中国武術雑記帳 by zigzagmax

当世中国武術事情、中国武術史、体育史やその周辺に関する極私的備忘録・妄想と頭の体操 。頭の体操なので、たまたま立ち寄られた方は決して鵜呑みにしないこと(これ、肝要)※2015年2月、はてなダイアリーより移行

中国武术协会关于加强行业自律弘扬武术文化的倡议书

いちいち追いかけていないけれど、2017年の魏雷とMMAの徐暁冬の対戦後、中国武術の「大師」(自称含む)と格闘家の対戦が、その後も繰り返されている。

中国武術協会は6月28日付で「中国武术协会关于加强行业自律弘扬武术文化的倡议书」なる文章を発表。

 

www.wushu.com.cn

あえて直訳的に日本語にすると

武術文化を広めるために業界の自律を促す中国武術協会からの提案書

みたいな感じになるのだろうか。

 

文章は、最近、にせ「大師」やにせ「掌門」が商業的利益のために中国武術界の名誉を傷つけているとして、これに対応するために五つのことを提唱している。

 

といっても、一番目は「社会主義の核心的価値観に従って、文明的に行動しましょう」というお題目のようなもので、より切実なのは二番目以下で

 

 

・伝統流派を認めて、勝手に新しい拳種や門派を作ることなく、互いに尊重しあいましょう

・武術練習のレベル判定は「段位制」によることを支持しましょう

 

・拳種や門派を名乗って総合格闘技等の賽事に出るのはやめましょう

 

・拝師や祝賀の目的でお金を集めるのはやめましょう

 

といった内容になっており、これらのルールを皆が守ってくれることを望む(「望武術人共守之」)やや控えめに結ばれている。

 

ここでいわれていることは、実際には、2017年11月に国家体育運動総局が出した「武術賽事の監督管理強化に関する意見」(「关于进一步加强武术赛事活动监督管理的意见」)に書かれていることとかわらないといえばかわらない。結局、業界団体の中国武術協会としては、行政レベルから指摘された以上の強いことも言えず、同じことを(やや遠慮がちに)繰り返す以外にないということなのだろうか。

 

選手Aと選手Bの対戦の結果は、流派の優劣ではなくて、互いの「功夫」の優劣でしかないので、総合格闘技の競技に出てるなら、あくまでも個人の名義で、というのは一見そのとおりのようにも見えるけれど、他方で、どんなに頑張っても新たに一門を為すことは認められいない状況の中で、リスクを冒して競技に出場しても、負ければ自分の責任、勝ってもその努力がなかなか報われない構造になっているというのは不公平な気もする。

その意味でも、この問題が突きつけた、これまでの武術普及の在り方の問題に中国武術協会としてもきちんと答えていないように見えるし、これからの社会に求められる武術とは何なのか、改めて思考が求められる時期に来ているのかもしれない。

 

zigzagmax.hatenablog.com

 

zigzagmax.hatenablog.com

 

zigzagmax.hatenablog.com