中国武術雑記帳 by zigzagmax

当世中国武術事情、中国武術史、体育史やその周辺に関する極私的備忘録・妄想と頭の体操 。頭の体操なので、たまたま立ち寄られた方は決して鵜呑みにしないこと(これ、肝要)※2015年2月、はてなダイアリーより移行

現代中国武術事情

2016年全国武術協会主席秘書長会議など

旧正月に伴う大型連休は、国内の活動がストップするせいだろうか、今年も中国以外での諸外国における武術を報道する記事が目立った。 ◎レバノン 現地で十年以上武術を教えている陳朝陽についての報道。陳朝陽は滄州出身で、劉述来(武林百傑)の教え子と紹介…

世俗の誘惑?

先日NHKで放送された、「嵩山少林寺×武井壮」は、「心の修練」としての「少林功夫」に迫ろうとした好番組だったと思う。特に、少林寺訪問に先立って訪れた武術学校(ジャージの背中に書かれた文字から「塔溝武術学校」だと思う)に学ぶ生徒たちの、純粋さ…

霍元甲、同盟会、「東亜病夫」など

1月18日は霍元甲の誕生日だったようで、その前後に霍元甲についてとりあげたサイトも少なくなかった。 その関連でいろいろ見ていたときにyoutubeで見つけたCCTVの人気番組「百家講談」で霍元甲をテーマに語られた回(2015年5月の放送)の動画が興味深かった…

ニューヨーク公立図書館のデジタル資料

ニューヨーク公立図書館のデジタル資料が公開されたというニュースが流れてきた。 getnews.jp このブログの観点から、中国武術関係の資料がないものか、試しに覗いてみたら、けっこういろんなものがヒットした。 まず目を引いたのは、このポストカード。上海…

温州武術博物館など

浙江省温州に2016年2月、武術博物館が開館するという記事。 www.wz.zj.cn 温州と武術の関係がすぐにピンとこなかったので調べてみると、以下の記事に次のような記述があり、歴代の武挙の人材を輩出していることがわかる。 从现存历史资料看,温州武术的全面…

国家武術研究院2015専門家会議など

年末年始に、中央及び各地でいくつかの年間活動総括・表彰が行なわれている。具体的な個人名などは、いろいろ調べてゆくヒントになるので、目についたものをメモ。 1.国家武術研究院の専門家会議 politics.sports.cn このニュースをみて、武術研究院の院長が…

林伯原『中国武術史 ― 先史時代から十九世紀中期まで ―』

通常、できるだけ第三者的な視点で、(ときどきビビりながら)敬称も略する形でかいているこの備忘録、今回も同じような調子で書きはじめたのだけれど、どうしても個人的な思いと切り離しては書けないので、少し書き方を替えてみた。2016年第1弾、恩師への敬…

蔡龍雲「我対武術的看法」

12月19日、「神拳大龍」蔡龍雲が逝去したというニュースが流れてきた。享年87歳。謹んでご冥福をお祈りする。 ご葬儀は12月24日行なわれた。 news.twoeggz.com ロシア人マスロフ、アメリカ人ボクサー「黒獅子」ルサールを倒して「神拳大龍」と呼ばれたことは…

民俗芸能としての中国武術

この対談にとても触発された。 www.cinra.net 近年、中国武術の世界では、国家や地方行政レベル、さらにはユネスコに無形文化遺産(非物質文化遺産)として承認されることを良しとする傾向があり、地方の武術の状況がわかりやすいので、このブログでもときど…

北京武協武術理論文史研究会

全球功夫網の以下の記事で、北京に「北京武術理論文史研究会」というのがあるのを知った。公式ウェブサイトの紹介によると北京市武術運動協会の審査批准を経て1996年に設立されたらしい。ウェブサイトの「文章中心」には八篇の文章しか載っておらず詳しい研…

各地の人気拳師投票活動

1. 煙台で去る11月に地元の十大拳師を選出したというニュース。 www.shm.com.cn 十大拳師は、原楽志(呉式太極拳)、楊応健(陳式太極拳)、孫玉永(尹派宫式八卦掌)、侯利民(陳式太極拳)、周振東(太極蟷螂拳)、劉紅玉(摔跤?テコンドー?)、楊応業(…

インタビュー数件

トップランナーたち・・・、とっていいのかどうかわからないけれど、最近目に付いたインタビューや個人に取材した記事と周辺情報。 1.馬文国(西安体育学院武術系主任) 「拳種」の形式をとって発展してきた中国の武術の中には、単純な勝負と技法には納まりきら…

上海精武学堂

上海で9月末に、精武体育会が上海精武学堂、精武中医館、精武青少年習武中心、といったプロジェクトをスタートさせたという記事(最後にコピペ)。 そのうち精武学堂は、「大専」の学位も取得できる、社会人向けの「社会管理(健康管理)」のコースらしい。 …

第11回アフリカ競技会 The 11th All-African games

コンゴのブラザヴィルで行われたアフリカ競技会の開幕式で武術のパフォーマンスがあったらしく、YouTubeで動画が公開されていた。 アフリカの人々が中国の民族衣装を着て演武している姿は、なんだかまだしっくりこないけれど、柔道や空手が世界に普及しはじ…

武術の精神?

