中国武術雑記帳 by zigzagmax

当世中国武術事情、中国武術史、体育史やその周辺に関する極私的備忘録・妄想と頭の体操 。頭の体操なので、たまたま立ち寄られた方は決して鵜呑みにしないこと(これ、肝要)※2015年2月、はてなダイアリーより移行

佐倉孫三「拳闘」(『臺風雜記』(1903)所収)など

佐倉孫三は二松学舎の三島中洲の門人。警察関係のキャリアを積みつつ、言論家としても活動していた。台湾に二回(1895~1898、1912~1915)、福建(1904~1910)に一回赴任しており(注1)、『臺風雜記』は1895年~1898年の最初の台湾駐在中の見聞を漢文で記…

「洮南県下に於ける侠義者(侠客)調」 大正四年六月末

アジア歴史資料センターのデータベースから、本当に偶然見つけた、マル秘と印の押された史料。洮南(清朝時代は洮南府、中華民国では洮南県、現在は白城市の県級市(注)。 〇「洮南県下に於ける侠義者(侠客)調」 出典:「JACAR(アジア歴史資料センター)Ref…

大学受験と武術 「武術と民族体育」専攻設置校(2015-2020)

2020年の大学入試で「武術と民族体育」専攻の生徒を募集する学校が公表された。2020年は、前年の52校から新たに2校が加わって、54学校だった。 www.ydyeducation.com この数字、2015年から気になってメモしているので、改めてまとめてみた。各校の定員や採用…

多賀宗之「支那の武技」(『赤裸の支那』(1932)所収)

たまたま発見した史料。 多賀宗之は1902年から1908年まで8年にわたって保定軍官学校の教官を務め、清朝滅亡後は川島浪速らの満蒙独立運動にかかわるが、当初、この動きを黙認していた政府の方針が一転すると、「蒙古挙兵計画は、実際には参謀本部・外務省な…

2022ユースオリンピック、四川省体育局「宅家武術健身操」

2019年9月に国務院が発表した「体育強国建国要綱」では、武術に関して、やはりオリンピック競技種目化が目標とされていたけれど、先月、ローザンヌで開催されたIOCの会議で、2022年にダカールで開催されるユース・オリンピックではwushuが競技種目になること…

武田熙「支那郷村建設運動の実際」 郷村建設と武術2

調べたいことがあって地元の図書館で国会図書館の資料を見ていて、時間があまったので、なんとなく「武田熙」というキーワードを入れてみたら、いくつか見たことのない資料がヒットした。 なかでも、雑誌『新天地』の昭和15年11月、12月号の二回にわたって掲…

『秘密社会と国家』(神奈川大学人文学研究叢書)

中古本をアマゾンで300円足らずで購入。 秘密社会と国家 (神奈川大学人文学研究叢書) 作者:小林 一美,馬場 毅,大里 浩秋,孫 江,並木 頼寿 出版社/メーカー: 勁草書房 発売日: 1995/04 メディア: 単行本 8名の論者の論文(うち5つは中国に関するもの)と、冒…

『台湾、街かどの人形劇』

台湾の人形劇(布袋戯)の陳錫煌に10年間密着取材した話題のドキュメンタリーを、先日鑑賞。 machikado2019.com 祖父と同じく、彼の父・李天禄も「入り婿」であったために、長男である自分は父の姓ではなく、母方の姓である陳を継がなければならなかった。そ…

「東方大力士」査瑞龍など

日中戦争時、中国人向けの映画製作を軍部から依頼された川喜多長政が、自分は配給に徹し、製作のパートナーとして選んだのが、新進の新華影業公司をたちあげていた張善琨。百度百科の紹介によると、タバコ会社で広報の経験もあり、黄金栄を通して青幇にも加…

フォローアップ系小ネタ 2019.12.22

見落としていて最近気づいた情報も含めて、いくつか気になった動きをメモ。 1.中国武術通史編纂プロジェクト これは、半年くらい前にメモした「中国武術全史」プロジェクトとは違うのか? 印象としては、「通史」のプロジェクトは、半年前の「全史」プロジェ…

武當派武術の標準化2

去る11月21日、武当山で、第一届全国武當拳交流大賽が開幕した。 これは中華人民共和国成立以来、はじめての武當拳専門の全国規模の賽事であり、武当拳にとって記念すべき日だと、地元新聞は報じている。 この競技は、国家体育運動総局武術運動管理中心、中…

張仲忱 岩井茂樹訳・注『最後の宦官 小徳張』など

前回のメモに引き続き、時代的には孫耀庭より一世代前の宦官・小徳張こと張祥斎についての本から。 張祥斎も、前回メモした孫耀庭のように、宮廷で芝居の訓練をしており、慈禧太后(西太后)の芝居好きによってその眼にとまり、出世の足掛かりを得る。 張祥…

賈英華著 林芳訳『最後の宦官秘聞』

満州国でも溥儀に仕えた宦官の孫耀庭に作家の賈英華が取材してまとめた本。 孫耀庭については、これとは別に、凌海成による伝記小説もあるけれど、こちらは入手したのみで未読。伝記小説によくあることだけれど、かなり脚色して膨らまされている印象がする。…

佐藤忠男『キネマと砲聲 日中映画前史』

以前にメモした、川喜多大治郎大尉がスパイ容疑で射殺された事件について興味をもって調べているうちに辿りついた本。川喜多大尉の事件については、石川忠雄の論文によりながら、冒頭に一章を割いて触れられていた。 それ自体についてはとくに新しい情報は得…

