中国武術雑記帳 by zigzagmax

当世中国武術事情、中国武術史、体育史やその周辺に関する極私的備忘録・妄想と頭の体操 ※2015年2月、はてなダイアリーより移行

『籌海圖編』、備前刀など

4月のはじめに通勤電車の中で読んでいた本で、明代の『籌海圖編』(注)に、日本刀の名品について記された箇所があると出ていたので、その晩、家に帰って、インターネットで調べたら、巻二に「上庫刀」と「備前刀」について記された箇所を見つけた。 それで…

斫削と粘槍 呉殳「単刀図説」の技法についての頭の体操

林伯原先生の『中国武術史』の中に、程宗猷(冲斗)の『単刀法選』と呉殳の『手臂録』巻之三「単刀図説」(以下、「単刀図説」)の各勢を比較した表がある。その中で、例えば、『単刀法選』の「入洞刀勢」と「単刀図説」の「入洞勢」は「勢名は類似するが外…

「河南武術“改革解放40年傑出貢献人物”」など 

最近目に留まった時事関係のニュース数件をメモ。 1.標準化 まだ詳細はよくわからないけれど、国際標準化機構(ISO)が武術太極拳で使う服と剣の国際標準を定めたとのこと。 中国が数年にわたってISOに働きかけた成果とのことで、これによって、今後、中国の…

脱線系・妄想系小ネタのフローアップ

1. アベンジャーズのエンドゲームが公開間近。アイアンマンのロバート・ダウニーJrが詠春拳を習っているというのは有名な話だけれど、アース・ウィンド&ファイアーのFBページに、ロバート・ダウニーJrが、ブギー・ワンダーランドのリズムにあわせて、詠春拳…

ダニエル・S・ レヴィ『孫文を守ったユダヤ人―モーリス・コーエンの生涯』など 

過去に、読みたい本としてメモしていた本の中で、最近読む機会があった本と、たまたま眼にとまって読んだ本についての備忘録。 1.『孫文を守ったユダヤ人―モーリス・コーエンの生涯』 書架には出ていないものの、実は地元の図書館の書庫にあることがわかり読…

稠禅師の武功など

稠禅師は、唐豪以来、初期の少林武僧と紹介されているけれど、その論拠として『太平広記』に、『紀文』(未確認)と『朝野僉載』を引いて、稠禅師が「引重千鈞、拳捷驍武」だと記されていることを挙げている(注1)。 他方、笠尾恭二『中国武術史大観』は、…

フォローアップ系の小ネタ

フォローアップ系の小ネタ数件。 1. 蘭州で「通備武芸文化伝承培訓中心」が設立されたという。以下に、二つ、関連動画ニュースを貼り付け。一つ目のニュースの中で、同種の組織としては蘭州ではじめて設立されたものと紹介されているけれど、2012年に開催さ…

「中小学武術教育与研究中心」の設立

「中小学武術教育与研究中心」という機構が成都で設立されたというニュースが流れてきた。 sichuan.scol.com.cn 出典:“中小学武术教育与研究中心”成立会在人北小学举行_看度CanDo! 同センターは、西南民族研究学会民族体育専業委員会、成都市教育学会、四川…

太監安徳海、断魂槍周長春等

近代の武術家について調べていたら、南皮出身の周長春という武術家にたどり着いた。 もともと唐拳を学んでいて、その後劈掛拳、八極拳、戳脚、功力拳などを学んだという。とくに劈掛拳を得意とし、その劈掛拳は李雲表から学んだとのこと。武器は陸合大槍が得…

気になる武術映画

伝統武術に題材をとった映画二本の製作についての情報が流れてきた。 一つは査拳についてのもので、日中戦争の頃の、馬忠啓という老師の伝記映画のよう。タイトルはそのものずばり『査拳』らしい。 www.qqgfw.com 馬忠啓という人についてはあまり詳しい情報…

杉山祐之『覇王と革命』など

昨年末のメモで、軍閥抗争時代に嵩山少林寺に火が放たれてことに関して、当事者といえる石友三や樊鐘秀などについて調べた際、これは軍閥時代のことを一通り学びなおさないといけないと感じたので、地元の図書館にあった『覇王と革命』を読んでみた。 この本…

「宇文武社火」、山西省国術省考、国術国考の山西省入賞者など

旧正月のイベントに関するニュースの中で、山西省太原市で行われた「社火」の一環として、宇文村の「宇文武社火」が披露されたというニュースが目にとまった。 www.chinanews.com 記事によると、「宇文武社火」は実は形意拳の一種で、関係者の張万栄は民国十…

華北交通アーカイブ

SNSで、日中戦争期に作られていた華北交通株式会社がストックしていた写真の展示会が京都で行われるという情報が流れてきた。 www.museum.kyoto-u.ac.jp チラシにモンゴル相撲らしき写真が写っていて、若干気になったので、現場には行けそうにないものの…

流寇と土寇、郷兵守備、民壮など

タイトルに惹かれて中古本を買ったまま読めずにいたハードカバーの吉尾寛『明末の流賊反乱と地域社会』を、年末年始の休みを利用して読んでみた。 www.kyuko.asia ちょうど、明末清初を題材にした、小説(金庸『碧血剣』 )を読んだり、映画(『白髪妖魔伝』…

真似て近づく

SNSで流れてきた音楽情報をたどっているうちに、フェニックス・ホーンズのウェブサイトにたどり着いた。 www.thephenixhorns.com フェニックス・ホーンズといえば、大好きなアース、ウィンド&ファイアー(以下、字数が多くて面倒なのでEWF)の全盛期…

