『Return of Bruce』、『Legend of the Condor Heroes』など
ブルース・リーが生きていれば77歳の誕生日を迎える11月27日前後に、「そっくりさん」主演の映画を含めて、いろんな情報が流れてきた。
なかでも印象に残ったのは、ブルース・リ(呂小龍)のReturn of Bruce (『忠烈精武門』)
出典:Rare Kung Fu Movie Website 2017年11月28日の記事
テーマ曲まで利用している念の入れようだけれど、お願いだから帰って来ないでいいです。
欧米では、ブルース・リーのそっくりさん主演の映画を示す用語として、
Bruceploitation なる言葉があることも知った。
Bruceploitationっていうのは、ブラックスプロイテーションをもじってるんだと思うけれど、以下のページに載っているだけでも33作品あり、立派に一つの映画ジャンルのようになっている。
Category:Bruceploitation films - Wikipedia
アマゾンプライムには、ブルース・リ(呂小龍)以外にも、ブルース・リィ(黎小龍)や、ブルース・リャン(梁小龍)の映画もあるみたいなので、とりあえずメモしておこう。英語版で日本語字幕のないものがほとんどだけれど、中には日本語字幕のものもある模様。
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英語版、ということに関連して、金庸の『射鵰三部作』の英訳がはじめて出版されることになり、翻訳者に取材した記事が「中国新聞網」に掲載された。まず『射鵰英雄伝』の第一巻が2018年の2月に刊行されるらしい。
日本語版では「江南七怪」とか「九陰真経」とか、経典の名前や登場人物のあだ名、グループや必殺技や流派の名前まで、漢字のまま、特に翻訳する必要はないと思うけれど、英語にするときは、こういうものを一つ一つ、原文の印象を損なわないように翻訳しなければならないのは、確かに大変な作業だろう。
「九陰白骨爪」の訳 Nine Yin Skeleton Claw は、陰陽の「陰」だけが中国語の音のまま残っているけれど、この辺にも翻訳の苦労が偲ばれる。
ちなみに、徳間書店から出ている『射鵰三部作』の『倚天屠龍記』では、この「陰」と「陽」に関連して決定的な誤訳があるらしい。
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考えてみると、こういう翻訳上の問題は、映画や文学だけでなく、武術書を翻訳する場合にも避けてとおれない問題だろう。そう考えたときに、歴史的・地理的な関係は置いても、漢字を(ある程度まで)理解ができる日本のほうが、圧倒的に有利であり、中国武術の理解が進んでいるに違いないと思ってしまうけれど、以前にメモした『単刀法選』の現代語訳をはじめ、アマゾンのページには孫禄堂の『太極拳学』、『八卦拳学』、『形意拳学』の英訳も並んでいる。さらに、以下のような原典を翻訳して公開しているようなサイトもあり、中国武術の基礎研究は、実は日本より英語圏のほうが「はるかに」(←ここ重要)進んでいて、成果が蓄積されているような気もする。
brennantranslation.wordpress.com
別に張り合う必要はなくて、必要に応じてリソースとしてどちらも活用すればいいだけの話ではあるけれど、日本でもこういった基礎研究を積み重ねていったほうがよいと思うし、歴史的な経緯から見ても、日本にしかできないユニークな成果が生みだせるにちがいないと思う。
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なお、エラそうにメモしたけれど、金庸の小説は『書剣恩仇録』『鹿鼎記』以外は未読。
『射鵰三部作』に関しては『射鵰英雄伝』をリー・ヤ-ポン版、『神鵰侠侶』をホアン・シャオミンとリウ・イーフェイ版のドラマ、『倚天屠龍記』は、たぶんそのストーリーのごく一部でしかないジェット・リーの映画『カンフー・カルト・マスター 魔教教主』で見ただけなので、実はあまりよく知らない。
ただ、『射鵰英雄伝』では売国奴で敵役の楊康の息子・楊過が第2作の『神鵰侠侶』では主人公を演じるなど、主人公レベルで正義と悪が入れ替わり、民族の対立を乗り越えようとしているところがとても面白いと思っていた。
これも原作を読んでいないのでエラそうなことはいえないけれどフー・ジュン版で見た『天龍八部』のなかで一番印象に残っているのも、
主人公で契丹人の喬峰(蕭峯)が智光大師に、漢人も契丹人も同じ人ではないか、と教えられる場面。原作で探すと、ここの場面か。
“万物一般,众生平等。圣贤畜生,一视同仁。汉人契丹,亦幻亦真。恩怨荣辱,俱在灰尘。”
同じように、中国人も日本人もわかりあえる、というのは個人的な信念ではある。