中国武術雑記帳 by zigzagmax

当世中国武術事情、中国武術史、体育史やその周辺に関する極私的備忘録・妄想と頭の体操 ※2015年2月、はてなダイアリーより移行

ブレイクダンスの競技化、からの頭の体操

畑違いなのでぜんぜん知らなかったけれど、ブレイクダンス(ブレイキンというらしい)は今年10月にブエノスアイレスで開催されるユースオリンピック(15~18歳対象)の競技種目に採用されていて、今年5月にはその最終予選を兼ねた「第1回世界ユース選手権」が川崎市で開かれていたらしい。

朝日新聞の記事によると、「従来は「どっちがカッコ良かったか」など、審査員の主観に頼っていた審判システム」にかわって導入された採点方法は

・技の難易度や質をチェックする「身体」
・音楽性や攻める姿勢を見る「解釈」
・創造性と個性が鍵の「芸術」

の三つを柱とし、5人の審判員が点数をつけ、一対一の形で競技がすすんでゆくらしい。

digital.asahi.com

 

このニュースに関連して、このブログの観点から感じたこと2点をメモ。

一点目は、採点基準と競技形式の関係。

 「世界ユース選手権」には34カ国から87名が参加、ユースオリンピック出場をかちとった二人の日本人選手は、予選ラウンドから決勝トーナメントまで19ムーブを踊りぬいたとのこと。 

朝日新聞の記事のように、パフォーマンスをいくつかの構成要素にわけて客観的に数値化して点数を出すのであれば、ほかのスポーツと同様に、一人ずつ順番に試技をさせて、数値化した得点で順位を示せばよく、必ずしも一対一の対戦形式で選手に何度も試技させる必要はない気がするけれど、敢えてこの対戦形式をとっているのは、この競技形式にこそ、ストリートから生まれたブレイクダンスなりのこだわりのポイントがあるのだろう。

この競技形式だと、確かにそういう面白さは維持されるけれど、勝ち続ける選手は何度も試技をすることになり、余計な負担を強いているような気もする。実際、19ムーブを踊るというのは、「ブレイキンバトルにおいて異例とも言える過酷な状況」とDanceFactの記事は記している。

今後は、大会の規模も大きくなってゆくだろうから、こういった一対一のバトル的要素も残しながら、試技の回数を減らして選手への負担軽減もはかることが検討されてゆくのだろう。

逆に、武術競技は、淡々と競技がすすんでゆくスタイルよりも、一部にこういった対戦的要素を取り入れてみても面白いような気がする。今年はなかったようだけれど、全日本大会の伝統拳術の競技で二人だけが「決勝」と称して大会3日目に再戦していたのはこういう対戦的要素を取り入れることが意図されていたんだろうか。

 

dancefact.jp

 

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二点目は、採点にあたっての、「身体」、「解釈」、「芸術」という観点。

 

「身体」というのは、武術競技でいえば、動作の規格から、勁力、協調性まで含んでいる気がする。

真ん中の「解釈」は武術競技でいえば、「技撃性」や、「精神面貌」「気勢」「眼法」などといわれる部分と重なるといえるか。この辺はどのような点数配分になっているんだろう。

 

 「芸術」の部分でいう「創造性」には、武術競技でいうと、独創的な套路の構成や、難度動作の創作を奨励していることが該当するだろうか。また同じカテゴリーの「個性」には、武術競技が審判の好み・主観によるとして排除しようとしてきた「風格」とか「味道」が含まれるのだろうか。もしそうだとすれば、ブレイクダンスにおいて、この部分をどのような形で評価しようとしているのかもう少し詳しく知りたい。

そして、武術競技においても、ぜひ「風格」とか「味道」を客観的にはかる方法を探ってみてほしいと思う。

老武術家の、姿勢は高くてアクロバチックな技もない素朴な演武をみて、競技武術のアクロバチックな演武よりも魅力を感じることが自分には確実にあるけれど、その正体が何なのか。大げさにいえば、蔡龍雲が考え続けた武術の套路の生命力の問題、馬鳳図が徐雨辰に対して「神」とか「神気」と表現したものと繋がるものとして、興味がある。

 

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などということを考えていたら、ハリウッドでは、映画の興行成績をAIに予想させる取り組みもスタートしているというニュースが流れてきた。

「AIで人間の創造力は予測できない」という声もあるなか、ある会社がすでに開発しているシステムでは公開の2年前に70パーセント、作品のトレーラーがリリースされたあとであれば、80パーセントの確率で興行成績を予測することができるのだという。

 

wired.jp

 

武術競技に限らず、あらゆる表現系のスポーツの採点も、AIによって客観的に数値化され、判定される日が、そう遠くない未来にやってくるのかもしれない。

 

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