西の少林寺、北の少林寺
重慶市江津区中山古鎮の双峰寺を改装する形で2012年ごろから計画が進められていた「西部少林寺」は、2015年の秋に完成、今年の2月になって対外開放していたらしい。小さな旗がたくさん飾られていたりして、寺院というより、テーマパークのようだ。仕事で重慶にいた頃、中山古鎮には行ったことがあるけど、重慶の中心から車で2時間くらいかかった気がする。
当地では、嵩山少林寺、福建の泉州少林寺、天津少林寺に次ぐ国内4番目の少林禅宗寺院と宣伝している(注1)。ただし、伝わってくる限りでは、西少林寺は泉州少林寺から僧侶が来ているようだけれど、嵩山少林寺との繋がりは確認できない。
そもそも、嵩山少林寺と泉州少林寺の関係もよくわからない(注2)。
記事に写っている写真では、僧侶が一般人らしい格好の人と太極拳をやっているように見えるものも。もう少林武術じゃなくても、なんでもいいのかな。
◎以前のメモ
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他方、天津の北少林寺(盤山北少林寺)は、嵩山少林寺との関係は明確で、2009年には釈永信の支持のもと、改修計画が発表されている(注3)。
盤山北少林寺に伝わる武術は、2015年2月に天津市の非物質文化遺産に登録された(以前のメモ)。盤山北少林寺の歴史と武術の武術については、以下にリンクを貼ったいくつかの記事が参考になるほか、楊祥全『津門武術』でも詳しく紹介されているけれど、北少林寺で少林武術を学んだ満州正藍八旗の商仕芝の武術が今に伝えられているらしい。商仕芝はのちに嵩山少林寺でも修行したと伝えられている。
ちなみに、商仕芝の故事は『薊県志』に紹介されていて、そこに紹介されている、井戸の水面をめがけて拳を打ち、水面を振動させる功法は金振東の『盤山叢書 盤山志異』では少林絶技の一つで、「井泉功」、またの名を「百歩神拳」と紹介されていることが、百度百科の商仕芝の項に出ている。
据《重修蓟县志》载:“授徒于城内财神庙,时以拳向井口下击,井水沸腾,示其徒以行功运气之法。”此功法系少林绝技之一,软功内壮。俗称“井泉功”,又称“百步神拳”。
ちなみに、百度百科のこのページの執筆協力者のなかに、上記の楊祥全の名前が出ていて、『津門武術』の内容とも重なるところが多い。このページの紹介では、商仕芝が通臂拳のことを通備拳と読んでいると解説されているところも注目される(『通備拳譜』)。通備ということばは、まったく違う文脈の中では、顔元(習斎)の思想に基づくと説明されているけれど、ここでは商仕芝がなぜ通備という語を選んだのかは、説明がされておらず、詳細は不明。『津門武術』のほうにも、その点の説明はなかった。ただ、なんとなく気になるので、頭の片隅に留めておきたい。
◎以下は、北少林寺及び商氏の武術に関する関連情報ページ。動画は今のところ未確認。
・雑誌『博撃』に紹介されたという、『薊県志』における商仕芝の伝記
・中華商氏網の記事
・嵩山少林寺の公式ウェブサイトの記事
・その他
(注1)天津をすっとばして、三大少林禅宗寺院、としている記事も。
(注2)
釈永信方丈が、嵩山少林寺の文書には南少林寺について言及したものはないとコメントし、それに対して泉州少林寺が反論したという報道(具体的にはこれ)については、以前もメモした。また、嵩山の徳禅和尚は、(泉州ではなく)莆田少林寺が新たに出てきた際、「南少林寺就在福建莆田九蓮山下」の題字を揮毫してこれにお墨付きつきを与えている。
(注3)
ただし、計画のその後の進展についてはよくわからない。2016年3月30日付の以下の記事でも、計画について特に新しい情報はない。