中国武術雑記帳 by zigzagmax

当世中国武術事情、中国武術史、体育史やその周辺に関する極私的備忘録・妄想と頭の体操 ※2015年2月、はてなダイアリーより移行

人物

『北京籠城 北京籠城日記』、寧夏馬家軍、『国術理論概要』など

少し前に、義和団事件の北京籠城を題材にした松岡圭祐の小説『黄砂の籠城』『黄砂の進撃』を読んだ。時々刻々の展開は手に汗握るもので、エンターテイメントとしては面白かったけれど、籠城の具体的な経過を含めて、なんとなく違和感があったので、手元にあ…

訃報 金庸、レイモンド・チヨウ

中国武術そのものとは関係ないかもしれないけれど、中国武術やそれに結びついた文化を世界に広めるのに貢献したと思われる人物が二人、相次いでこの世を去った。 一人は武侠小説家の金庸。 10月30日に亡くなった。享年94歳。 news.dwnews.com 金庸については…

「フラッグ式/採点式」、実写版「ムーラン」など

またまたフォローアップ系の小ネタをいくつかまとめてメモ。 1.フラッグ式と採点式 ブレイクダンスの競技化についてメモしたとき、採点方式について、一対一の対戦形式による競技は、ブレイクダンスのストリート性と関係があるように考えたのだけれど、この…

馮驥才『神鞭』『鷹拳』など

掲題の小説の日本語訳が古本で安く手に入ったので読んでみた。 〇『神鞭』井口晃 湯山トミ子訳 北京外文出版社 ------- 『神鞭』は天津の市井を題材にした「怪世奇談」三部作の一つで、のこる『陰陽八卦』、『三寸金蓮』(文庫版では『纏足』と改題)も邦訳…

井上靖「壷」、全国武術運動会の新種目など(フォローアップ系小ネタ)

いくつか、過去のメモとの関係がありそうなフォローアップ系の小ネタをまとめてメモ。 1.井上靖「壷」 老舎の短編「断魂槍」との関連で、老舎が来日した際に語った話をもとに井上靖が書いたエッセイ「壺」をずっと読みたいと思っていたのだけれど、まさに灯…

胡奉三、葛月潭、千山の無量観など

百度の胡奉三の紹介に、やや唐突に「内外拳法の長所を集めて・・・」とでてくるのが不思議だと思っていたら、当時の東北地方の道教の領袖で奉天(瀋陽)の太清宮の葛月潭方丈の紹介のなかに、胡奉三とのつながりが書かれているのを見つけた。 葛月潭和胡奉三…

奉天省武道振興会から満映、シルク・ドゥ・ソレイユへ

いろいろな超人技を動画で紹介しているフェイスブックの「People are awsome」というページで、珍しく中国武術関係の動画が流れてきたと思ったら、シルク・ドゥ・ソレイユで活躍している、 “JJ” Zengjiao Jian の紹介だった。 www.facebook.com どこかで聞き…

邱海洋「电影《师父》:徐浩峰对师徒制的批判」など

全日本剣道連盟居合道部の昇段審査の金銭授受問題に関して、スポーツ人類学の田辺元氏の書いた文章が興味深かった。 synodos.jp この文章をヒントに中国武術のことを考えてみたときに、 中国武術において「入門」とは、ある学習者が、身内のもの、すなわち門…

中国功夫文化発展委員会、国際功夫委員会など

8月21日に北京で「中国功夫文化の発展の方向と道筋を探る座談会」なるものが開催されていたらしい。 www.zggfwh.com 座談会を主催した中国功夫文化発展委員会は、公式ウェブサイトで自ら紹介するところによれば、中国文化部直属の社会主義文藝学会が2017年に…

古典技法の復元に関するシンポジウム

気が付かなかったけれど、2017年の6月に、北京体育大学で、『紀效新書』「拳経捷要篇」に書かれた技法の復元に関するシンポジウムが開かれていた模様。 北京体育大学 記事から、シンポジウムには通背纏拳の陳国鎖、心意六合拳の沈錦康、翻子拳の靳万発、太乙…

「昆侖大師杯」全国潭腿伝統武術精英賽など

7月14日と15日、河北省邢台市の臨西県で潭腿と伝統武術の競技会が開かれたというニュースが流れてきた。正式な名称は「「昆侖大師杯」全国潭腿伝統武術精英賽」というらしく(注1)、開催は去年に引き続き今年で2回目になるらしい。 ここでいう「潭腿伝統武…

「禿鷹」計春華

7月11日、計春華がなくなった。享年なんと56歳(注)。 出典:http://www.kwongwah.com.my/?p=543788 浙江省武術隊を経てスクリーンデビューは1982年の『少林寺』での「禿鷹」。あのころ20代になったばかりというのが信じられないけれど、不敵にニヤリと笑…

明清塩政と武術、張之萬など

中華武術網に滄州の広告会社がつくった滄州武術のプロモーション映像があり、そこに八極拳の呉鐘は河間塩運司の呉氏の子孫だと紹介されていた。 www.wushu520.com これは、呉氏の祖先の祚永公が明の永楽初に河間府滄州塩運分司運判に任じ、安徽の徽州府歙県…

タイタニック、太平輪の生存者と武術家の「水上功夫」?

