ペマ・ツェテン『五色の矢』
東京外国語大学で行なわれた掲題の映画の上映会に行ってきた。
チベット文学と映画制作の現在: ペマ・ツェテン監督『五色の矢』上映会
東京フィルメックスで同監督の最新作『タルロ』が上映されるにあたり、昨年監督した作品を上映したいということで実現した上映会らしい。入場料無料、会場では監督の書いた短編小説のはいった冊子が配布され、上映後には監督自ら登壇して来場者からの質問に答えるというなんとも贅沢な企画だった。
映画は、チェンザ(青海省黄南チベット族自治州尖扎県)という弓矢の伝統のある地方の、ラルン村とダモ村という二つの架空の村をめぐって進められる。
この二つの村の間では毎年、村の代表による弓の競技が行なわれている。ラルン村の代表は、弓術を受け継ぐ家系の若者・タトン。一方のダモ村の代表ニマのお家の事情はあまり詳しくは語られないけれど、必ずしもそういった伝統を背負ってはいないようだ。それでも、伝統の作法には忠実で、伝統を継承するタトンに対しては敬意も払っている。他方、タトンの方は、伝統的なしきたり・作法を嫌い、そんなものは不要だと思っているのだけれど、どうやってもニマに勝てない。挙句の果てには、時代は変わったとばかりに、仲間の入れ知恵もありどこからか手に入れた、洋弓を手に次の試合に現れ、関係者を驚かせるなか、それでもようやく紙一重の差で試合に勝ったと思ったのも束の間、無効試合を宣言されたりして、どうにもうだつがあがらない。そんな悩めるタトンに、改めて手本を示しながら、弓術に必要なことは、昔連れていった村の寺院の壁に全て描かれていると助言する。一人山寺を訪れるタトン・・・。
山寺の訪問で父の助言を理解し、次の試合に臨むタトン、伝統的な作法を踏襲し、対戦相手にも敬意を払う態度は、頼もしく見えた。さて、勝負の結果は…?
こういった題材だと、自分が子供の頃などは、お家元のエリート対たたき上げの青年という構図になって、古い考えに囚われない後者に軍配があがる、的な展開が多かった気がする。この映画の最後の試合はどうなったのか、ネタバレになるので言わないけれど、伝統文化の継承が後継者不足などで必ずしも磐石ではなくなってくると、こういった物語の構図にも影響を与えるのかな、と思った。
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ペマ・ツェテンの作品を見るのは今日がはじめてだった。芸術映画的なタッチのほかの作品と比べて、地元政府からの弓を題材にした映画をとってほしいという要請・出資を踏まえて作られたこの作品は、村おこし映画的な側面もあるようで、チベット族の人気俳優なども多用してわかりやすく作られているようで、その分、アート志向の欧米の映画人からの評価は必ずしもよくなかったらしい。恋愛話(タトンの妹とニマ)も絡んで、これはこれで十分に楽しめる映画だと思ったけどなあ。
ちなみに、東京フィルメックスでは「タルロ」が最高賞を受賞。そっちは今回、見る機会を逃してしまった。残念!
上にも書いたけど、会場で、『チベット文学と映画製作の現在』という小冊子が配布されていて、そこに書いてある星泉准教授(編集長)による映画の解説がとても参考になった。
フィルメックス「タルロ」最高賞&学生審査委員賞 - TOPICS - webDICE
映画の舞台となったチェンザの弓術についてのドキュメンタリー映像。
以下のニュースの写真などみると、新素材の弓を使うのは、実はそんなに邪道じゃないのかな?という気も。
このブログで青海やチベットについてのメモを残すとは思わなかった。
12 | Ⅵ-43 | 当吉仁赛马会 | 西藏自治区拉萨市 |
国レベルのリストから (青海民族文化網から)
第二次リスト
814 Ⅵ-42 传统箭术(南山射箭) 青海省乐都县
815 Ⅵ-43 赛马会(玉树赛马会) 青海省玉树藏族自治州
817 Ⅵ-45 土族轮子秋 青海省互助土族自治县
http://www.qhwh.gov.cn/system/2011/09/30/000483904.shtml
省レベルの非物質文化
第二次リスト
序号 编号 项目 申报地区或单位
33 Ⅵ—1 土族轮子秋 互助土族自治县
34 Ⅵ—2 乐都南山射箭 乐都县
http://www.qhwh.gov.cn/system/2011/09/30/000483893.shtml