中国武術雑記帳 by zigzagmax

当世中国武術事情、中国武術史、体育史やその周辺に関する極私的備忘録・妄想と頭の体操 ※2015年2月、はてなダイアリーより移行

武田熙「支那郷村建設運動の実際」 郷村建設と武術2

 調べたいことがあって地元の図書館で国会図書館の資料を見ていて、時間があまったので、なんとなく「武田熙」というキーワードを入れてみたら、いくつか見たことのない資料がヒットした。
 なかでも、雑誌『新天地』の昭和15年11月、12月号の二回にわたって掲載された、掲題のレポートに目が留まった。武田は、自己の「観察ノート」に基づき、四か所の例を報告しているけれど、そのうちの一つが山東・鄒平県の例だった。鄒平の実験区については、以前にメモしたけれど、梁漱溟の理論に基づいて構想されたもので、中華武士会を離れたあとの葉雲表も参加していた形跡があるのが気になっている。武田のレポートも、この実験区の「尤も異色ある者」を「兵農一致の実験」とし、「古へのいわゆる「三時務農、一時講武」」、すなわち「四季のうち農繁期を除いた一季だけ県政府が訓練し、平時は郷村において保衛工作を担任し、いったん国家有事の時には直ちに武器を持って立つというのである」と記している。

 残念ながら、その訓練の中身については具体的にふれられていないけれど、国術に深い理解のある武田熙がこの取り組みに注目していたということ自体、個人的にとても面白いと思った。武田が現場に赴いたことがあるかどうかはわからないものの、「観察ノート」とあるぐらいなので、現場を訪れていたのではないかという気もする。

 ただ、この郷村建設について、上に引用した箇所でも「古の・・・」とあるとおり、民初の屯田兵や、郷兵の伝統、さらに広げると前回メモしたような民間における自衛のための結社結成の伝統を踏まえたものだと思われる。その辺については、いろいろ材料は見つかるものの、まだまだ検討しきれていないと感じる。 そろそろ、梁漱溟の『郷村建設理論』などに当ってみないとダメか。

 

 なお、武田熙が紹介している実験区は、江寗県(江蘇省)、蘭谿県(浙江省)、鄒平県(山東省)、定県(河北省)の四か所。最初の二つは「着手後尚日浅いので左程推称するに足るものが見受けられない」といい、鄒平県については、その前身である河南村治学院(梁漱溟はこれにも参加)からやや詳しく解説、最後の定県の事例をもっとも詳しく紹介している。晏陽初が推進したこの実験区の特徴は平民教育ということになるのかな。レポートの中では、定県については、実際に訪れたことが明記されている。それを考えると、鄒平県は残念ながら実際には訪れていないのかもしれない。

・・・ということで、「妄想系」 のタグをつけておく。

 

〇梁漱溟と郷村建設研究院のスタッフたち

出典:No.1227 梁漱溟 | 回忆我从事的乡村建设运动_中国

 

 

〇関連の過去メモ

 葉雲表の経歴について参照していたブログ記事は、閲覧できなくなっていた。サイトとして残っているだけまだましなのかもしれない。中国のポータルサイトは急に更新されなくなることも少なくないのは困る。

zigzagmax.hatenablog.com

 

zigzagmax.hatenablog.com

 

なお、いろいろなサイトで葉雲表として紹介されている写真は、実は別人で、写真の人物は劉恩格というのが正しいようだ。(ふたりはともに中華民国第二届国会議員

 葉雲表の鄒県の実験区での立場は、以下のサイトによると「総務長」。王冠軍という人が訓練を担当していた模様。ただし、「西北軍人物志」には「山東郷村建設院副院長」となっており、要確認。

www.8794.cn