訃報 金庸、レイモンド・チョウ
中国武術そのものとは関係ないかもしれないけれど、中国武術やそれに結びついた文化を世界に広めるのに貢献したと思われる人物が二人、相次いでこの世を去った。
10月30日に亡くなった。享年94歳。
金庸については過去にもメモしたけれど、小説は『書剣恩仇録』『鹿鼎記』しか通読したことがなく、映像作品も90年代に張紀中がプロデュースしたドラマをいくつか見たにすぎないけれど、『射鵰三部作』の第二部にあたる『神鵰侠侶』で、第一部にあたる『射鵰英雄伝』では売国奴で敵役だった楊康の息子・楊過が主人公になっていることに驚いた。
『天龍八部』も、漢民族にとっても敵、契丹人の喬峰(蕭峯)が主人公で、正義と悪が入れ替わりながら、民族の対立を乗り越えようとしているところがとても面白いと思っていた。
これも前にも書いたけれど、その『天龍八部』で一番好きなので、喬峰(蕭峯)が智光大師に、漢人も契丹人も同じ人ではないか、と教えられる場面。この場面に出会って以来、日本と中国の「歴史問題」も、同じように乗り越えられるに違いない、という考え方が自分の中に宿っている。
以下の記事では、金庸は、その『神鵰侠侶』を、読者の反響によって展開を換えてしまったことで、「自分にとって最も失敗した作品」と言っていたのがわかり興味深い。
ちなみに、小龍女を演じた数々の女優の中では、リウ・イーフェイはもっともお眼鏡にかなう女優さんだったらしい。
もう一人はレイモンド・チョウ。
11月2日逝去。競ん年91歳。
彼のゴールデンハーベストがなかったら、世界はどのような形でブルース・リーや、ジャッキー・チェンと出会っていたのか想像もできない。
そういえば、以前に、ブルース・リーに指名されて『ドラゴンへの道』(と、『死亡遊戯』の一部)を撮ったカメラマン・西本正(中国語名:賀蘭山)のインタビュー集を読んだ。
映画の技術的なことはよくわからないけれど、NGシーンを、編集技師が勝手にライバル会社に売っちゃって、その映画が先に公開されちゃうというような生き馬の目を抜くような香港映画界の生々しいエピソードが紹介されていて、とても面白かった。
完成した『ドラゴンへの道』の試写がおわったところで一緒に見ていたブルース・リーが立ち上がって「西本さん、ありがとう!」といって抱き付いてきたというところは、日本人としてなんだか嬉しかった。
ブルース・リーに蹴られた橋本力氏を含めて、香港カンフー映画の黄金期にそうやって日本人が関わっていたのだと改めて思う。
少し話が脱線してしまったけれど、慎んでご冥福をお祈りする。
〇レイモンド・チョウへのインタビュー
全部聞いていないけど、とりあえずメモ。