中国武術雑記帳 by zigzagmax

当世中国武術事情、中国武術史、体育史やその周辺に関する極私的備忘録・妄想と頭の体操 。頭の体操なので、たまたま立ち寄られた方は決して鵜呑みにしないこと(これ、肝要)※2015年2月、はてなダイアリーより移行

2016-01-01から1年間の記事一覧

新田一郎『相撲の歴史』

ずっと気になっていたこの本、読んでみたら期待以上に面白かった。 相撲の歴史 作者: 新田一郎 出版社/メーカー: 山川出版社 発売日: 1994/07 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (2件) を見る 全体のながれは、序章の以下の部分でも示されている。 ・・・…

河南省の非物質文化遺産

省レベルの非物質文化遺産のなかで、まだチェックしていなかった「武術大省」河南省の状況を確認していたら、「武術河南」というサイトが立ちあがっているのを見つけた。 ◎武术河南 ※トップページのタイトルの脇には「試運行」の文字も。 国と省レベルの非物…

少林寺と日本僧 佐藤秀孝「入元僧古源邵元の軌跡」など

天津の北少林寺(盤山北少林寺)についてメモした中で、元代の少林寺の中興の祖といわれる雪庭福裕の名前がでてきた。それで、同じ元代に日本から留学して諸寺を遍歴し、嵩山少林寺の首座も務めた古源邵元についての駒澤大学・佐藤秀孝教授の論文(注1)が…

「シンクロナイズド太極拳」?

SNSで、麗江で行われた競技の「双人南拳」という競技の動画が流れてきた。これが個人的には衝撃的だったので、調べてみたら双人競技は、南拳のほかに、太極拳もあり、youtubeなどには、2014年の競技の動画も出ている。 ◎2014年の全国武術套路錦標賽における…

西の少林寺、北の少林寺

重慶市江津区中山古鎮の双峰寺を改装する形で2012年ごろから計画が進められていた「西部少林寺」は、2015年の秋に完成、今年の2月になって対外開放していたらしい。小さな旗がたくさん飾られていたりして、寺院というより、テーマパークのようだ。仕事で重慶…

地方武術協会の動き

いくつかの地方の武術協会、武術運動管理中心などの動きについて気になった記事をメモ。 1.湖南 湖南省については、これまでも段位制の普及例などが報道されていて、この地域をモデル地域にしようというような政策的な意図が感じられる。3月に湖南省を訪れた…

「引進落空」など

王宗岳の打手歌に「引進落空合即出」と出てくることもあり、「引進落空」という言葉は太極拳をやる人の間ではかなり知られているように思われる。「引進落空」は、人民体育出版社の『中国太極拳辞典』でも、太極拳に特色のある技法として紹介されている。(…

80年代の大陸発功夫女明星

孫建明主演『峡江疑影(邦題:三峡必殺拳)』を久しぶりに見て、孫建明演じる林傑に命を救われて好意を抱く小翠役を演じていた王秀萍が気になったので調べてみたら、この人も北京武術チームの出身だった。 王秀萍は、これまた北京武術チーム出身で、『三峡必…

陳舜臣『新装版 阿片戦争』

長編だし、小難しい感じがして敬遠していたこの小説、活字が大きくて読みやすそうな「新版」が地元の図書館に入っているのを見つけたので、読んでみた。 アヘン戦争前後の複雑な過程が、清朝側は満人官僚と漢人官僚、中華意識の強い鎖国派と経済的利益を考え…

官方武術関係情報のアップデート 2016.3

いくつか気になった情報があった。どれも比較的小ネタなので、まとめてメモ。 1.第2届全国武術運動大会 2012年あたりの武術運動管理中心の年度計画の中に構想が示され、難産のすえに2014年にようやく第1回が開催された印象のある全国武術運動大会。2016年は…

徽商と武術

合肥晩報の記事を鳳凰網安徽が転載した「明清時期的徽州為何盛行少林武術」という記事が面白かったのでメモ。 最近、『清代鏢局与山西武術』(李金龍、劉映海著)などをもとに、山西商人(晋商)と武術の関係について少し調べてみたのだけれど、高校の世界史…

陳白塵撰述・佐藤公彦訳『黒旗軍 十九世紀中国の農民戦争』

以前から気になっていた掲題の本の、図書館除籍本がアマゾンで安く売られていたので購入してみた。 黒旗軍―19世紀中国の農民戦争 (研文選書) 作者: 陳白塵,佐藤公彦 出版社/メーカー: 研文出版 発売日: 1987/10 メディア: 単行本 クリック: 4回 この商品を含…

2016年全国武術協会主席秘書長会議など

旧正月に伴う大型連休は、国内の活動がストップするせいだろうか、今年も中国以外での諸外国における武術を報道する記事が目立った。 ◎レバノン 現地で十年以上武術を教えている陳朝陽についての報道。陳朝陽は滄州出身で、劉述来(武林百傑)の教え子と紹介…

「勢法」について

少し前に、SNS経由で茅元儀の朝鮮勢法とヨーロッパの剣術を対比させたブログが流れてきた。ヨーロッパの剣は柄(crossguard)が大きく張り出している点が中国の剣と異なり、当然ながら技法も異なるだろうということで、技術的な影響関係云々がいいたいわけで…

世俗の誘惑?

先日NHKで放送された、「嵩山少林寺×武井壮」は、「心の修練」としての「少林功夫」に迫ろうとした好番組だったと思う。特に、少林寺訪問に先立って訪れた武術学校(ジャージの背中に書かれた文字から「塔溝武術学校」だと思う)に学ぶ生徒たちの、純粋さ…

『黒帯ドラゴン(Black Belt Jones)』など

2015年の秋、掲題の作品が、長らくDVD化されていない幻の作品というふれこみでケーブルテレビで放送されたので観てみた。主演は『燃えよドラゴン』でアフロ空手家を演じたジム・ケリー、監督も『燃えドラ』と同じロバート・クローズ。『燃えドラ』(しつ…

霍元甲、同盟会、「東亜病夫」など

1月18日は霍元甲の誕生日だったようで、その前後に霍元甲についてとりあげたサイトも少なくなかった。 その関連でいろいろ見ていたときにyoutubeで見つけたCCTVの人気番組「百家講談」で霍元甲をテーマに語られた回(2015年5月の放送)の動画が興味深かった…

ニューヨーク公立図書館のデジタル資料

ニューヨーク公立図書館のデジタル資料が公開されたというニュースが流れてきた。 getnews.jp このブログの観点から、中国武術関係の資料がないものか、試しに覗いてみたら、けっこういろんなものがヒットした。 まず目を引いたのは、このポストカード。上海…

温州武術博物館など

浙江省温州に2016年2月、武術博物館が開館するという記事。 www.wz.zj.cn 温州と武術の関係がすぐにピンとこなかったので調べてみると、以下の記事に次のような記述があり、歴代の武挙の人材を輩出していることがわかる。 从现存历史资料看,温州武术的全面…

国家武術研究院2015専門家会議など

年末年始に、中央及び各地でいくつかの年間活動総括・表彰が行なわれている。具体的な個人名などは、いろいろ調べてゆくヒントになるので、目についたものをメモ。 1.国家武術研究院の専門家会議 politics.sports.cn このニュースをみて、武術研究院の院長が…

林伯原『中国武術史 ― 先史時代から十九世紀中期まで ―』

通常、できるだけ第三者的な視点で、(ときどきビビりながら)敬称も略する形でかいているこの備忘録、今回も同じような調子で書きはじめたのだけれど、どうしても個人的な思いと切り離しては書けないので、少し書き方を替えてみた。2016年第1弾、恩師への敬…