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中国武術雑記帳 by zigzagmax

当世中国武術事情、中国武術史、体育史やその周辺に関する極私的備忘録・妄想と頭の体操 ※2015年2月、はてなダイアリーより移行

知野二郎『香港クンフー映画評論集 龍熱大全』

映画 人物

地元図書館の、たまにしか行かない分館で発見し、読了。こんな素敵な本がおいてあるなんて、わが地元の図書館もなかなか捨てたもんじゃないなあ。だれかマニアが住んでるんだろうか。

 

龍熱大全 - 香港クンフー映画評論集

龍熱大全 - 香港クンフー映画評論集

 

 

のちのジェット・リーこと李連傑主演の映画『少林寺』(張鑫炎監督)をみて中国武術に興味をもった自分としては、どちらかというと大陸の武術への憧れがつよく、カンフー映画も、『少林寺』メンバーをはじめとする競技武術のプロ選手が出ている映画を好んでみる傾向があったので、同時代で公開されていた、当時はアイドルといってもいいジャッキー・チェン関連の新作や、ブルース・リーの映画は別格として、この本でたくさんの紙幅を割いて紹介されているショー・ブラザースの珠玉の功夫映画群については、食わず嫌いというか、あまり興味を持ってこなかった。

ショー・ブラザース作品(このサイトも凄い!)の面白さに気づいたのは、2008年から2年間中国に駐在していたときに、チャン・チェ監督の『少林寺』をはじめ、いくつかの作品を見てからなので、まだ数年前のことにすぎない。いくつか現地で購入しながら、まだ見ていなかった映画もいくつかあり、この本を読んで、改めてラウ・カーリョンの『瘋猴(マッドクンフー 猿拳)』を観て見た。いままで、猿拳ものは、ユンピョウの『モンキーフィスト/猿拳』が傑作だと信じて疑っていなかったけれど、こっちも凄かった!猿回しの猿を殺してしまうところなど、今のセンスからするとすごく残酷に思えるシーンもあるけれど、アクションはすばらしかった。もっと早く見ておけばよかった。

 

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 こっちは『モンキーフィスト/猿拳』

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福昌堂の雑誌『武術』などはよく読んでいたので、同誌に掲載され、この本で再録されている戚冠軍(チャン・チェ版『少林寺』で、個人的にもっとも印象に残るアクションをしていた)のインタビューなども読んでいるはずで、写真は見た記憶があるのだけれど、文章についてはまったく記憶に残っていなかった。いや、読んでいたとしても、当時はデビット・チャン(失礼かもしれないけれど、タカアンドトシのトシと似ているような気が)とか、ティ・ロンアレクサンダー・フーシェンなどの名前が並んでいても、何も理解できなかったんだと思う。

とにかく筆者の熱い思いがつまった本だけれど、「あとがき」の最後に「本書『龍熱大全』を、私が心から敬愛する“リーさん”に捧げる」とあり、さらに「誠意献給一代巨星李小龍」と記されている。最後のことばは、本書の中でも紹介されているけれど(P.242)、ドニー・イェンが主演し、自ら武術指導、おまけに主題歌まで歌ってしまった(らしい)ドラマ版『精武門』で、ブルース・リーに捧げた献辞にならったものだろう。また、筆者が創刊した同人誌のタイトルで、この本のタイトルにも使われている『龍熱』は、もともと筆者が以前に読んだ笠尾恭二のカンフー映画のエッセイで使われていた言葉で、のちにご本人にこの「称号」(原文ママ)の使用許可を得て、創刊したらしい(PP.41-42)。そうやって、熱い思いは伝播してゆくんだと思った。このなんちゃってブログ・備忘録にも、熱い思いが注入された気がする。

 

ところで、上にもかいたとおり、自分としてはショーブラザース作品よりも、中国のプロの武術選手が出ている映画を好んで探す傾向があった。こうした類の作品には、日本でも劇場公開やビデオ販売、あるいは深夜にテレビ放送されたものも少なくない。『武林史』や『水滸伝』『嵩山少林寺(原題は「少林俗家弟子」)』『八百羅漢』『木綿袈裟』『少年英雄(原題は「自古英雄出少年」)』などはその類。
その他、中国駐在中に現地で見つけた、一人でニヤニヤしながら鑑賞したものに、①『岳家小将』、②『東瀛游侠』、③『街頭殺手』、④『八卦蓮花掌』などがある。もっとも、これらの作品もいまでは簡単に手に入れたり視聴できるようだ。

 

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①は、張成忠、張安継、張躍寧、王振田といった、当時の江蘇省武術チームのメンバーが出演している。北京に駐在していたころ、国際競技用第2套路の講習会が北京で行われることになり、日本から当時の仲間たちが習いにきたので、会場に覗きに行ったら、この映画にも出演している張躍寧コーチが剣術の講師を勤められていたので、「この映画見ましたよ」と話かけたら、「そうなの?俺持ってないんだよなあ」とおっしゃられたので、翌日ダビングしたテープをお渡ししたことを覚えている。
②はユーロングァン主演で、監督は映画『少林寺』の張鑫炎。日本武道館で見事な酔剣を披露した北京チームの李志洲がざんばら髪で倭寇に扮し、酔剣を披露したりしている。

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③は、趙長軍に継ぐ80年代後半から90年台半ばにかけての総合チャンピオン・山西チームの原文慶とドニー・イェン競演の異色作。この人も、選手引退後は映画スターを目指したことがあるんだろうか。

 この作品、よく調べたら「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ 外伝 アイアンモンキーグレート 」というタイトルでDVD化されているらしい。

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④は、このブログでも何度かメモしたことのある陝西省チームの馬振邦コーチが八卦掌の達人を演じている。大陸の映画なので、いろいろな点で同時代の香港のものほど洗練されていない印象。