中国武術雑記帳 by zigzagmax

当世中国武術事情、中国武術史、体育史やその周辺に関する極私的備忘録・妄想と頭の体操 。頭の体操なので、たまたま立ち寄られた方は決して鵜呑みにしないこと(これ、肝要)※2015年2月、はてなダイアリーより移行

林伯原『中国武術史 ― 先史時代から十九世紀中期まで ―』

通常、できるだけ第三者的な視点で、(ときどきビビりながら)敬称も略する形でかいているこの備忘録、今回も同じような調子で書きはじめたのだけれど、どうしても個人的な思いと切り離しては書けないので、少し書き方を替えてみた。2016年第1弾、恩師への敬…

蔡龍雲「我対武術的看法」

12月19日、「神拳大龍」蔡龍雲が逝去したというニュースが流れてきた。享年87歳。謹んでご冥福をお祈りする。 ご葬儀は12月24日行なわれた。 news.twoeggz.com ロシア人マスロフ、アメリカ人ボクサー「黒獅子」ルサールを倒して「神拳大龍」と呼ばれたことは…

李氏家譜関連の動画

太極拳の起源とも関係のある河南省博愛県李氏家譜に関連して、youtubeでたまたま二つの動画を見つけたのでメモ。 一つ目の動画は、北京師範大学(いまは北京大学?)の趙世瑜教授が、現地で調査をしている様子とおもわれる。 www.youtube.com 後半の方でカメ…

氏家幹人『大江戸死体考』など

中国武術の本ではないけれど、掲題の本を古本屋でたまたま目にして、ぱらぱらとめくってみたら第2章が「様斬(ためしぎり)」というタイトルになっており、面白そうだったので買ってみた。 江戸時代になってまもなくは、将軍はじめ各国の領主も、自ら武器を…

CCTVドキュメンタリー『破譯達摩神功』、「健身気功・易筋経」など

「破譯達摩神功」は、youtubeで見つけた易筋経に関するCCTVのドキュメンタリー。国家体育運動総局の健身気功管理中心による、「健身気功・易筋経」の編纂・臨床試験(?)の過程なども紹介されていてなかなか興味深かった(注)。 【奇异8】视频227:发…

tiger soldier など

先日、kung-fu tea というサイトで、tiger soldierについての記事を読んだ(といっても、ポップアップの翻訳機能を使いながら斜め読みしただけ)。アヘン戦争の頃、外交団に随行して中国各地を旅行したイギリス人画家のイラストや、写真のなかにでてくる、虎…

馬剣編著『燕趙武術』

先日『燕京武術』を読んだ勢いで、同じシリーズの『燕趙武術』を読んでみた。こちらは、河北省を中心に流行している武術についての紹介で、DVDの収録内容としてクローズアップされているのは楊式太極拳、八極拳、翻子拳。DVDの演武者は、いずれも編著…

澤田瑞穂『中国史談集』

最近すこし呪術やらまじない、民間信仰に関心がでてきたところで、地元の図書館にあった澤田瑞穂『鬼趣談義』『中国の呪法』『中国の仏教と文学』などを立て続けに読んでみた。(掲題の本だけは図書館にはなかったので、中古のものをアマゾンで購入。) 『鬼…

何定鏞『巴蜀武林英豪』出版など

掲題のタイトルの本が出版されたらしい。「成都商報」の記事を「成都全捜索」が転載したものをメモ。 作者は四川省の何定鏞という作家らしく、この人も「武術世家」の人らしい。峨眉派を含む西南地方の武術について、特に近現代史を理解するうえで参考になる…

知野二郎『香港クンフー映画評論集 龍熱大全』

地元図書館の、たまにしか行かない分館で発見し、読了。こんな素敵な本がおいてあるなんて、わが地元の図書館もなかなか捨てたもんじゃないなあ。だれかマニアが住んでるんだろうか。 龍熱大全 - 香港クンフー映画評論集 作者: 知野二郎 出版社/メーカー: ぴ…

徐皓峰『武士会』

この夏中国で公開されたチェン・カイコーの『道士下山』の原作者であり、自身がメガホンをとった『師父』の公開も近い徐皓峰の小説。 主人公は、李存義をモデルにした形意拳家の李尊吾で、義和団事件に関連して、天津の民間宗教のリーダー・金刀聖母(黄蓮聖…

周世勤、楊祥全『燕京武術』

天津の武術を紹介した楊祥全の『津門武術』という本が面白そうで、著者について調べていたら、掲題の本の著者(周世勤との共著)であることがわかった。 地方ごとの武術を紹介したこのシリーズは、ちょうど仕事で中国に駐在していたころに出版されたのだけれ…

坂出祥伸『「気」と道教・方術の世界』

1. 道教とは、永遠の生命への到達を目標として、そのために役立つ科学技術、とくに医学、薬学を重要な要素とする土着的な信仰である(P.125) 筆者は、道教についてさまざまな定義があること指摘したうえで、端的に上のように自分の考えかたを示す。 地元の図…

内家とか外家とか

武術の「常識」といわれていることも、いろいろ遡って考えると、実はよくわからないことも多い。 中国武術は内家拳と外家拳に大別されるという考え方も、その一つのような気がする。 以下の動画は、そもそもどういう目的で作られたものか、よくわからないけ…

