真似て近づく
SNSで流れてきた音楽情報をたどっているうちに、フェニックス・ホーンズのウェブサイトにたどり着いた。
フェニックス・ホーンズといえば、大好きなアース、ウィンド&ファイアー(以下、字数が多くて面倒なのでEWF)の全盛期を支えたホーンセクション。
〇まさかこのブログにリンクをはる日が来るとは思っていなかったけれど、日本武道館公演のマジックマインドの演奏は、このホーン隊の魅力爆発で、何度きいても鳥肌がたつ。フィル・コリンズのライブの動画でも彼らの勇姿を見ることができる。
ウエブサイトには彼らが「フェニックス・ホーンズ」または個人名義で参加しているアルバムの名前もたくさん紹介されている。
モーリス・ホワイトのプロデュースしたアルバムや、EWFのメンバーのソロワークみたいなものはだいたい網羅していたつもりだけど、フェニックスホーンズやそのメンバーということで見ると、まだまだいっぱい聴いてみたいアルバムがあることに気づく。
たとえば、ドン・マイリックとルイス・サターフィールドが参加している1971年のThe Intentions – Dig It / Blowing With The Windの、なんと今風でカッコいいこと。
モーリスホワイトの師のチャールズ・ステップニーがプロデュースしたThe Dellsの
Windy City Soulのアレンジ、これまたまったく時代を感じさせない。(フェニックスホーンズのメンバーは参加していないみたい。)
そんなことを考えながら、改めてEWFについて調べているうちにたどりついたのが、このインタビュー記事。
ドリカムの中村正人が、アースの曲をパクっていたことを告白すると、モーリス・ホワイトから、
「私もジョン・コルトレーンやFunkadelicやKool & the Gangからいろいろ盗んでる。そこにオリジナリティを足して次の世代に受け渡すのがお前たちの仕事だ」といわれて大泣きしたのだという。
〇引用しておいて言うのも何だけど、ドリカム自体はきいたことが無い
そういえば、EWFの初期のアルバム「Head to the Sky」は「ブラックロック革命」という邦題がついていたりして、ジャズからクロスオーバー(フュージョン)が生まれてくるような流れにも乗って、ジャンルを超えていろんな要素が絶妙に混ざりあったところが魅力とされていた気がする。
getaway のインストゥルメンタルバージョンなんて、アル・マッケイのギターや、ヴァ―ディン・ホワイトのベースが際立って聞こえて最高。
いま伝えられている中国武術も、実はそうやって、いろんな武術家がさまざな技を学んで、自分なりの創意工夫を足してまとめて、新しい時代に対応したものではないかと思う。マニアは、ともすれば自分なりの想いを投影しつつ、より「原型」に近い技法・スタイルを探しあてることに熱中しがちだけれど、大事なのはモーリス・ホワイトがいうように、「次の世代に受け渡す」ことなのではないかと思う。
もっとも、EWFの音楽がすばらしいのはそれぞれのミュージシャンがきちんとした実力をもっているからで、そういった基礎のないところで表面的に「オリジナリティ」を付け加えてみてもしょうがないと思うし、彼ら自身が感謝しているように、チャールズ・ステップニーというプロデューサーがきっちり「ダメだし」したところも大きいと思う。そういう意味では、伝統の技術の神髄を身につけること自体がとても難しい作業であると思う。
それでも、個人的にはどちらかというと、伝統に忠実な、王道的な人よりも、新しい時代に適応しようとした人たちに魅かれるところがあるのは、武術をはじめる前から聞いていたEWFの影響なのかもしれない。
気がつけばモーリス・ホワイトの命日が近い。偉大なミュージシャンに敬意を表しつつ。
ラムゼイ・ルイストリオでドラムをたたいているモーリス・ホワイト
出典:Ramsey Lewis - Wade In The Water (Vinyl, 7", Single, 45 RPM) | Discogs
※タイトルの「真似て近づく」は、以下の記事にでているフレディ・マーキュリーのことばから。フレディが真似して近づこうとしたのは、エルヴィス・プレスリー、クリフ・リチャード、ファッツ・ドミノ、そしてリトル・チリャード。
自分も師匠の技を少しでも真似て、近づければと思う。