『倭寇的踪跡』
徐浩峰監督、主演は『黄河大侠』の于承恵。内山書店にもDVDを売っていて気になっていたのを、北京で入手。監督の徐浩峰は、実は数年前に話題になった、形意拳家・李仲軒が民国時代の天津の武術界のことを回想する『逝去的武林』で李仲軒の口述の整理をした人らしい。そういえば、あの本も単なる口述筆記というよりはかなり編集・加工されている気がしたけれど、武侠小説を書いたり映画を撮るような人が編集していたのだということでそれも納得。監督のブログには、武侠映画についての想いなどもつづられていて結構面白い。黒沢明や勝新の作品も良く見ているようだ。
この映画、中国の動画サイトで全編見れるほか、日本では『刀のアイデンティティ』というタイトルで第7回大阪アジアン映画祭で公開されていたようで、感想らしいものもちらほらヒットする。
映画は武侠小説風の台詞まわしや、衣装や武器などに監督のこだわりが伺えるなかなかの力作。戚家軍が取り入れた倭寇刀法と鴛鴦陣の戦いをワイヤーアクションなんかを利用しないで再現しようとするところは立派。それでも、最後のアクションシーンはもう一工夫欲しかった気がする。あんな、ちょっと手を伸ばせば当たりそうな距離で、槍と刀が戦うもんだろうか?