一貫道、薛顛、孫錫堃など
徐浩峰(徐皓峰)が形意拳家の李仲軒の口述をまとめ、一時話題になった『逝去的武林』でも紹介されていた薛顛は、以下の記事によると、中華人民共和国の建国初期に一貫道が取り締まられるなかで「拳覇」として指名手配され、つかまって銃殺されたのだという。
薛顛は不幸にして処刑されたけれど、建国初期の、中国共産党による一貫道取り締まりの中で、多くの信徒は香港に逃れたらしく、そのときに香港に逃れた武術関係者には八卦掌の孫錫堃がいる(のち、台湾に移住)。
以下は、いくつか孫錫堃について参考になったページのリンク。
◎孫錫堃の著書、『八卦掌真伝』の書評
该书出版于程有龙(1872-1928)去世六年后,它为世人展示并记录下1930年前后,程式八卦掌的技术体系与整体风貌。对于今人学习、了解、研究程氏八卦掌的发展演化,提供了内容详实的文献史料。
◎本のタイトルとしては『八卦掌真伝』ではなく『八卦拳真伝』が正しいはずだけど・・・
◎書名が「八卦拳」で「八卦掌」でない理由について紹介したページ
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ウィキペディアによると王樹金も一貫道の幹部であったらしいけれど、台湾に移ったのは共産党の南京制圧が間際に迫った1949年のことらしい。
その他、李麗久(と褚民誼)については以前に少しメモした。
◎以前のメモ
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一貫道そのものについてきちんと調べていないので、そもそも一貫道がなぜ中国共産党の眼の仇にされたのか、自分のなかでまだよくわかっていない。上にリンクをはった『八卦拳真伝』の書評では、日本軍に利用されたため、と書かれているけれど、日本軍は一貫道を国民党のスパイだと思っていたり、国民党の方でも、逆のことを疑ったりしていたらしい(後述の篠原教授の論文)。
詳しいことはこのブログの範囲を超えるので、参考情報として、とりあえず『結社の世界史2 結社が描く中国近現代』の第1章で一貫道を含む宗教結社や、無生老母信仰について取り上げられていることと、駒澤大学の篠原壽雄の論文をメモしておく。
篠原教授の論文のはじめの方にある、
・歴史をそれほど重視せず、口伝により教義を教え、誤謬が多いこと、
・分派が多く、どの分派にもそれぞれの言い分があるが、互いに矛盾するところがあり、容易に実証しにくいこと、
・部外者が容易に中に踏み入れず、表面的に描写することしかできないこと
といった組織の性格は、民間武術の団体についても共通しているように思われる。
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ぜんぜん関係ないけれど、トニー・ジャーの出世作『マッハ!』は中国語では『拳覇』、ジージャ・ヤーニンの『チョコレート・ファイター』は『女拳覇』になるらしい。
◎youtubeで見つけた薛顛象形術の動画。これは象と獅子である由。
◎薛顛の子・薛志義による象形術