『春繍刀』など
2018年にいくつか見た映画について。
1.『春繍刀』 邦題:ブレイド・マスター
『箭士柳白猿』が『ジャッジ・アーチャー』という邦題でラインナップされていた2014年の東京・中国映画週間で上映された作品。スケジュールの都合で見に行けず、その後ずっと気になっていたのを、中国の動画サイトで観たら、派手さはないけれど、しっかりした作りの武侠ものの傑作だと思った。
タイトルの「春繍刀」は、主人公とその義兄弟三人が所属する錦衣衛が所持する刀。英語タイトルはBrotherhood of Blades で、タイトルのとおり義兄弟三人の、それぞれの思惑と絆がよく描かれていたと思う。
ちなみに、李東学が演じる「三弟」は肺病病みで、医師の娘と魅かれあうという設定なのだけれど、これは監督がかつて 新撰組の沖田総司の恋愛譚(司馬遼太郎の小説の翻訳?)を読んでいて、それを武侠ものに置き換えたものらしい。
なお、中国版ウィキによると監督は『たそがれ清兵衛 』も参考したらしいけれど、どこをどう参考にしたのかはよくわからなかった。
評判がよかったせいか、前日譚と言う形で続編が作られて、こちらは『修羅:黒衣の反逆』というタイトルで、小規模ながら日本で劇場公開もされた。ホウ・シャオシェン監督、スー・チー主演の『黒衣の刺客』をパクったようなタイトルが痛々しい(ともにチャン・チェン出演)。
こっちも中国の動画サイトで観たけれど、続編の方は、少し予算が潤沢になったのか、やや派手目なワイヤーアクションやCGの割合が増えたような気がした。ただ、無理やり「前日譚」みたいにしてしまったために、第1作で丹念に描かれた義兄弟道士の契りの重さが、逆に薄らいでしまったように感じた。それでも、以下にメモするような作品よりは数段面白かった。
言及したついでに。
2.『白髪妖魔伝』
アマゾンプライムで鑑賞。夏頃、主演のファン・ビンビンが二重契約による脱税とその調査でしばらく当局に拘束され、姿をくらませていたのは記憶に新しい。
作品的には別にどうということもなかったけれど、趙文卓、于承恵、徐向東、孫建魁といったメンバーが脇を固めていて、そちらが気になって仕方なかった(笑)。以上のメンバーに加えて、武術関係者ではないけれど、王学兵が出ていたり、ツイ・ハークも芸術顧問(?)に名前を連ねていて、ドラマ版『セブン・ソード』のキャストが集まって作っているような感じだった。
『イップマン継承』で張天志役を演じ、ドニー・イェンと見事な立ち回りを見せたマックス・チャン。トニー・ジャー、ウー・ジンと三つ巴で戦った『ドラゴンVSマッハ』の最後のアクションも見事だった。その彼がこの映画では、全く立ち回りのない、制服姿の司令官役で登場し、あっけなく巨大ロボットにやられてしまうのはなぜだろうと思っていたら、この映画の監督が、ショー・ブラザース以来のカンフー映画の大ファンで、マックス・チャンが本作出演に興味を示していると聞いて出演を実現させたんだとDVDのコメンタリーで語っており、納得。
昔みていたロボットアニメはロボットプロレスとか言われていたけれど、ロボットプロレスもここまで来ればあっぱれ。
4.『キル・ビル』
公開当時かなり話題になったはずで、タランティーノ作品も好きで結構見ているのに、なぜか『キル・ビル』は見たことがなかった。あんなにショーブラザース作品へのオマージュがこめられているとは思わなかった。
5.その他
ジャッキー・チェンの『レイルロードタイガー』はいったい何が面白いのかまったく理解できなかった。ジャッキーとジェイシーの親子共演できたのがよかったのかなあ。出演者はそれなりに豪華で、脚本もなんだかタランティーノっぽいのを意識している気がした。
親子共演ということでは、サモハンが息子と共演した『コール・オブ・ヒーローズ/武勇伝』は、ルイス・クーの悪漢ぶりが評判で、その他の登場人物もそれなりにキャラがたっていて魅力的だったけれど、安っぽいCGと、ちょっと粗めのワイヤーアクションで、どちらかというとやや残念な気がした。人民裁判な結末もどうかと思った。
ジャッキー・チェンに話を戻すと、ジャッキー演じる警察官がエイリアンと戦う映画が、あたかもポリス・ストーリーシリーズの最新作であるかのような邦題で秋ごろに公開されていたけれど、見に行かなかった。
イコ・ウワイスがシラットでエイリアンと戦う『スカイライン -奪還-』と公開時期が近くて、こっちを見てお腹一杯になってしまったせいかもしれない。
ジャッキー映画といえば、ジャッキーがテロで娘を失い、復讐の鬼と化すという「The Foreigner」のほうが見たい。
「ジャッキー」「娘」というキーワードでいうと、こんな記事もあった。
ジェット・リーの『ドラゴンゲート 空飛ぶ剣と幻の秘宝』もアマゾンプライムで観た。キン・フーが途中降板した『ドラゴン・イン/新龍門客棧』の三年後という設定で、それなりに凝った作りでツイ・ハークっぽさは出ていたけれど、なんだかなあという感じだった。
ほかにも、劇場やテレビでいっぱい映画はみたけれど、2018年に劇場で観た最後の映画は、『ボヘミアンラプソディー』になった。感動的な映画で、なんどかうるっと来たけれど、ファルーク(フレディ・マーキュリーになる前の「パキ野郎」の名前)ときくと、どうしてもWWEのNation of Domination のファルークを思い出してしまう。
『ドリームガールズ』や『ジャージーボーイズ』もそうだったけれど、バンドやグループを題材にした映画は、下積みから成功、メンバーのすれ違い、仲直り、というように展開がある程度予想されるものの、その分安心して観ていられる。
最後に、このメモのテーマからは少しずれるけれど、2018年にみた映画のなかで一番面白かったのは、息子が見たいといったので一緒に見に行った『スターリンの葬送狂騒曲』だった。2019年はどんな映画と出会えるだろう。