中国武術雑記帳 by zigzagmax

当世中国武術事情、中国武術史、体育史やその周辺に関する極私的備忘録・妄想と頭の体操 。頭の体操なので、たまたま立ち寄られた方は決して鵜呑みにしないこと(これ、肝要)※2015年2月、はてなダイアリーより移行

清朝末期~中華民国の武術

「フラッグ式/採点式」、実写版「ムーラン」など

またまたフォローアップ系の小ネタをいくつかまとめてメモ。 1.フラッグ式と採点式 ブレイクダンスの競技化についてメモしたとき、採点方式について、一対一の対戦形式による競技は、ブレイクダンスのストリート性と関係があるように考えたのだけれど、この…

馮驥才『神鞭』『鷹拳』など

掲題の小説の日本語訳が古本で安く手に入ったので読んでみた。 〇『神鞭』井口晃 湯山トミ子訳 北京外文出版社 ------- 『神鞭』は天津の市井を題材にした「怪世奇談」三部作の一つで、のこる『陰陽八卦』、『三寸金蓮』(文庫版では『纏足』と改題)も邦訳…

胡奉三、葛月潭、千山の無量観など

百度の胡奉三の紹介に、やや唐突に「内外拳法の長所を集めて・・・」とでてくるのが不思議だと思っていたら、当時の東北地方の道教の領袖で奉天(瀋陽)の太清宮の葛月潭方丈の紹介のなかに、胡奉三とのつながりが書かれているのを見つけた。 葛月潭和胡奉三…

奉天省武道振興会から満映、シルク・ドゥ・ソレイユへ

いろいろな超人技を動画で紹介しているフェイスブックの「People are awsome」というページで、珍しく中国武術関係の動画が流れてきたと思ったら、シルク・ドゥ・ソレイユで活躍している、 “JJ” Zengjiao Jian の紹介だった。 www.facebook.com どこかで聞き…

タイタニック、太平輪の生存者と武術家の「水上功夫」?

イギリス人の映画監督、アーサー・ジョーンズが、タイタニック号の中国人生存者6人の行方を追ったドキュメンタリー「The Six」の予告編が公開されて話題になっている(らしい)。 tabi-labo.com www.youtube.com この記事を読んで、生存者のうち一人は武術…

ジャック・ジョンソン、陳漢強、日本武術視察団(1930)など

SNSでシルベスター・スタローンが、黒人初のボクシングのヘビー級王者、ジャック・ジョンソンの映画を撮るというニュースが流れてきた。 theriver.jp その後、しばらくして、ジャック・ジョンソンが戴冠したことは、人種差別に苦しむ当時のオーストラリアの…

自貢の塩、杜心五、藤黒子など

清代から盛んになる四川省における塩田開発のことを以前にメモしたけれど、杜心五の伝記(賀懋華『大侠杜心五伝奇』)を読んでいたら、彼が最初に保鏢を務めるのは、九溪の富商・郝剣鳴が四川省に私塩の買い付けにゆく際に依頼を受けてのことだと書かれてい…

張榕、王永江、于冲漢、東北大学体育専修科など

孫文たちに協力して西安で革命の準備をしたのが井勿幕、井岳秀だとして、東北で革命を画策した人に張榕がいる。 張榕について、中国版ウィキペディアの紹介によってメモすると、日露戦争の頃、関東独立自衛軍なる団体を組織してロシアに対抗した人で、戦後、…

葉雲表、梁漱溟、杜心五など 郷村建設と武術

詳細はまだ確認できていないものの、以前にメモしたように中華武士会の初代会長・葉雲表は、1930年代には山東で梁漱溟の郷村建設理論に基づいて鄒平県に作られた実験区の活動にかかわっていたらしい。 〇関連のメモ zigzagmax.hatenablog.com この点について…

井勿幕、井岳秀など:「鷂子高三」の関係者たち

以前にメモしたけれど、『少林拳術秘訣』に出てくる「三原高氏」について、唐豪はその実在を疑問視していたけれど、近年の研究でこの「三原高氏」は「鷂子高三」こと高占魁らしいとされている。その高占魁の弟子に魏金鐘がいて、魏の教え子の中に井岳秀がい…

河北省国術館、天津市国術館、『形意拳術講義』など

河北省国術館の設立と館長について、ふたつの説があることに気づいた。 一つは、李書文と関係の深い許蘭州が1928年に天津で設立し、自ら館長に任じたという説。許蘭洲の故郷でもある南宮の南宮広播電視台のサイトの以下の記事には、日本で著書も出版された張…

ベルリンオリンピックの国術代表団4 幻の山東代表? など

山東国術館について紹介した記事を見ていて、以下のような記述があるのに眼がとまった。 …据张香圃(济南太乙门传承人)回忆:(1985年《少林武术》第三期记载)1936年林秉礼、佟顺禄、张香圃、马洪智、赵玉庭五名山东选手被选拔为参加第十一届奥运会的“世运…

中華武士会とその周辺の日本関係者

掲題のテーマに関連して直接的、間接的に関係のある人々の情報が少しずつたまってきたような気がする。まだ頭が整理できていないので、注釈を連発してしまっているけれど、とりあえずのメモとして。 1.呉汝綸、杜之堂 呉汝綸は1889年、李鴻章の推薦により当…

2017年「全国先進武術之里」「全国群衆体育(武術)先進単位」表彰大会など

最近のニュースから、地方武術協会・武術運動管理中心関係で気になったものを順不同でメモ。 1. 「全国先進武術の里」「全国群衆体育(武術)先進単位」表彰大会 12月24日、江蘇省太倉で、2017年「全国先進武術の里」「全国群衆体育(武術)先進単位」表彰大…

