中国武術雑記帳 by zigzagmax

当世中国武術事情、中国武術史、体育史やその周辺に関する極私的備忘録・妄想と頭の体操 。頭の体操なので、たまたま立ち寄られた方は決して鵜呑みにしないこと(これ、肝要)※2015年2月、はてなダイアリーより移行

重慶市の非物質文化遺産

ふと気になって、重慶市の非物質文化遺産について、百度百科のリストから武術に関するものを抜き出してみた。 第一次リスト (2007年) 38 Ⅵ—1 中塘向氏武术 杂技与竞技 黔江区 第二次リスト (2009年) 53 Ⅵ-4 荣昌缠丝拳 传统体育、游艺与杂技 荣昌县 第三…

東亜武道大会参加の摔跤選手など

1940年の東亜武道大会の代表団の名前を改めて確認して、呉斌楼や通背拳、形意拳の関係者以外に、摔跤のメンバーも含まれていることに改めて気がついた。 具体的には、宝三こと宝善林と、陳徳禄。 《意拳史上重大疑難史事考一》 | 意拳正軌學會 蘇学良・李宝…

馮驥才『三寸金蓮』など

馮驥才が 天津の市井を題材にした「怪世奇談」三部作のうち、未読だった『纏足(原題は『三寸金蓮』)』を読んでみた。 纏足を愛で、纏足についての薀蓄(「蓮学」)を競いあう男たち、そんな男たちや、同性の女性たちの視線を気にする纏足の当事者である女…

万楽剛『張之江将軍伝』など

たまたま見つけた張之江館長の伝記のキンドル版を読んでみた。 〇張之江将軍伝。English Edition と書いてあるけれど、実際には中国語簡体字。 ?之江将?? (English Edition) 作者: 万?? 出版社/メーカー: ??出版社 発売日: 2015/05/01 メディア: Kindle版 こ…

寇運興2 曹振譜、許昌国術館など

インターネットで調べものをしていて、許昌国術館の徽章の画像がヒットしたので、画像の掲載されているページを見て見たら、ベルリンオリンピックにも参加した寇運興が館長を務めたと書いてあった。 www.wylbpm.com 以前に興運興についてメモしたときに見た…

口述記録と創作 『義和団民話集』など

一つ前のメモに、曹錕の部隊に苗刀を伝えた静海県の四人の武術家がでてきたけれど、ここは天津の義和団の首領として知られる張徳成、曹福田の出身地でもある。 張徳成は、松岡圭祐の小説『黄砂の進撃』の主人公にもなっていて、東洋文庫所収の『義和団民話集…

曹錕とその周辺

慈禧太后(西太后)の寵愛を受けていた太監の安徳海が失脚した事件に関係して、周長春ら南皮出身の武術家があやうく巻き添えを食いそうになったことを以前にメモしたけれど、この事件のことをもう少し精しく知りたくて政協南皮委員会編著『南皮 千年文化古県…

幼児向け武術操いろいろ

北京で、市内19の幼稚園による第2回「幼児武術操匯演」が開催されたというニュースが流れてきた。 www.xinhuanet.com 記事によると主催は、北京市学前児童保教工作者協会と、中国関心下一代工作委員会の健康体育中心小児武学伝承研究院北京分院。関心下一…

『中国武術全史』編纂プロジェクト

掲題のプロジェクトが立ち上がり、5月11日と12日、瀋陽で会議が開催されたらしい。あまり精しい情報が流れていないものの、プロジェクトのトップ(主編)は康戈武氏であること、同会議には上海体育学院や瀋陽体育学院、河南大学等、10余所の高等教育機関か…

『籌海圖編』、備前刀など

4月のはじめに通勤電車の中で読んでいた本で、明代の『籌海圖編』(注)に、日本刀の名品について記された箇所があると出ていたので、その晩、家に帰って、インターネットで調べたら、巻二に「上庫刀」と「備前刀」について記された箇所を見つけた。 それで…

斫削と粘槍 呉殳「単刀図説」の技法についての頭の体操

林伯原先生の『中国武術史』の中に、程宗猷(冲斗)の『単刀法選』と呉殳の『手臂録』巻之三「単刀図説」(以下、「単刀図説」)の各勢を比較した表がある。その中で、例えば、『単刀法選』の「入洞刀勢」と「単刀図説」の「入洞勢」は「勢名は類似するが外…

「河南武術“改革解放40年傑出貢献人物”」など 

最近目に留まった時事関係のニュース数件をメモ。 1.標準化 まだ詳細はよくわからないけれど、国際標準化機構(ISO)が武術太極拳で使う服と剣の国際標準を定めたとのこと。 中国が数年にわたってISOに働きかけた成果とのことで、これによって、今後、中国の…

脱線系・妄想系小ネタのフローアップ

1. アベンジャーズのエンドゲームが公開間近。アイアンマンのロバート・ダウニーJrが詠春拳を習っているというのは有名な話だけれど、アース・ウィンド&ファイアーのFBページに、ロバート・ダウニーJrが、ブギー・ワンダーランドのリズムにあわせて、詠春拳…

ダニエル・S・ レヴィ『孫文を守ったユダヤ人―モーリス・コーエンの生涯』など 

過去に、読みたい本としてメモしていた本の中で、最近読む機会があった本と、たまたま眼にとまって読んだ本についての備忘録。 1.『孫文を守ったユダヤ人―モーリス・コーエンの生涯』 書架には出ていないものの、実は地元の図書館の書庫にあることがわかり読…

