中国武術雑記帳 by zigzagmax

当世中国武術事情、中国武術史、体育史やその周辺に関する極私的備忘録・妄想と頭の体操 。頭の体操なので、たまたま立ち寄られた方は決して鵜呑みにしないこと(これ、肝要)※2015年2月、はてなダイアリーより移行

2017-01-01から1年間の記事一覧

武術学校は出稼ぎ世帯にとっての託児所? 武術学校の現在3

例の事件から、どうして大陸の武術はいまのような姿になってしまったのかという議論がまだ続いている。「土逗公社」に掲載された「武打靠演技,武校戒网瘾:中国武术的被KO之路」という記事では、競技スポーツ化が武術の套路の意味を変えてしまったこととあ…

岳家拳、満江紅など

少し前に全球功夫網に掲載された、岳家拳についての紹介記事によると、岳飛に由来する「岳家拳」で「全国的に比較的突出」しているのは(1)河南省新郷の路全振、張開明を代表とする新郷岳家拳、(2)湖北省黄梅の雷傑を代表とする黄梅岳家拳(注)、(3)湖…

「約架」事件

GW前後、中国武術関係のニュースでは、「雷公太極」の魏雷とMMAの徐暁冬の勝負についての話題で持ち切りだったけれど、中国武術協会が果し合い(約架)などの「違法行為」に反対するという強い声明を出し、かつ徐暁冬のウェイボーのアカウントの閉鎖など、個…

高段位認定者(2017.4、2016.7)のアップデート

2017年4月25日、中国武術協会が高段位者の認定に関する通知を発表した。 それで調べてみたら、前回メモした2015年12月の認定以来、2016年6月にも何瑞虹ら26人の段位認定が行われていたことがわかったので、今後の参考のために、それぞれ簡単にメモ。 1.2016…

『激闘!アジアン・アクション映画大進撃』

『ドラゴン・ガール』のメモの最後に、アジアのアクション映画が旬なのか?とメモしたら、数日後にこの本が出版されてびっくり。さっそく手にとってみると、充実した中身で(とくに、知野二郎「伝説の映画帝国、邵氏兄弟有限公司 ---その栄光と波乱の興亡史…

大学受験と武術2

中国の大学受験はこれから本格シーズンにはいるのかな。 「武術と民族伝統体育」専攻では、今年は新たに雲南民族大学が募集を行うらしい。 news.xinhuanet.com その名もずばり大学受験生向けの「高3ネット」によると、「武術と民族伝統体育」専攻があるのは4…

「鷂子高三」など

たまたま「鷂子高三」こと高占魁について調べていたら、最近「鷂子高三」という映画がクランクインしたというニュースがヒットした。 www.qqgfw.com また、気づかなかったけれど、2016年の9月には、陝西省銅川市耀州に鹞子高三記念館がオープンしていた。 ww…

『ドラゴン・ガール』など

先日、シラットを題材にしたブルネイ初の長編映画という、掲題の作品の上映会と監督によるトークがあった。 www.youtube.com jfac.jp シラットが得意な幼なじみの気をひくために高校でシラット部を作った女の子・ヤスミンが主人公で、「あんな危険なものはや…

村上兵衛『守城の人―明治人柴五郎大将の生涯』など

最近、面白そうだと思って読んでみた本で、このブログの観点からはど真ん中ストライクではないものの、それぞれに少しずつ興味深い点があったものを、備忘録としてまとめてメモ。 1村上兵衛『守城の人―明治人柴五郎大将の生涯』義和団事件のとき北京に篭城…

少林寺関係の時事ネタ アップデート

少林寺関係のメモが続いたけれど、情報のアップデートの意味で、最近見かけた記事などの中から、時事的小ネタをまとめてメモ。 1.釈永信方丈のスキャンダル関係 とりあえずメモだけ。 news.sohu.com 〇関連の過去メモ zigzagmax.hatenablog.com 2.武僧くん …

「圏外」の敗槍を救う槍法…からの頭の体操

程宗猷の『秘本長槍法図説』(馬力編『中国古典武学秘籍録 上巻』所収)は、「圏里」の「敗槍」を救うのは容易だが、「圏外」の「敗槍」を救うのは困難であるといい、前者には「死掤対」「翻身掤退」のような「死中反活」の方法があるのに対し、後者すなわち…

