戚家拳
最近、汪国義、陳鐘華著『戚家拳』(湖南科学技術出版社)という本を入手した。
汪国義は、以前にメモした劉杞栄にも師事したことがあるらしいけれど、戚家拳自体の伝承経路についてはこの本の中では明確に記されていなかった。(ただし、斜め読みしただけなので読み飛ばしている可能性があり。)
改めて、戚家拳で検索したところ巨鹿テレビで「巨鹿戚家拳」を紹介している動画がヒットした(1、2、3)。こちらは河北省巨鹿県大韓寨に伝わる「戚家拳」で、上の本で紹介している湖南省のものとは違うけれど、こちらはこちらで「原汁原味」の戚継光の三十二勢長拳と名乗っている。現在の伝承者として李中海、李現彪という人が出てくる。ただ、番組で紹介されているところによると、昔は「太祖拳」と名乗っていたらしい。
ところが、ある機会に滄州の太祖拳の一派から、「自分たちこそ正統な太祖拳だ」と拳譜やら継承図をもとに批判され、そこから李現彪がいろいろと調べ始めたのだという。調べるといってもヒントが無く四苦八苦していたところ、李経梧がこの拳法をみて、陳式太極拳と類似していると指摘したことがヒントになって、陳式太極拳の技法のもとになっているといわれる戚継光の三十二勢長拳を調べ、どうやらこれに違いないということになり、以来「戚家拳」を名乗っているようだ。遼寧錦州にも同じ拳法があり、そこでは河北の巨鹿に源流があると伝えられているらしい。
村に伝えられている伝承では、巨鹿に以前、三官廟という廟があり、そこに流れてきた僧侶が、村の解という姓のおばあさんに命を救われ、その恩に報いるために村にこの武術を伝えたのだという。よく耳にする始祖伝承の類型と同じだ。
巨鹿の戚家拳については、この文章も参考になる。
これによると、上記の映像に出てくる僧侶は、戚家軍の武将の一人で、身分を隠して悟真和尚と名乗っていたという。悟真が三官廟に残した武術は、解氏、谷氏、趙氏を中心につたわり、次第に谷氏、解氏、董氏を中心とする北派、李氏、閻氏を中心にする西派、趙氏、任氏を中心とする南派に分かれたという。
『戚家拳』付属のDVDと、巨録テレビのドキュメンタリーの動画は、一見したところとても同じものとは思えない感じではある。
ほかにも、戚継光の故郷である蓬莱の戚家拳は山東省の非物質文化遺産に認定されている。こちらは動画を見ていないので詳細は不明。