青面金剛、大魔神、緊那羅など
youtubeの動画で映画「大魔神」シリーズのクライマックスシーンをたまたま見ていて、大魔神の顔が青だったり緑であることに気がついた。倭寇と闘った少林僧が、その信仰から、顔を青く塗っていたということを思い出して、何かのヒントになるかもしれないと大魔神の顔の色の由来を調べてみると、大魔神は庚申信仰における青面金剛というのがモデルらしい。
インターネットで得られる情報では、青面金剛そのものは「中国の道教思想に由来し、日本の民間信仰である庚申信仰の中で独自に発展した尊像」などと説明されていて、日本につたわってからの独自性を強調されているものが多い。
他方、大畠洋一氏の説によると、青面金剛のオリジンはヒンドゥー教のシヴァを制圧し、その姿にならって作られた「仏教の最強神(大将軍)」であるマハーカーラであり、そのマハーカーラ(初期マハーカーラ)がさまざまな過程を経て青面金剛のモデルになったのだという。
大畠氏によると、中国や日本では、マハーカーラは明王に発展したため、次第にその本来の役割が忘れられたけれど、チベットやモンゴルではマハ―カーラのまま信仰されたという。そのマハ―カーラは、元代にラマ教とともに武神として再び中国に入ってきて、武神として信仰されたことは以前にメモした(日比野丈夫, 小野勝年『五台山』)。
■以前のメモ。もう3年半も経ってしまったんだと改めて驚き。
時代は少し下るけれど、阿徳は少林寺には、明代にラマ教の影響を受けたと思われる文物が残っているとしつつ、その例として緊那羅王像についても触れている(阿徳「明代喇嘛教与少林寺」『少林学論文選』所収)。
だとすると、同じマハーカーラのうち、早い時期に中国・日本に伝わった信仰の一部が青面金剛を経て「大魔神」になり、チベット・モンゴルを経て元代に中国につたわったものの一部(青い顔の武神であることなど)が緊那羅信仰の形成に影響を与えているともいえそうな気がしてきた。
少林武術というのはもともと一つの流派ではなく、さまざまな人の往来とともに少林寺に集積された武芸が集大成されたものではないかという見方もあるけれど、当時の最先端の武芸が少林寺に集まったのであれば、それらの武芸と結びついた信仰も集積され、さまざまな武神が合成され集大成されたものが最終的に緊那羅信仰という形態をとったということも考えられなくはないと思う。
まあ、正確なところはわからないし、あんまり本気になって調べる余裕も能力もないけれど、『大魔神』と緊那羅王の意外な接点が感じられたところでよしとしておこう。
久しぶりにいい意味で突拍子もない頭の体操ができた気がする(苦笑)
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マハーカーラのイメージは、六臂とか八臂で闘うところや、3頭9眼だから一つの顔に三つの目があるところなど、毘沙門天の第三皇子である哪吒太子とも共通点があるようにも見える。
■ドラマ「少林僧兵」(本編は未見)の予告編。
24秒目に、顔を緑色に塗った僧兵がでてくる。
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