イギリス人の映画監督、アーサー・ジョーンズが、タイタニック号の中国人生存者6人の行方を追ったドキュメンタリー「The Six」の予告編が公開されて話題になっている(らしい)。 tabi-labo.com www.youtube.com この記事を読んで、生存者のうち一人は武術…

2018年5月の高段位認定者

5月9日に、2018年の高段位認定が行われていた模様。 中国武术协会关于批准周之华等26人晋升武术高段位的函-中国武术协会 9段と8段に認定されたのは以下の人たち。 関連情報と動画をとりあえずメモ。 結構若い人もいるように見えるのは、地域ごとのバランスな…

ジャック・ジョンソン、陳漢強、日本武術視察団(1930)など

SNSでシルベスター・スタローンが、黒人初のボクシングのヘビー級王者、ジャック・ジョンソンの映画を撮るというニュースが流れてきた。 theriver.jp その後、しばらくして、ジャック・ジョンソンが戴冠したことは、人種差別に苦しむ当時のオーストラリアの…

自貢の塩、杜心五、藤黒子など

清代から盛んになる四川省における塩田開発のことを以前にメモしたけれど、杜心五の伝記(賀懋華『大侠杜心五伝奇』)を読んでいたら、彼が最初に保鏢を務めるのは、九溪の富商・郝剣鳴が四川省に私塩の買い付けにゆく際に依頼を受けてのことだと書かれてい…

清代陝西塩商と会党と武術  楊宝生・王培仁「走近紅拳的大師們」など

四川省自貢市は塩の都といわれ、岩塩が有名だけれど、ここの塩田は陝西省の商人たちが開発をしていたらしい。 四川の塩田の関係者10人中7~8人が秦人であったともいい、現在自貢市にのこっている塩業歴史博物館も、もともと陝西商人の同郷会館であった建物ら…

段位制いろいろ2 少林武術段位

SNSで、少し前に、香港で七星蟷螂拳の李錦榮老師が登封少林武術協会から少林武術九段に認定されたという記事が流れてきた。 www.facebook.com 公式ウェブサイトの説明によると、「中国少林武術協会」とは、河南省登封市少林武術協会、嵩山少林同門の支持、登…

武術家とひげ

古代中国では、親からもらったものは髪の毛の一本も粗末にしてはいけないという儒教思想の影響で、儒教官僚たちはひげを生やすことで道徳観を表していたといわれる。 また、宦官という文化があるなかで、ヒゲも生えないような人間はまともな人間ではないと考…

蔡李仏拳博物館など

3月のはじめに広東省江門市の政治協商会議の一行が市内の蔡李仏拳博物館を視察したという記事を見かけて、そんな博物館があったのかと思って調べてみた。 市政协专题视察蔡李佛拳博物馆 传承弘扬侨乡武术文化精髓-政务要闻-江门市人民政府门 2001年の秋に蔡…

三田村泰助『宦官 側近政治の構造』

新しい本ではないけれど、地元の図書館の蔵書にあったのを読んでみた。 宦官にまつわるさまざまな内容のほかに、恐妻家、男色、強精剤といった内容が含まれていて面白かった。 以下、このブログの観点から興味深かったについてメモ。 1.恐妻家戚継光 映画『…

『イップ・マン 継承』『イップ・マン 最終章』など

公開時、見逃していた『イップ・マン 継承』を、先日アマゾンプライムの週末特典100円で先日ようやく観賞。 アクション的には、マイク・タイソン(そこそこ台詞もあって、役者っぷりも見事!)、売り出し中のマックス・チャンとの対決など見ごたえがあったけ…

張榕、王永江、于冲漢、東北大学体育専修科など

孫文たちに協力して西安で革命の準備をしたのが井勿幕、井岳秀だとして、東北で革命を画策した人に張榕がいる。 張榕について、中国版ウィキペディアの紹介によってメモすると、日露戦争の頃、関東独立自衛軍なる団体を組織してロシアに対抗した人で、戦後、…

葉雲表、梁漱溟、杜心五など 郷村建設と武術

詳細はまだ確認できていないものの、以前にメモしたように中華武士会の初代会長・葉雲表は、1930年代には山東で梁漱溟の郷村建設理論に基づいて鄒平県に作られた実験区の活動にかかわっていたらしい。 〇関連のメモ zigzagmax.hatenablog.com この点について…

井勿幕、井岳秀など:「鷂子高三」の関係者たち

以前にメモしたけれど、『少林拳術秘訣』に出てくる「三原高氏」について、唐豪はその実在を疑問視していたけれど、近年の研究でこの「三原高氏」は「鷂子高三」こと高占魁らしいとされている。その高占魁の弟子に魏金鐘がいて、魏の教え子の中に井岳秀がい…

河北省国術館、天津市国術館、『形意拳術講義』など

河北省国術館の設立と館長について、ふたつの説があることに気づいた。 一つは、李書文と関係の深い許蘭州が1928年に天津で設立し、自ら館長に任じたという説。許蘭洲の故郷でもある南宮の南宮広播電視台のサイトの以下の記事には、日本で著書も出版された張…

「蕩寇風雲 God of War」など

倉田保昭が映画「蕩寇風雲 God of War」の演技で香港電影評論学会の最優秀男優賞を受賞したらしい。 倉田保昭が演じているのは、松浦藩の若頭を中核とする倭寇の軍師のような存在で、サモ・ハン・キンポー演じる兪大猷、チウ・マンチェク演じる戚継光らと対…

中華幼児武術級位制など

1月初旬に天津で、「関心下一代・全国幼児武術教育工作発展検討会」なる会議が開かれていたらしい。 sports.xinhuanet.com 会議を主催した「中国関心下一代工作委員会」には健康体育発展中心という部門があって、さらにその下に「少児武学伝承研究院」なる組…

ベルリンオリンピックの国術代表団4 幻の山東代表? など

山東国術館について紹介した記事を見ていて、以下のような記述があるのに眼がとまった。 …据张香圃(济南太乙门传承人)回忆:(1985年《少林武术》第三期记载)1936年林秉礼、佟顺禄、张香圃、马洪智、赵玉庭五名山东选手被选拔为参加第十一届奥运会的“世运…