愛新覚羅・溥儀『わが半生』

先日、大同公園事件について調べたくて図書館で借りてきた溥儀の『わが半生』、同事件以外にも霍氏一門についての記述がないか、など気になったので、頭から読んでみた。 ただ、文庫版は上下二巻ながら小さめのフォントがびっしりで、紫禁城内の平面図なども…

満映の武術関係者

前回のメモの最後のほうに、満州国の宮内府警衛処長の人事に関して、関東軍が長尾吉五郎を推した際、溥儀が甘粕正彦を挙げたことをメモした。 甘粕はその後、1939年に満州映画協会(満映)の理事長になるのはよく知られているとおり。その満映に関しては、以…

大同公園事件(1937)

いくつかの文献・史料から、溥儀の「私兵」である護(衛)軍と、彼らが巻き込まれた大同公園事件に関する記述と、それに関連して、最近見つけた『満州国官吏録』に基づいて考えたことの、とりあえずの備忘録。 〇新京を紹介した動画 途中に、大同公園のボー…

気になった時事系小ネタ

最近気になったいくつかのニュースをメモ。 1.全球功夫網による「当代伝統武術名家」選出。 全部で何人選ばれたのか、記事からはいまいちよくわからないけれど、トップには王世泉、張全亮、李秀人、楊林生、田京苗、王徳明の六名が入選している模様。選考期…

『ホテル・ムンバイ』、ブルース・リーのルーツなど

先日休みの日に映画でも観るかという話になり、それなら、ということでブルース・リーの描かれ方が物議を醸したクエンティン・タランティーノの「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」を観たかったのだけれど、残念ながら時間があわなかった。それ…

満洲皇帝陛下ご一行2(1940)

前回、昭和10年の溥儀来日時の団員リストをメモしたけれど、気になったので、昭和15年の来日時の団員表についても確認してみたら、内廷随侍の肩書きで「霍福泰」という名前がでていた。 〇出典:紀元二六〇〇年慶祝満洲国皇帝陛下御来訪に関する件 霍福泰と…

満洲国皇帝陛下御一行(1935)

国立公文書館に保存されている、昭和10年の溥儀来日時の資料がアジア歴史資料センターのサイトに公開されおり、団員リストの中に「霍慶雲」の名前があることを確認した。肩書きは「宮内府従士」だった。 出典:満洲国皇帝陛下御来訪に関する件 (全7ページ…

翟樹珍、四大張、李少春など

このブログで、以前にメモした王之和、沙国政が天津時代に師事した翟樹珍についての紹介記事を見つけたのでメモ。 双面大侠——“神枪”翟树珍 記事によれば、翟樹珍は光绪三年(1877年)生まれで、1949年に73歳でなくなっている。 船頭や畑仕事をしながら覇州の…

李際春

この春の塘沽停戦協定以来、 冀東地区ではたえず関東軍の挑発工作がつづけられた。まず土匪の李際春がいく千かの手兵をひっさげて親満義勇軍の旗を掲げ、灤東地区で挙兵した。灤東地区とは鮎のとれる灤河から山海関までの間である。つづいて匪賊の老耗子が挙…

李健吾、李新吾など

ウォン・カーウァイはあんまり好きではないので、『グランドマスター』もあんまりまともに見たことはないけれど、この作品に出てくる八極拳家「一線天」の原型は、劉雲樵と李健吾の「混合体」ではないか、などと言われる。 真实民国武林宗师:谁曾传功毛泽东…

較場口事件(1946)

重慶では、各団体と市民が、2 月 10 日に同市の較場口で、〈重慶各界の政協会議の成功を祝う大会〉を行った。実際は、この大会開催の責任者は民主同盟中央委員李公樸(後に昆明で国民党の特務に暗殺された)である。同大会の宣言である〈全国人民に告げる書…

景梅九著 大高巖・波多野太郎訳『留日回顧 一中国アナキストの半生』

先日、某駅で人と待ち合わせをした際に、待ち合わせ時間より少し早くついたので、近所にあった古本屋に入って見つけた本。 ぱらぱらとめくっていたら、以前にメモした井勿幕、という名前が何度かでてくるのに目がとまったので、とりあえず読んで見た。 ○井勿…

郭士銓、張長海 日本武術視察団(1930)2

郭士銓『搏擊』という書籍がネットで売られていて、調べてみたら、郭士銓は、1930年に中央国術館が日本の格闘技事情を調べるために組織した訪日団のメンバーの一人だった。当時は三等教員で、日本では、神保町の柔道道場・前田道場で、「藤昌憲」という師範…

曹錕とその周辺2 北寧国術研究会など

「国術週刊」の「第十一十二十三合刊」(注)に、天津の北寧国術会設立三周年についての記載がある。 北寧国術会というのは精しいことがわからないけれど、「中国武術在線」の「天津武術組織」の記事に北寧国術研究会と紹介されている団体と同じ団体であると…

小坂順三『漫游日誌』「馬良将軍」など

1.趙竹光『国術講話』 以前に、国会図書館にあることを確認した趙竹光の『国術講話』が中国のオークションサイトに出ており、中身の写真が掲載されていて、内容が垣間見れたのでメモ。 学習者の年代に応じて、器具を使ったトレーニングや、グローブや柔道着…

武術産業発展計画(2019-2025年)

国家体育運動総局以下、14の政府部門の連名で、掲題の計画が発表された。 全文は以下のリンクのとおり。 www.sport.gov.cn 2025年までに、10の賽事(原文は「競賽精品項目」)をつくり、少なくとも5つの専門ブランド(服装や武器)を立ち上げ、武術スターと…