubeで見つけた易筋経に関するCCTVのドキュメンタリー。国家体育運動総局の健身気功管理中心による、「健身気功・易筋経」の編纂・臨床試験(?)の過程なども紹介されていてなかなか興味深かった(注)。 www.youtube.com この…

tiger soldier など

先日、kung-fu tea というサイトで、tiger soldierについての記事を読んだ(といっても、ポップアップの翻訳機能を使いながら斜め読みしただけ)。アヘン戦争の頃、外交団に随行して中国各地を旅行したイギリス人画家のイラストや、写真のなかにでてくる、虎…

馬剣編著『燕趙武術』

先日『燕京武術』を読んだ勢いで、同じシリーズの『燕趙武術』を読んでみた。こちらは、河北省を中心に流行している武術についての紹介で、DVDの収録内容としてクローズアップされているのは楊式太極拳、八極拳、翻子拳。DVDの演武者は、いずれも編著…

澤田瑞穂『中国史談集』

最近すこし呪術やらまじない、民間信仰に関心がでてきたところで、地元の図書館にあった澤田瑞穂『鬼趣談義』『中国の呪法』『中国の仏教と文学』などを立て続けに読んでみた。(掲題の本だけは図書館にはなかったので、中古のものをアマゾンで購入。) 『鬼…

何定鏞『巴蜀武林英豪』出版など

掲題のタイトルの本が出版されたらしい。「成都商報」の記事を「成都全捜索」が転載したものをメモ。 作者は四川省の何定鏞という作家らしく、この人も「武術世家」の人らしい。峨眉派を含む西南地方の武術について、特に近現代史を理解するうえで参考になる…

知野二郎『香港クンフー映画評論集 龍熱大全』

地元図書館の、たまにしか行かない分館で発見し、読了。こんな素敵な本がおいてあるなんて、わが地元の図書館もなかなか捨てたもんじゃないなあ。だれかマニアが住んでるんだろうか。 龍熱大全 - 香港クンフー映画評論集 作者: 知野二郎 出版社/メーカー: ぴ…

徐皓峰『武士会』

この夏中国で公開されたチェン・カイコーの『道士下山』の原作者であり、自身がメガホンをとった『師父』の公開も近い徐皓峰の小説。 主人公は、李存義をモデルにした形意拳家の李尊吾で、義和団事件に関連して、天津の民間宗教のリーダー・金刀聖母(黄蓮聖…

周世勤、楊祥全『燕京武術』

天津の武術を紹介した楊祥全の『津門武術』という本が面白そうで、著者について調べていたら、掲題の本の著者(周世勤との共著)であることがわかった。 地方ごとの武術を紹介したこのシリーズは、ちょうど仕事で中国に駐在していたころに出版されたのだけれ…

坂出祥伸『「気」と道教・方術の世界』

1. 道教とは、永遠の生命への到達を目標として、そのために役立つ科学技術、とくに医学、薬学を重要な要素とする土着的な信仰である(P.125) 筆者は、道教についてさまざまな定義があること指摘したうえで、端的に上のように自分の考えかたを示す。 地元の図…

内家とか外家とか

武術の「常識」といわれていることも、いろいろ遡って考えると、実はよくわからないことも多い。 中国武術は内家拳と外家拳に大別されるという考え方も、その一つのような気がする。 以下の動画は、そもそもどういう目的で作られたものか、よくわからないけ…

二階堂善弘『明清期における武神と神仙の発展』

日本ではあまり知られていない中国の民間信仰における神々について紹介された本。同じ著者の、一般向けにもう少し簡単に紹介されたものに平凡社新書の『中国の神さま』があるほか、関連研究として、『道教・民間信仰における元帥神の変容』(未見)がある。 …

小沢昭一・土方鉄『芸能入門・考』

武術とは直接関係ないけれど、小沢昭一の、芸能に対する距離感が興味深かったのでメモ。早稲田大学でフランス文学を学んだ小沢昭一は、差別の中で、生きるために芸能を担ってきた(担わざるをえなかった)芸能者と自分の違いというのを、とても強く自覚して…

岡崎由美『漂泊のヒーロー 中国武侠小説への道』

友人から長らく借りている本。この本に限らず、勉強になる点が多く、ポイントが絞りきれない本ほど、メモが纏められず、後回しになっている気がする。 とはいえ、「●●さんへ」、という著者直筆サイン入りの本をいつまでも借りておくわけにもゆかないので、改…

周偉良『「易筋経」四珍本校釈』

以前に中国出張の際に購入していたもの。タイトルのとおり、『易筋経』の数ある抄本・刊本の中から4種類の「珍本」を選んで校正を試みた本で、ちょっと前のメモで『易筋経』に話が飛んだので、思い出して読んでみた。 四種類の「珍本」とは、具体的には(1…

妄想

ワイドショーでやっていたけれど、今日は、一説によると宮本武蔵と佐々木小次郎が巌流島で勝負した日(ただし、旧暦)らしい。 日本の古武道についてはあまりよく知らないので、門外漢の感想にすぎないけれど、武蔵の書いているものは、前後の時代に中国で書…

呪術、迷信と武術

陰門陣という、ぶっとんだ戦法があることを、最近読んだ相田洋『中国中世の民衆文化 呪術・規範・反乱』所収の「春画と厭勝 ---中国における性と民俗」という文章で初めて知った。 これは、官軍の用いる大砲を避けるために、民衆が性の力を利用したまじない…

中沢厚『つぶて』

地元の図書館にあった本。 たまたまぱらぱらとめくってみたら、水滸伝などからの引用(注1)もあったりして、面白そうだったので借りて読んでみた。 全編を通じて、子供の遊びから、巨大な投石機を使った戦争まで、石を投げるという行為が紹介されており、…