中国武術発展五年計画(2016-2020年)
国家体育総局のウェブサイトに、「中国武術発展五年計画(2016-2020年)」の発表に関する記事が掲載された。
この電子メモ帳は2011年にはじめていて、武術運動管理中心の年度計画については過去にも何度かメモしたこともあるけれど、こういう複数年にわたる計画というのは見たことがなかった。
こうした中長期的な計画の発表自体、この五ヵ年計画の中にある広報強化(項目としては、三十六項目中の三十五)の一環かもしれない。
全文は「指導思想」、「基本原則」を含む36項目から成り、内容は以下のページで確認できる。
以下は気になったことについてのメモ(カッコ内の数字は、関連する項目)。
オリンピックの競技種目化推進は引き続き目標として掲げられている(十六)。
在外公館や孔子学院を通じて武術の普及を行なうことは以前からも国際普及の手段として掲げられていたけれど、孔子学院の50%以上で武術を取り入れることを目指すといった数値目標が掲げられているのが興味深い(三、一五)。
数値目標としては、ほかにも、体育従事者の10%が武術をやるようになること、青少年の武術人口の年率10%増加を目指すといった目標(三)が掲げられている。これらの数字の根拠や実現可能性についてはよくわからない。
武術協会の個人会員数100万人を目指すという数字(三十三)もいちおうメモしておく。
なお、以前に高小軍は、中国国内で武術を行なっている人々は約7000万人という数字を出していたはず。
これ以前にも似たような中期計画があったのかどうかは未確認だけれど、たぶんあったのだろう。たとえば研究機構としての武術研究院の実体化(二十五)など、たまたま見たものだけでも、2009年に雑誌『中華武術』で特集を組んで問題提起されていた。この部分など、もしかしたら前回の5ヵ年計画(2011-2015)からそのまま引き継がれているのかもしれない。
伝統武術の継承については、十七~二十あたりに見える。抽象的なお題目が中心であまり具体的なイメージがわかないけれど、「講武学堂」なる普及サービス機構の構築が構想されているようなのと(十八)、プロ化による継承の可能性を検討するといった趣旨のことが書かれている(二十)。民間拳師もプロとして食べてゆけるようにしてあげようということだろうか。他方で、教練員の資格認証制度というものについて書かれていて(九)、標準化になじまないような伝承内容はいろいろな面で影響を受けて行くと考えられる。このあたりの具体的なプランを知りたいところ。
段位制に関する拠点の構築とあわせて、「体育伝統項目学校」の設立という構想も見える(二十四)。
医療機関と武術を結びつけた例として「太極拳健康工程」なるものが挙げられているので(四)、これもメモしておく。