唐豪『少林拳術秘訣考証』

数年前にメモを書こうと思って読み始め、途中で挫折していた唐豪の『少林拳術秘訣考証』をなんとか読了。 〇『少林拳術秘訣考証』(山西科学技術出版社版) 尊我斎主人の『少林拳術秘訣』とそのベースになっているといわれる『少林宗法』は清末の革命志士が…

孫徳朝、趙明、康意「 峨眉武术研究三十年」

前回、過去100年の少林武術研究を振り返る論文についてメモしたあと、ちょうどよいタイミングで、内江師範学院の学報に載った峨眉派武術についての研究状況を振り返る論文を見つけたのでメモ。 〇以下のリンクのPDFのボタンでPDFファイルのダウンロードが…

程馨,程大力『近百年少林武術研究述論』

国家体育総局体育科学研究所のサイトで見つけた論文。 国家体育总局体育科学研究所-近百年少林武术研究述论 郭希汾の「中国体育史」や徐震、唐豪以来の中国国内における少林武術についての研究を 1.少林武術の起源 2.少林武術の誕生とその存在の歴史・文化的…

周偉良編著『中国武術史参考資料選編』

昨年暮れにインターネットで注文。 この本のウリは個人的には二つあって、一つは清朝の公文書(檔案資料)の部分で、白蓮教や八卦教の反乱の関係者の供述書や、これらの事件に関する地方官僚から中央への報告書のなかに見られる武術の内容が約20ページにわた…

武術競技の国際化(国際武術聨合会 呉廷貴取材記事)

国家体育運動総局のウェブサイトに、国際武術聨合会執行副主席の呉廷貴(Anthony Goh)への取材記事(中国体育報からの転載)が掲載されたのでメモ。 呉廷貴は米国籍の華人。 GKF - History 記事によると、国際武術聨合の会員は現在147(記事によれば、それに対…

「三尖照」「三尖到」など

人民体育出版社の余功保編著『中国太極拳辞典』の、「三尖相対」の項目をたまたま見ていたら、 太极拳练习基本要领。指在练拳中鼻尖,膝尖,足尖上下在一条直线上 と出ていた。 出典が記されていないので、この説明がどこからきているのかわからないけれど、…

国家武術套路集訓隊

今年のCCTV「春節聨歓晩会」の武術関連のプログラムは、先日、設立が発表されたばかりの「国家武術套路集訓隊」メンバーによる演武だった。 www.youtube.com 幹部を含む、「集訓隊」のメンバーは以下のとおり。 このメンバーの中から、9月の世界武術選手権…

武當派武術の標準化

武當派武術の標準化套路編纂が進行中、という記事が流れてきた。 www.10yan.com 記事によると、プロジェクトは、湖北省武當山旅游経済特区の十大重点工程の一つとして2015年12月に専門のプロジェクトチームが組織され、武當拳、武當太乙拳、武當剣の標準化套…

過去メモのフォローアップ数件

いくつかフォローアップ系の小ネタ。 1.竇奉三・馬歩周『国術概論』 馬礼堂(馬歩周)が「志然」名義で書いたような過激な議論が展開されているのかと思って読んでみたら、中身は至極まっとうに国術の価値や功能を論じたものだった。 若干、意表を突かれた気…

新編武舞「蝶恋花」

楊祥全・楊向東編著『中華人民協和国武術史』の文化大革命の頃の武術の箇所を読んでいて、「「様板武術」の創編活動」のところで紹介されている「蝶恋花」という武舞について、動画がないかと思って検索してみたら、いくつかの動画がヒットした。 〇楊祥全・…

「中国蟷螂拳発源地」

全球功夫網の、陝西省淳化県の官荘中学で蟷螂拳が全面的に取り入れられることになったという記事を読んでいたら、「中国蟷螂拳発源地」という文字がでてきたので、どういうことなのかと思ったら、淳化県では、蟷螂拳の創始者といわれている王郎(王文成)は…