中国武術雑記帳 by zigzagmax

当世中国武術事情、中国武術史、体育史やその周辺に関する極私的備忘録・妄想と頭の体操 。頭の体操なので、たまたま立ち寄られた方は決して鵜呑みにしないこと(これ、肝要)※2015年2月、はてなダイアリーより移行

鏢局

『鏢門 Great Protector』、『捻軍と華北社会』など

チャンネル銀河で10月9日から12月1日まで放送されていた、中国ドラマ『鏢門』。 公式サイトによれば中国では「圧倒的高評価」を得たとのこと。このブログ的には、『逝去的武林』の徐浩峰(注1)が脚本で参加しているということもあって、見てみた。 www.ch-gi…

山左聊城鈺山馬永勝とその周辺 老衆成鏢局、南強武術会、呉県国術館など

以前にメモしたけれど、中央国術館の張館長(このときはまだ「館長」という肩書はないので、「理事」と呼ぶべきか)は、国術館(研究館)の設立後まもない1928年の6月に西北軍以来の随員や、王子平らを引き連れて蘇州青年会の招きで蘇州を訪れ講演と演武を行…

「洮南県下に於ける侠義者(侠客)調」 大正四年六月末

アジア歴史資料センターのデータベースから、本当に偶然見つけた、マル秘と印の押された史料。洮南(清朝時代は洮南府、中華民国では洮南県、現在は白城市の県級市(注)。 〇「洮南県下に於ける侠義者(侠客)調」 出典:「JACAR(アジア歴史資料センター)Ref…

『秘密社会と国家』(神奈川大学人文学研究叢書)

中古本をアマゾンで300円足らずで購入。 秘密社会と国家 (神奈川大学人文学研究叢書) 作者:小林 一美,馬場 毅,大里 浩秋,孫 江,並木 頼寿 出版社/メーカー: 勁草書房 発売日: 1995/04 メディア: 単行本 8名の論者の論文(うち5つは中国に関するもの)と、冒…

フォローアップ系小ネタ 2019.12.22

見落としていて最近気づいた情報も含めて、いくつか気になった動きをメモ。 1.中国武術通史編纂プロジェクト これは、半年くらい前にメモした「中国武術全史」プロジェクトとは違うのか? 印象としては、「通史」のプロジェクトは、半年前の「全史」プロジェ…

張仲忱 岩井茂樹訳・注『最後の宦官 小徳張』など

前回のメモに引き続き、時代的には孫耀庭より一世代前の宦官・小徳張こと張祥斎についての本から。 張祥斎も、前回メモした孫耀庭のように、宮廷で芝居の訓練をしており、慈禧太后(西太后)の芝居好きによってその眼にとまり、出世の足掛かりを得る。 張祥…

寇運興2 曹振譜、許昌国術館など

インターネットで調べものをしていて、許昌国術館の徽章の画像がヒットしたので、画像の掲載されているページを見て見たら、ベルリンオリンピックにも参加した寇運興が館長を務めたと書いてあった。 www.wylbpm.com 以前に興運興についてメモしたときに見た…

太監安徳海、断魂槍周長春等

近代の武術家について調べていたら、南皮出身の周長春という武術家にたどり着いた。 もともと唐拳を学んでいて、その後劈掛拳、八極拳、戳脚、功力拳などを学んだという。とくに劈掛拳を得意とし、その劈掛拳は李雲表から学んだとのこと。武器は陸合大槍が得…

「昆侖大師杯」全国潭腿伝統武術精英賽など

7月14日と15日、河北省邢台市の臨西県で潭腿と伝統武術の競技会が開かれたというニュースが流れてきた。正式な名称は「「昆侖大師杯」全国潭腿伝統武術精英賽」というらしく(注1)、開催は去年に引き続き今年で2回目になるらしい。 ここでいう「潭腿伝統武…

明清塩政と武術、張之萬など

中華武術網に滄州の広告会社がつくった滄州武術のプロモーション映像があり、そこに八極拳の呉鐘は河間塩運司の呉氏の子孫だと紹介されていた。 www.wushu520.com これは、呉氏の祖先の祚永公が明の永楽初に河間府滄州塩運分司運判に任じ、安徽の徽州府歙県…

タイタニック、太平輪の生存者と武術家の「水上功夫」?

イギリス人の映画監督、アーサー・ジョーンズが、タイタニック号の中国人生存者6人の行方を追ったドキュメンタリー「The Six」の予告編が公開されて話題になっている(らしい)。 tabi-labo.com www.youtube.com この記事を読んで、生存者のうち一人は武術…

自貢の塩、杜心五、藤黒子など

清代から盛んになる四川省における塩田開発のことを以前にメモしたけれど、杜心五の伝記(賀懋華『大侠杜心五伝奇』)を読んでいたら、彼が最初に保鏢を務めるのは、九溪の富商・郝剣鳴が四川省に私塩の買い付けにゆく際に依頼を受けてのことだと書かれてい…

峨眉派趙門と太祖拳、営口の起順鏢局、綏遠の得勝鏢局など

1.紅拳、「峨眉派趙門」、太祖拳 少し前に『全球成功夫網』に載っていた安徽省蚌埠の太祖拳についての記事が面白かった。 www.qqgfw.com 说起太祖拳,其实是精湛的拳种,属“红拳”,拳术套路和器械套较多,由于传承甚少,为知不多,究其原因还是宣传交流不够…

佟忠義、佟佩雲など

前にちらっとメモしたけれど、2、30年代の上海の映画界で活躍した査瑞龍は、精武会の出身だというけれど、佟忠義のお弟子さんでもあったらしい、ということで改めて佟忠義について調べてみた。 zigzagmax.hatenablog.com 王子平と並んで「滄州二傑」と評…

村上兵衛『守城の人―明治人柴五郎大将の生涯』など

最近、面白そうだと思って読んでみた本で、このブログの観点からはど真ん中ストライクではないものの、それぞれに少しずつ興味深い点があったものを、備忘録としてまとめてメモ。 1村上兵衛『守城の人―明治人柴五郎大将の生涯』義和団事件のとき北京に篭城…

山西商人(晋商)と武術

参考資料として買っておいた陳振家『原伝戴氏心意六合拳』の冒頭をぱらぱらと見ていたら、戴魁の頃、益晋染織有限公司が1909年にシーメンスの発電機を導入した際、オーナーの喬殿森がドイツ人の勤勉な働きぶりに関心して工場の管理をまかせることにしたとこ…

十大镖局、大刀王五など

全球功夫網に掲載された、中国十大鏢局という記事をもとにメモ。 十大鏢局といいながら、詳しく取り上げているのは、興隆鏢局(「神拳」こと張黒五)、会友鏢局(三皇炮捶)、成興鏢局(李冠銘、李鳳崗、李慶臨)、広盛鏢局(こちらも「神拳」こと戴二閭)の…

吉燦忠『同興公鏢局考』

山西省の平遥(晋中市平遥県)にあった「同興公鏢局」に関する研究書で、昨年、北京で購入していたもの。最近、関羽やら水滸伝に関する本を読んで、山西省周辺のことが気になってみたので読んでみた。 「同興公鏢局」は1855年に設立され、1913年に活動を終え…

安徽省合肥市における心意六合拳、万勝鏢局、周口三傑など

安徽省合肥市における心意六合拳の伝承は、上海からのものと蚌岐市の宋国賓系統のものがあるらしい。 上海系統のものは、盧崇高-徐文忠-張品元(徐、張老師は80年代末に来日した)系統のものと、盧崇高-解興邦-張道福と連なる系統があるようだけど、前者は…