大陸浪人、日本人馬賊、革命派、精武会とボクシング・柔道など 

同じ時代のことだから当たり前といえば当たり前だけれど、いろいろ関心をもっていることがなんとなく繋がってきた。それぞれ掘り下げてゆければ大きなテーマに発展する可能性があるものの、とりあえずのところ連想ゲーム的にメモ。 1. 日本人馬賊-小日向白…

中国国術と西洋拳撃の対抗戦(1943)2 (何金章)

以前のメモで、1943年に蔡龍雲も出場したボクシングと中国武術の対抗戦の際、一部の記事では当時の蔡龍雲の年齢を14歳と書いているけれど、15歳が正しいのではないかという疑問を書き留めておいた。 zigzagmax.hatenablog.com この点に関して、蔡龍雲自身が…

沛声『武林名門尚芝蓉』

掲題の「小説」をネットでたまたま見つけて、読んでみたら面白かったのでメモ。 〇全文のリンクはここ。冒頭に、かつて日本で発表されたかのような記載があるけれど未確認。雑誌『武術』で李文彬が尚氏形意拳を紹介していた頃(VHSテープを買った気がする…

沙国政、顧麗生、貴州の太極拳など

少し前に修剣痴についてメモした際に、沙国政が長沙講武堂で修剣痴の指導を受けとされていることをメモしたけれどその前後、雲南省で武術を教えるまでの沙国政の足取りをざっと調べてみた。 1927年ごろに山東から天津に出て、王之和、馬興義らと交流を深め、…

ベルリンオリンピックの国術代表団3(領隊、監督員、選考委員)

調べものをしていて、以下の記事に、「鼻子李」こと李瑞東の弟子の李子廉の弟子に郝明という人がいて、ベルリンオリンピックの国術代表団の引率(領隊)を務めたと書いてあった。おそらくは、張文広『我的武術生涯』等では郝銘と書かれている人物のことだと…

峨眉派趙門と太祖拳、営口の起順鏢局、綏遠の得勝鏢局など

1.紅拳、「峨眉派趙門」、太祖拳 少し前に『全球成功夫網』に載っていた安徽省蚌埠の太祖拳についての記事が面白かった。 www.qqgfw.com 说起太祖拳,其实是精湛的拳种,属“红拳”,拳术套路和器械套较多,由于传承甚少,为知不多,究其原因还是宣传交流不够…

「東北三省武術会」、「奉天武道振興会」など

1.海朝英 張作霖・張学良について調べていたら、海朝英という、孟村出身の武術家にたどりついた。 弾腿の名人で、なおかつ回教のアホンであったらしい。 弾腿のほかに鐵(黨)、鐵鞭、虎頭雙鉤が得意であったともいわれる。 百度百科の紹介では、1931年の「…

ベルリンオリンピックの国術代表団2 (+予選参加者)

ベルリンオリンピック時の国術代表団、実際に渡航したのは補欠を含めて9名だけれど、予選には全部で25人が参加したらしい。そのうちわけは以下のとおり。 1936年5月11日,各地被保送的国术选手在上海延平路申园举行初次预选。参与者有赣、豫、浙、京、青、沪…

中華民国第六届全国運動大会(1935年) 女子単人比賽入賞者

かつて中国駐在中に、地元の図書館で見つけた『東方雑誌号外 第六届全運会画刊』の、女子国術入賞者の記事と写真に出ている名前を判読しようとして調べていたら休日が半日つぶれてしまった。それでも、なんとか全員判読できたような気がする。 判読した結果…

「鉄羅漢」張長発

前回、朱国福について調べていて、『中国武術人名辞典』の朱国福の項に、12歳から馬玉堂について形意拳を学ぶ前に張長発に少林羅漢門拳術を学んだ、と出ていたので、その張長発について調べてみた。 張長発は「鉄羅漢」の異名をもち、程廷華に八卦掌を学び、…

1923年の中西対抗ボクシング競技、朱家四虎など

1.1923年の中西対抗ボクシング競技 先日、1943年の国術とボクシングの対抗戦についてメモしたけれど、中西対抗ボクシングの競技で一番はじめに勝ったのは朱国福だといわれている(注1)。 時期は1923年8月11日。翌12日の「申報」の記事に、「中華体育会会員…

長沙の修剣痴とその門人(韓鵬堯、王之和)

二つ前のメモの冒頭に貼り付けた写真で、王潤生の隣に修剣痴が写っていたので、 修剣痴と長沙の関係について調べてみると、1920年前後から大連で通背拳の指導を行なっていた修剣痴は、早期の弟子の韓鵬堯(後述)の推挙で湖南省第2回国術考試(1932年10月)…

中国国術と西洋拳撃の対抗戦(1943)

ネットで見つけた高嶋航『「東亜病夫」と近代中国(1896–1949)』(京都大学人文科学研究所編『近現代中国における社会経済制度の再編』所収)は、西洋の比喩表現としての「病夫」が、中国では違った意味で受け止められ、尚武や軍国民思想、身体鍛錬による「…

四川省伝統弓連合会成立

2017年7月15日、四川省武術協会が伝統弓連合会を成立した開催されたというニュースが流れてきた。 sports.sohu.com 伝統弓術といえば、2016年12月出版の、馬廉禎主編『武学』の第2集は伝統弓術の特集だった(未入手)。 逸文武學書館>武學—中國傳統射箭專輯 …

弘文書院、大森体育会、中国体操学校とその関係者たち

1. 王潤生、不肖生、楊昌済、柳午亭、毛沢東など 清末の日本留学生の中に、湖南の「拳王」八拳の王潤生がいる。平江不肖生こと向愷然の「拳術見聞録」や「拳術伝薪録」では王志群と記されている人物で、帰国後は太極拳にも興味をもち、年下の呉鑑泉にも学ん…