稠禅師の武功など

稠禅師は、唐豪以来、初期の少林武僧と紹介されているけれど、その論拠として『太平広記』に、『紀文』(未確認)と『朝野僉載』を引いて、稠禅師が「引重千鈞、拳捷驍武」だと記されていることを挙げている(注1)。 他方、笠尾恭二『中国武術史大観』は、…

フォローアップ系の小ネタ

フォローアップ系の小ネタ数件。 1. 蘭州で「通備武芸文化伝承培訓中心」が設立されたという。以下に、二つ、関連動画ニュースを貼り付け。一つ目のニュースの中で、同種の組織としては蘭州ではじめて設立されたものと紹介されているけれど、2012年に開催さ…

「中小学武術教育与研究中心」の設立

「中小学武術教育与研究中心」という機構が成都で設立されたというニュースが流れてきた。 sichuan.scol.com.cn 出典:“中小学武术教育与研究中心”成立会在人北小学举行_看度CanDo! 同センターは、西南民族研究学会民族体育専業委員会、成都市教育学会、四川…

太監安徳海、断魂槍周長春等

近代の武術家について調べていたら、南皮出身の周長春という武術家にたどり着いた。 もともと唐拳を学んでいて、その後劈掛拳、八極拳、戳脚、功力拳などを学んだという。とくに劈掛拳を得意とし、その劈掛拳は李雲表から学んだとのこと。武器は陸合大槍が得…

気になる武術映画

伝統武術に題材をとった映画二本の製作についての情報が流れてきた。 一つは査拳についてのもので、日中戦争の頃の、馬忠啓という老師の伝記映画のよう。タイトルはそのものずばり『査拳』らしい。 www.qqgfw.com 馬忠啓という人についてはあまり詳しい情報…

杉山祐之『覇王と革命』など

昨年末のメモで、軍閥抗争時代に嵩山少林寺に火が放たれてことに関して、当事者といえる石友三や樊鐘秀などについて調べた際、これは軍閥時代のことを一通り学びなおさないといけないと感じたので、地元の図書館にあった『覇王と革命』を読んでみた。 この本…

「宇文武社火」、山西省国術省考、国術国考の山西省入賞者など

旧正月のイベントに関するニュースの中で、山西省太原市で行われた「社火」の一環として、宇文村の「宇文武社火」が披露されたというニュースが目にとまった。 www.chinanews.com 記事によると、「宇文武社火」は実は形意拳の一種で、関係者の張万栄は民国十…

華北交通アーカイブ

SNSで、日中戦争期に作られていた華北交通株式会社がストックしていた写真の展示会が京都で行われるという情報が流れてきた。 www.museum.kyoto-u.ac.jp チラシにモンゴル相撲らしき写真が写っていて、若干気になったので、現場には行けそうにないものの…

流寇と土寇、郷兵守備、民壮など

タイトルに惹かれて中古本を買ったまま読めずにいたハードカバーの吉尾寛『明末の流賊反乱と地域社会』を、年末年始の休みを利用して読んでみた。 www.kyuko.asia ちょうど、明末清初を題材にした、小説(金庸『碧血剣』 )を読んだり、映画(『白髪妖魔伝』…

真似て近づく

SNSで流れてきた音楽情報をたどっているうちに、フェニックス・ホーンズのウェブサイトにたどり着いた。 www.thephenixhorns.com フェニックス・ホーンズといえば、大好きなアース、ウィンド&ファイアー(以下、字数が多くて面倒なのでEWF)の全盛期…

現代「武術学」の立役者

1月5日、徐才氏がなくなった。中国武術に興味をもって、内山書店や東方書店に足を運ぶようになった80年代後半ごろ、大陸で出版された書籍の多くには徐才氏の序文があった。 その多くは、『徐才武術文集』にまとめられているはずだけれど、長いこと押入れの…

高校受験と武術 武術進校園5

澎湃新聞の記事によると、河北省の人民代表大会で、滄州の尹広軍は滄州の中小学校において、伝統武術を取り入れようという提案を改めて行ったらしい。 www.thepaper.cn 同記事によると、滄州市では2009年には伝統武術を学校教育に取り入れるため、滄州市体育…

ロバート・ビッカーズ『上海租界興亡史 イギリス人警察官が見た上海下層移民社会』など

ロバート・ビッカーズ『上海租界興亡史 イギリス人警察官が見た上海下層移民社会』は、新年早々、調べたいことがあって行った地元の図書館でたまたま見つけた本だけれど、第一次世界大戦でフランス戦線に参加し、除隊後、上海に赴任したモーリス・ティンクラ…

伝統武術の回復、規範化など

年末年始に目に留まったニュースから。 1.伝統武術の保護、規範化 北京市で、市の非物質文化遺産でもある通背拳の「恢复项目」の起動を宣言したという記事。具体的な中身がよくわからないけれど、「恢复项目」とは、本来の姿を回復させようというプロジェク…

『春繍刀』など 

2018年にいくつか見た映画について。 1.『春繍刀』 邦題:ブレイド・マスター 『箭士柳白猿』が『ジャッジ・アーチャー』という邦題でラインナップされていた2014年の東京・中国映画週間で上映された作品。スケジュールの都合で見に行けず、その後ずっと気に…

火焼少林寺 石友三、樊鐘秀、少林寺保衛団など

にわか勉強で前提知識がなさすぎるので、うまく纏められていないけれど、とりあえずの備忘録として。 ********* 軍閥混戦の時代、少林寺に火を放ったのは石友三と蘇明啓。 石友三は、以下の記事によると、多くの軍閥の中でも「寝返り(倒戈)」の回数が多く…