二階堂善弘『明清期における武神と神仙の発展』

日本ではあまり知られていない中国の民間信仰における神々について紹介された本。同じ著者の、一般向けにもう少し簡単に紹介されたものに平凡社新書の『中国の神さま』があるほか、関連研究として、『道教・民間信仰における元帥神の変容』(未見)がある。 …

小沢昭一・土方鉄『芸能入門・考』

武術とは直接関係ないけれど、小沢昭一の、芸能に対する距離感が興味深かったのでメモ。早稲田大学でフランス文学を学んだ小沢昭一は、差別の中で、生きるために芸能を担ってきた(担わざるをえなかった)芸能者と自分の違いというのを、とても強く自覚して…

岡崎由美『漂泊のヒーロー 中国武侠小説への道』

友人から長らく借りている本。この本に限らず、勉強になる点が多く、ポイントが絞りきれない本ほど、メモが纏められず、後回しになっている気がする。 とはいえ、「●●さんへ」、という著者直筆サイン入りの本をいつまでも借りておくわけにもゆかないので、改…

周偉良『「易筋経」四珍本校釈』

以前に中国出張の際に購入していたもの。タイトルのとおり、『易筋経』の数ある抄本・刊本の中から4種類の「珍本」を選んで校正を試みた本で、ちょっと前のメモで『易筋経』に話が飛んだので、思い出して読んでみた。 四種類の「珍本」とは、具体的には(1…

妄想

ワイドショーでやっていたけれど、今日は、一説によると宮本武蔵と佐々木小次郎が巌流島で勝負した日(ただし、旧暦)らしい。 日本の古武道についてはあまりよく知らないので、門外漢の感想にすぎないけれど、武蔵の書いているものは、前後の時代に中国で書…

呪術、迷信と武術

陰門陣という、ぶっとんだ戦法があることを、最近読んだ相田洋『中国中世の民衆文化 呪術・規範・反乱』所収の「春画と厭勝 ---中国における性と民俗」という文章で初めて知った。 これは、官軍の用いる大砲を避けるために、民衆が性の力を利用したまじない…

中沢厚『つぶて』

地元の図書館にあった本。 たまたまぱらぱらとめくってみたら、水滸伝などからの引用(注1)もあったりして、面白そうだったので借りて読んでみた。 全編を通じて、子供の遊びから、巨大な投石機を使った戦争まで、石を投げるという行為が紹介されており、…

河南大学洪浩教授のイタリア訪問

河南大学公共体育部主任の洪浩教授が段位性普及のために、イタリアに指導にゆきました、という開封網の記事。 よく見かける、海外でも段位制が注目されていることをアピールする宣伝記事として読み飛ばしてもよかったのだけれど、講師の洪浩は昨年、武術研究…

「空手のルーツを探る」シンポジウム

去る1月25日、沖縄の浦添市で、福建省からも研究者を招き、空手のルーツに関するシンポジウムが開かれたらしく、沖縄と福建省の両方のメディアから報道されている(琉球新報と泉州晩報。最後に双方の記事をコピペ)。 琉球晩報の記事によると、このシンポ…

金山宣夫『ヒーローの文化論』

地元図書館にあった本。スポーツや格闘技のヒーローのこともとりあげていて面白そうだったので読んでみた。もう10年近く前の本なので、出てくる例(カール・ルイスやマイク・タイソンや桑田真澄や大仁田厚)が古いのは仕方ないけれど、大衆の、「有名人や…

スターリング・シーグレーブ『宋家王朝 中国の富と権力を支配した一族の物語』

別の本を探しにいった図書館でたまたま手に取り、開いたページに、孫文は「・・・「新芸」と呼ばれる武術をマスターし、また秘密結社「三合会」の支部にも参加した」(P.115)と出ていたのが気になって、借りて読んでみた。カバーの写真が宋家の三姉妹の写真なの…

加藤徹『怪の漢文力 中国古典の想像力』

怪力乱神がもっぱら守備範囲の自分として、ずっと気になっていた本。おもいがけずに地元の図書館においてあったので読んでみた。内容は期待にたがわず、筆者の博学に裏付けらていてとにかく面白かった。 このブログの観点から、ひとつメモしておきたいと思っ…

于志鈞『中国伝統武術史』、『太極拳史』

昨年、于志鈞の『太極拳史』を読み終えたあとに、勢いにまかせて同氏の『中国伝統武術史』もあわせて読んだ(注1)。要点だけでもすぐメモしておきたかったのだけれど、なかなかまとめらなくて放置してあったメモを改めて読み直して少し整理してみた。于志鈞…

宮崎市定『大唐帝国 中国の中世』

年末に押入れのダンボールの中を整理していて目にとまった。たぶん、買った当時は、いつか読もうと思ってそのまま読まずにいたように思う。タイトルは『大唐帝国』だけれど、唐について語られるのは330ページ目から412ページまでで、分量は少なかった。その…

R.H. ファン・フーリク『中国のテナガザル』

チャウ・シンチーの『西遊記 はじまりのはじまり』が公開中だけれど、中野美代子『孫悟空の誕生−サルの民話学と「西遊記」』に続けて、地元の図書館にあった本を読了。中国では、サルといえば、もともとは「猴」のサル(マカク属のサル)と「猿」のサル(テ…

大連武術文化博物館

以前に巨大プロジェクトとしてメモしていた、大連武術文化博物館が完成したらしい。投資総額は、当初は6,000万元と報道されていたけれど、今回のニュースでは1.06億元となっている。社会に無料で開放、ということなので、いつか機会があったら行ってみたい。…