スターリング・シーグレーブ『宋家王朝 中国の富と権力を支配した一族の物語』
別の本を探しにいった図書館でたまたま手に取り、開いたページに、孫文は「・・・「新芸」と呼ばれる武術をマスターし、また秘密結社「三合会」の支部にも参加した」(P.115)と出ていたのが気になって、借りて読んでみた。
カバーの写真が宋家の三姉妹の写真なので、映画『宋家の三姉妹』みたいなお話かと思っていたのだけれど、上巻の前半は、三姉妹の父であるチャーリー宋が海南島からアメリカに渡り、宣教師になるべく教育を受けて上海に戻り、海南島の貿易従事者の上海におけるネットワーク(潮州幇)や、アメリカ以来のパトロンの支援も得ながら実業家としての才覚を発揮し、同じく華南系の結社である三合会を背景に持つ孫文を支えて清朝打倒を支えてゆくところが語られる。(宋は潮州幇のほか、紅幇にも属している。)上巻の後半から、青幇を背景に、蒋介石が台頭してくる。
冒頭の、「新芸」についての記載はその後は出てこないのだけれど、アメリカ本土に渡った孫文が中国人社会での支持を広げるために、広東を背景とし、「当時アメリカでは最も活動的な結社であった」、致公堂のアメリカ支部に接近した際、「彼は武術を身につけていたので、組織内では洪棍(元帥)という高い地位を与えられた」(P.132)と書かれている。
このあたり、この本ではそれ以上深く知ることはできず、インターネットで少し調べた範囲では、「新芸」とは何なのかも確認できなかった。そういう意味では、残念ではあったものの、辛亥革命と結社の繋がりについて、とても興味深くて参考になった。
その他、孫文のボディガードとしては羅漢神打の劉百川が有名だけれど、広東の孫文の大元帥府では元プロボクサーのモーリス・コーエンという人物がボディガードをしていたらしく、未見だけれど、モーリス・コーエンについて書かれた『孫文を守ったユダヤ人―モーリス・コーエンの生涯』があるようだ。ちょっと頭の片隅に置いておこう。
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