現代「武術学」の立役者

1月5日、徐才氏がなくなった。中国武術に興味をもって、内山書店や東方書店に足を運ぶようになった80年代後半ごろ、大陸で出版された書籍の多くには徐才氏の序文があった。 その多くは、『徐才武術文集』にまとめられているはずだけれど、長いこと押入れの…

高校受験と武術 武術進校園5

澎湃新聞の記事によると、河北省の人民代表大会で、滄州の尹広軍は滄州の中小学校において、伝統武術を取り入れようという提案を改めて行ったらしい。 www.thepaper.cn 同記事によると、滄州市では2009年には伝統武術を学校教育に取り入れるため、滄州市体育…

ロバート・ビッカーズ『上海租界興亡史 イギリス人警察官が見た上海下層移民社会』など

ロバート・ビッカーズ『上海租界興亡史 イギリス人警察官が見た上海下層移民社会』は、新年早々、調べたいことがあって行った地元の図書館でたまたま見つけた本だけれど、第一次世界大戦でフランス戦線に参加し、除隊後、上海に赴任したモーリス・ティンクラ…

伝統武術の回復、規範化など

年末年始に目に留まったニュースから。 1.伝統武術の保護、規範化 北京市で、市の非物質文化遺産でもある通背拳の「恢复项目」の起動を宣言したという記事。具体的な中身がよくわからないけれど、「恢复项目」とは、本来の姿を回復させようというプロジェク…

『春繍刀』など 

2018年にいくつか見た映画について。 1.『春繍刀』 邦題:ブレイド・マスター 『箭士柳白猿』が『ジャッジ・アーチャー』という邦題でラインナップされていた2014年の東京・中国映画週間で上映された作品。スケジュールの都合で見に行けず、その後ずっと気に…

火焼少林寺 石友三、樊鐘秀、少林寺保衛団など

にわか勉強で前提知識がなさすぎるので、うまく纏められていないけれど、とりあえずの備忘録として。 ********* 軍閥混戦の時代、少林寺に火を放ったのは石友三と蘇明啓。 石友三は、以下の記事によると、多くの軍閥の中でも「寝返り(倒戈)」の回数が多く…

莫言『白檀の刑』など

義和団事件を扱った、いくつかのフィクション・ノンフィクション(籠城戦のあった北京以外の状況を描いたものを含む 注)を読み漁っているうちにこの小説にたどり着いた。 莫言の小説としては、このブログを始めるだいぶ前に読んだ『豊乳肥臀』に続けて二冊…

大学受験と武術3 武術特色学校など

2019年の「高考」で「武術と民族伝統体育」専攻は、2018年の51校から1校増えて52校が募集を行うらしい(注)。52校は具体的には以下のとおりで、昨年から増えたのは山西大学。 専攻は「武术套路」、「武术散打」、「中国式摔跤」にわけられる。 北京体育大学…

ベルリンオリンピック代表団 番外編(ボクシング)

南京図書館の画像データベースをみていたら、「32軍西洋拳術隊」の写真がでてきた。 正確にいうとキャプションは「32军西洋拳术队赵允诸等一行五人,1936年抵沪参加西人青年会业余拳术比赛,图为选手合影」。 出典:http://www2.jslib.org.cn/was5/web/detai…

金庸『碧血剣』、小前亮『李巌と李自成』など

追悼記念で、金庸の『碧血剣』を読んだ。 金庸の小説の中では比較的短編だけれど、主人公の武術修行、武林流派の確執、美男美女の複雑な人間模様、正義と悪が入れ替わるところなど、金庸小説のエッセンスは詰まっていて、自分としては充分に楽しめた。 碧血…

中国体操学校、清末の日本人教習など

前回のメモの後半で少し触れた呉志青については、最近、別途入手した『明清徽州武術研究』にも、同地方出身の代表的武術家ということで詳しく紹介されていた。 その内容は、例によって『中国武術人名事典』の記述と一致しないところもあるのだけれど、上海の…

『北京籠城 北京籠城日記』、寧夏馬家軍、『国術理論概要』など

少し前に、義和団事件の北京籠城を題材にした松岡圭祐の小説『黄砂の籠城』『黄砂の進撃』を読んだ。時々刻々の展開は手に汗握るもので、エンターテイメントとしては面白かったけれど、籠城の具体的な経過を含めて、なんとなく違和感があったので、手元にあ…

訃報 金庸、レイモンド・チヨウ

中国武術そのものとは関係ないかもしれないけれど、中国武術やそれに結びついた文化を世界に広めるのに貢献したと思われる人物が二人、相次いでこの世を去った。 一人は武侠小説家の金庸。 10月30日に亡くなった。享年94歳。 news.dwnews.com 金庸については…

『武術の孤児』

10月28日、第31回東京国際映画祭で鑑賞。 上映はこの日を含む2回で、申し込みをした時点で、上映1回目(平日の夜)は満席、2回目(日曜日の午前)も残すところあとわずかというところだった。じっさい、日曜の早朝にもかかわらずほとんど満席の状態だった。 …

「フラッグ式/採点式」、実写版「ムーラン」など

またまたフォローアップ系の小ネタをいくつかまとめてメモ。 1.フラッグ式と採点式 ブレイクダンスの競技化についてメモしたとき、採点方式について、一対一の対戦形式による競技は、ブレイクダンスのストリート性と関係があるように考えたのだけれど、この…