インターネットでたまたま前後して見かけた二つの記事に触発されてメモ。 一つは、日本武道に造詣の深いアレクサンダー・ベネット氏の講演を文字にしたもの(動画もあったので、動画のほうのリンクを下の方にコピペ)。もう一つは、『全球功夫網』に掲載され…

大学受験と武術

古いニュースになってしまったけれど、湖南省で、大学受験(高考)において、体育の競技成績に応じた加点をやめると発表したところ、省内の武術大会の参加者が半減したという記事。それでも、競技自体のレベルは下がることはなかったらしい。 武術は、競技種…

伝統武術のアーカイブ化プロジェクト

1. 香港では、香港城市大学と中華国術総会が、3Dモーションキャプチャーを利用した香港の伝統武術のアーカイブ化のプロジェクトを進めているらしい。 サウスチャイナモーニングポストの記事によると、2013年以来、19流派・40人の師範の協力を得つつ、120の…

仏山市の武術事情2

仏山市といえば黄飛鴻ゆかりの地としても有名だけれど、世界各地の黄飛鴻の弟子などによる武館は100家を数えるという。ただし、おひざもとの状況は必ずしも楽観的ではない模様(注1)。 以下の記事によると、全市の武術館は370家(うち100あまりは市の武術協…

朱鶴亭 中国民間武術家連合会 中泰対抗戦など

広州で7月に散打とムエタイの対抗戦が行なわれるようで、広州市で記者発表が行なわれ、この会見に民間武術家を代表して香港の著名な気功家の朱鶴亭氏が訪れてエールを送った、という新浪の記事(最後に全文をコピペ)。 朱鶴亭氏については、買ってないけど…

「一校一拳」 武術進校園3

最近、教育部が、重点的に支援する七つのスポーツ種目・七大学校体育種目をリスアップし、そのなかの二番目に武術がとりあげられた、というような話があり、各種の武術団体が一斉に色めき立っているように見える。たとえばこの記事(リンク)。 調べてみると…

嵩山少林寺の海外進出

嵩山少林寺がオーストラリアに寺院を建設するという、ウォールストリートジャーナル日本語版の記事。記事は「少林寺が中国以外に進出するのは初めて」だというけれど、ドイツには2001年7月に徳国少林文化中心が作られていて、嵩山少林寺のウェブサイトでは、…

官方武術関係情報のアップデート

しばらく官方武術界(注)のニュースをチェックしていなかったので久しぶりに武術運動管理中心・中国武術協会・武術研究院の公式ウェブサイトを覗いてみた。いくつか、気になったニュースをメモ。リンクが多くなったので、記事全文はコピペせず、エバーノー…

蘭州通備武学発展研究会総括大会

中国は基本的に旧暦なので、西暦の元旦はあまり派手なお祝いをしないけれど、1月1日に掲題の会合が開かれたらしい。 甘粛網と全球功夫網に関連の報道が見える(最後にコピペ)。甘粛網の記事では、2010年から2014年の活動がわりと具体的に述べられており、…

周偉良「評武術段位制」ほか1篇(続)

前回のメモの続き。周教授の二つめの文章。 评高小军先生首届全国武术科学大会讲话中的“武术科技”观 ——兼论武术科研学风 杭州师范大学体育学院 周伟良在今年8月7日天津第一届全国武术科学大会的首场大会主报告上,国家体育总局武术研究院院长高小军先生在一…

周偉良「評武術段位制」ほか1篇

最近、武術網に杭州師範大学体育学院の周偉良教授の文章が2編掲載された。一編は、段位制に物申す、といった内容の「評武術段位制」、もう一編は、高小軍(ここでは武術研究院院長という肩書きだけれど、いうまでもなく国家体育運動総局武術運動管理中心の主…

首届世界太極拳錦標賽

四川省成都市の都江堰市(県級市)で開催された太極拳の大会(世界太極拳錦標賽)、ちゃんと注意していなかったけれど、武術運動管理中心か地方政府主催の催事かと思っていたら、国際武術連盟の主催の競技会だったらしい。報道では、世界最高レベルの太極拳…

大連武術文化博物館

以前に巨大プロジェクトとしてメモしていた、大連武術文化博物館が完成したらしい。投資総額は、当初は6,000万元と報道されていたけれど、今回のニュースでは1.06億元となっている。社会に無料で開放、ということなので、いつか機会があったら行ってみたい。…

趙長軍が振り返る武術人生

全球功夫網に、80年代の競技武術界のスーパースター、趙長軍がその半生を振り返る聞き書きが掲載されたのでメモ。趙長軍は現在米国在住で、昨年亡くなった馬振邦の1周忌で西安に戻ってきたときに取材を受けたようだ。彼自身が語るところによると、陝西省武術…

伝統武術遺産の法的保護

2014年10月18日の光明日報に、「我が国の伝統武術遺産の法律保護」と題する文章が掲載されたのでとりあえずメモ。作者は河南理工大学地域武術文化研究中心の呂雲龍氏で、2013年度の国家社会科学基金で認定されている研究プロジェクト「中国武術百年転型歴程…

中国武術における「営業の個人化」と「標準化」

かなり畑違いではあるけれど、ハフィントンポストの「マーケティングの目的は、販売を不要にすること」という記事を読んで、中国武術界とよく似たところがあると思ったので、頭の体操のつもりでメモ。「営業の個人化」が進行し、流派・門派があまりにも細分…