中国武術雑記帳 by zigzagmax

当世中国武術事情、中国武術史、体育史やその周辺に関する極私的備忘録・妄想と頭の体操 。頭の体操なので、たまたま立ち寄られた方は決して鵜呑みにしないこと(これ、肝要)※2015年2月、はてなダイアリーより移行

孫徳朝、趙明、康意「 峨眉武术研究三十年」

 前回、過去100年の少林武術研究を振り返る論文についてメモしたあと、ちょうどよいタイミングで、内江師範学院の学報に載った峨眉派武術についての研究状況を振り返る論文を見つけたのでメモ。

 

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取り扱われている期間は30年(1986年から2016年)ということで、80年代の発掘整理以降の研究動向の整理と位置づけられるのだろう。Cite SpaceⅢというソフトウェアを使って、CNKI(China National Knowledge Infrastructure)データベースからの解析がなされている。このソフトのことや、こういった研究手法そのものについては、よくわからないけれど、データベース内にある論文の「キーワード」をもとに、さまざまな分析をして、どのようなテーマで研究が行なわれているか、全体的な傾向を可視化するものらしい。

30年間で対象となった論文は104本、そのうち1986年から2006年までの20年の間の論文はわずかに10本で、ほとんどは最近10年のもの。

この論文によると、30年来の峨眉武術研究は(1)峨眉武術の起源と変化(峨眉武术
的起源、衍生)、(2)峨眉武術とその文化(峨眉武术及其文化)、(3)峨眉武術の継承・保護(眉武术传承、保护、转换性生成) に分けられるという。

 

通过梳理和分析,本研究认为,三十年来峨眉武术研究历程可分为三个阶段:第一阶段为峨眉武术的起源、衍生,研究特点为运用历史文献描述性梳理峨眉武术地域文化符号;第二阶段为峨眉武术及其文化,力求强化表达峨眉武术地域文化符号特质,但学科采借性不强,研究水平参差不齐;第三阶段为峨眉武术传承、保护、转换性生成,研究整体性和系统性不强,缺乏田野考察的数据和传承人深度访谈的口述史和文献观念史记载.

 

以下、前回の例にならって、それぞれの部分について興味深いと思った点をメモ。

(1)では、峨眉武術の「白猿起源説」が批判的に検討され(疑問を呈しているのは程大力、王小兵など)、峨眉武術は明代に成立したが清初には失伝し、いまに伝わる峨眉武術は各種の武術が混じりあって形成されたとする説、また歴史的に峨眉武術の範疇に巴渝武術(重慶地区の武術ということか)は含まれるのか、といった議論が紹介されている。

程大力、王小兵等认为:峨眉武术源于白猿祖师说法缺乏史实记载和依
据,不支持此种观点.通过研究,他们认为峨眉武术自明朝形成体系,和少林武术有着密切的联系.王小兵在后续研究中进一步佐证峨眉武术并非起源于“白猿祖师”,同时提出明清之际的峨眉武术并非是一脉相承的连续发展,而是明代已成体系的峨眉武术在清初却已失传,今人所称的峨眉武术是后来许多拳种的混杂体.陈振勇认为,少林拳巴蜀武术有着深厚的历史渊源,通过史料和事实论证了少林武术在峨眉武术形成与发展的过程中具有一定影响和作用

 

关于峨眉武术衍生与起源的研究,目前学界仍有争议,学者们的观点莫衷一是,多种起源说缺乏历史依据,经不起推敲.总的来讲,峨眉武术起源的研究是对峨眉武术追本溯源,也是人们认识峨眉武术这一传统身体活动式样的过程.在这一阶段的研究中,多为历史古典文献的梳理性和描述性研究,研究方法较为单一,缺乏田野考察和口述史研究.

 

嵩山少林寺の公式ウェブサイトにある陳振勇「少林拳巴蜀武术源流考」

少林拳与巴蜀武术源流考(陈振勇) - Shaolin

 

(2)では「古代峨眉武術・近代峨眉武術・現代峨眉武術」の三段階論や、個別研究例として、鄭志兵の峨眉道人拳歌についての研究、韓民勝の毒蛇吐信拳、呉保占の峨眉盤破門武術についての研究などがあることが紹介される。

ただし、筆者は、本来もっとも充実しているべきこの部分の研究はあまり充実しておらず、水準もまちまちであると指摘する。

 

峨眉武术的第二阶段研究是峨眉武术研究的脊梁与架构,通过梳理和分析发现第二阶段的研究中学科采借性不强,研究水平参差不齐.在峨眉武术研究的整个历程中,本阶段的研究理应最为丰富、系统,从而为后续研究打下坚实的基础.然而,第二阶段的研究倍显中空.

 

峨眉武術文化普及基地の公式ウェブサイト

峨眉武术文化普及基地

 

(3)では、今後の研究や伝承維持のための課題などが示される。

フィールドワークや口述筆記などの方法を用いたり、その他の武術文化(少林武術や太極拳を指すのか?)との比較の視点も必要であると述べられる。

この論文もその一部だけれど、(2)の部分で紹介されている、内江師範学院の四川省峨眉武術文化普及基地などが中心になってさらに研究が進むことを期待したい。

.目前,关于峨眉武术传承与保护、发展以及推广的研究数量较多,研究多为从宏观上去探讨峨眉武术的保护、转换性生成的相关性,但缺乏田野考察、对传承人口述史、文献观念史的数据和材料支撑;研究缺乏系统性和延续性,对峨眉武术和峨眉武术文化符号意涵和理解不够深刻,难以准确把控峨眉武术发展方向.

 

文章とは関係ないけれど、峨眉派関連の動画

〇呉信良の特集

www.youtube.com

〇「走遍中国」の峨眉派の回

 

www.youtube.com